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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第2章 明星の狼

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6

 そのころ、シェルアとリーゼの二人は。


「で、突っ込んできた無人の馬車を、アンタが一人で止めたってのかい」

「はい」


 赤い柱が並ぶ部屋に座っていた。


 窓はなく、一定の規則で配置された敷物と蝋燭だけがこの部屋の個性だった。

 周囲は薄暗く、時間が一気に飛んだような錯覚に陥る。


 シェルアから見ても、そう答えたリーゼが緊張しているのがよく分かった。

 その原因は、向こうに座る一人の女性だ。


「ふーん、ま、目撃者も多数いることだし、嘘じゃないんだろうが」


 受け取った報告書がやたら小さく、さながら紙片のように扱う女性が、目の前に胡坐をかいて座っている。

 背丈は二メートルを超えており、その眼光は魔獣のよりはるかに鋭い。


 『明星の狼』のギルド長、ラフェール。

 歳は既に百を超えており、かつてS級冒険者として活躍していた天才。


 ついた異名は『狼王』

 その実力は年老いた今でも健在と言われる、まさに生ける怪物である。


 その周囲には二匹の狼が顔を伏せて座っており、じっとこちらを見ていた。

 狼も決して小さくはないはずなのに、彼女のそばにいるとさながら小型犬のようだった。


「それで、アンタら駆け出しの冒険者ってのは本当かい?」

「は、はい!」


 やたらと大きな眼球がぎろりとこちらを向いたため、思わずそう返事をしてしまう。

 ここに来る前、やりとりは全てリーゼに託すと決めておいたのに、そんな約束事を一瞬で崩壊するだけの圧があった。


 それを見たラフェールは、何かを考えるように頬杖をつく。

 一瞬手元にある書類に視線を落とすと、即座に顔を上げた。


「ふーん。ま、怪我人は一人。それもアンタらの仲間と。被害も殆どないなら、ギルドとしては特に言うこともないね」


 報告書を片手で握りつぶすと、さながらコイントスをするように親指で弾いた。

 弾かれた塊はとてつもない速度で私たちを通り抜け、入ってきた扉の方に向かう。


「ったく、危ねぇな、おい」


 すると。

 タイミングよく開かれた扉から一人の男性が現れると、当然のようにそれを受け止めた。


 真っ先に目を惹いたのは、その飄々とした姿だった。

 頭にはバンダナが巻かれていて殆ど見えなかったが、髪は灰色に黒のまだら模様があるのが見える。

 その後ろ、隠れるようにいたのは、渦中の真ん中にいるサトーだった。


 サトーはこちらに気付くと、嬉しそうに顔を緩ませた。

 どうやら無事だったらしい。

 その姿を見てシェルアも思わず笑みを浮かべてしまう。

 リーゼは一瞬驚いたようだったが、すぐに表情を戻した。


「なんの用だい?」

「目、覚ましたから連れてきただけさ。話をするなら全員いたほうが都合がいいだろ?」


 報告書だったはずの塊をラフェールに向けて投げ返すと、どことなく胡散臭い笑みを浮かべた。


「それと伝えたいことがあってな」

「なんだい?」


 投げ返された塊を握りつぶし、ほんの少しだけ表情を動した。

 それだけで両脇に座る二匹の狼がむくりと顔を上げる。


 一体何を言い出すのか。

 慎重に構えている二人は、直後に耳を疑った。


「オレ、こいつらのチームに入るから」


 あっけなく、それでいてなんてことなくそう言いのけた男性は、ラフェールを挑発するかのように笑みを浮かべ、

 その隣にいるサトーは死んだ魚のような表情を浮かべていた。

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