表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第1章 始まりの森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/1176

29

第1章は完結です。

第2章は後日更新します。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


感想、レビュー、ブクマ、評価など、お待ちしております。

 どこまでも広がる草原。

 そこに真っすぐ伸びる土の道を、一台の荷車が歩いていた。


 荷車を引く生き物は、馬よりわずかに背丈は低いものの、牛のように体格に優れていた。

 薄く生えている毛並みは皮膚をすっぽりと覆い隠しており、頭部から羊の角と類似した突起が生えている。


 シジマ。


 それがこの動物の名前だった。

 温厚で大人しく、食用にも牽引用にも使える万能生物で、この辺り一帯では最も知られている生物である。


 荷台の縁に座り、シジマの手綱を握る男性は、主に人を街から街へと送り届ける仕事に加え、簡単な荷物、手紙や小包といったものの搬送も行っている。


 年は五十を超えており、髪の毛には白髪が混じっていた。

 作業着に似た格好だが、隙間から仕事で鍛えられた灼けた肌が見える。


「それで、アンタら何しに行くんだい?」


 よく通る、明るい声でそう尋ねた。

 荷台自体が色褪せた幌で覆われている。

 雨や日差し、風といった天候に対応するためのものなのだろう。


 その隙間から顔を出した青年が、元気よくこう答えた。


「俺たち、冒険者になろうと思って」


 地肌が見えるほどに短く刈り上げられた頭皮や、希望に満ちた瞳を見たからか、その男性はおおらかに笑うと、こう尋ねた。


「なるほどな。おおよそ、田舎から出てきて一旗あげようってか。いいねそういうのは大好きだ」

「ま、そんな感じです」

「でもま、女二人の男一人は珍しいけどな。普通、冒険者ってのは野郎が憧れるが通例なんだが」

「へー、こっちの地元だと、割とそんなこと言われたことなかったですね」

「そういうもんなんだな。まぁなんにせよ、体には気をつけることだな。健康第一。それが人生を楽しく生きるコツってな」

「そっすね。肝に銘じておきます」

「いいよそんなに畏まらなくて!ただの行商人の独り言さ。気にしないでくれ」


 そう言って豪快に笑い飛ばすと、「ここらへんじゃ危険なとこもない。着くまでの間、ゆっくりしてな」といって布を閉じた。


 荷台にいるのは三人組で、一人は先ほどから話をしていた男性。


 胴当てに籠手、具足を履いた姿は見るからに冒険者の卵、といった姿だった。

 手元には一振りの剣があるが、見るからに新品で、使い込まれた様子はない。


 その向かい側に座る女性は目をつむり、ぴくりとも動かずに座っていた。

 こちらはメイド服、のように見える服に身を包んでいる。


 メイド服のようなもの、というのは、その装飾があまりに簡素であることや、注視すればするほどメイド服に見えなくなることから起因している。

 いずれにしても、駆け出しの冒険者としてはあまりに動じなさすぎである。


 そしてもう一人。


「すごい…………!どこまでも草原が広がっているわ…………!」


 黒い髪を後ろで一つに束ね、青色のリボンでまとめた女性だった。


 服装は白色のシャツに青色のスカート、革製のブーツを履いている。

 胸元には少しさび付いたネックレスと青色のリボンが結ばれており、黒色の瞳は曇りの一つもなかった。


「シェルア様、少し落ち着いてください」


 シェルアと呼ばれた女性は、既に乗って数刻経過した荷台を面白そうに撫でまわし、体を大きく乗り出し周囲を眺めている。

 既に三度目のこの行為に、流石のリーゼもしびれをきらしたらしい。


「でもリーゼ。見てくださいこの道!ほら、さっきまでいた場所がもうあんなに!」

「ほとんど変わらないでしょう。この程度の景色で驚いていたら、冒険者としてやっていけませんよ」


 リーゼと呼ばれた女性は、はぁとため息をつきながらそう言った。

 その口調は呆れているようでありながら、どこか嬉しそうでもあった。


「にしても、あれほんとに上手くいったのかな?」


 目の前に座る男性がそう口を開く。

 二人からはサトーと呼ばれているこの男は、不安げにしながらも荷車の主の方を見てから、こう続けた。


「確かにアフロ姿の男がいたのは間違いないとしても、その男に誘拐された、なんて話、普通信じないと思うんだけど」

「問題ありません。なにせ向こうはあなたが誰か知りませんから。なにより、あなたの脅威度を測り損ねたのは私の非。少なくとも文面のみであなたを見定めることは困難です。相応の脅威として対処するのが普通でしょう」


 こうしている間にも、騎士団の一行が屋敷へと向かっているだろう。

 そう考えるとそれはそれで中々にマズい状況ではあるのだが、リーゼは一ミリも動じていなかった。


「なにより、そのアフロ頭、と言われている奇天烈な容姿は、似顔絵においては重要な確認項目にあたります。それがない以上、あなたをあなただと判別するのはほぼ不可能でしょう。あとは普通の生活に紛れ込めば何も問題はありません」


 彼女の提案はこういうものだった。


 サトーが現れて三日後に、一通の手紙が届いた。

 送り主は王宮の魔術師で、防犯用の魔術が起動したため、詳細を報告しろというもの。


 リーゼはサトーの容姿を、初対面の姿のまま詳細に記した。

 そしてそれを送り返した後で、シェルア誘拐事件が発生した。


 そして再度、同じ魔術師から同様の手紙を受け取った。


 リーゼはそれを利用し、あえて返事をすることなく逃走。

 近くの村に住む人にサトーの容姿を伝えさせ、現在の容姿との誤差を生じさせたのだ。


「私はほら、表向きは王宮の奥深くにいることになってるし、見たことのある人もほとんどいないから。似顔絵だって、昔の私に似せてるから大丈夫よ」


 そういってほほ笑んだ彼女は、お屋敷にいるときよりずっと明るかった。

 以前まであった陰のある笑みはその姿形もないため、似顔絵の人物とは全くの別人のように見える。


「私は周囲から嫌われてましたので特に何も。親しい者もいませんでしたので」


 なんてことないようにリーゼは言うが、やはり少しだけ重苦しい空気にはなった。

 そりゃ、これを笑い飛ばそうものなら鉄拳制裁される可能性は高いし、なにより失礼に値する。


「で、これからどこに行くんだっけ?」


 リーゼにそう尋ねると、閉じていた瞼を開け、こういった。


「ギルト『明星(みょうじょう)(おおかみ)』。この国最大のダンジョンが存在する、冒険者たちが集まる街です」


 こうして冒険が始まる。

 空は澄み渡るように晴れ、雲が気持ちよさそうに流れていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

☆☆☆現在更新中の作品はこちら☆☆☆
墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ