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そこは全てが廻る場所。
花も。
海も。
鳥も。
雲も。
命あるものが生まれ、命なきものが死へと辿る。
あらゆるものが辿り着き、あらゆるものがそこから旅立つ。
ゆえに、万物の源はみな等しく。
万物の行く末もまた、みな等しい。
星は巡る。
あらゆる縛りから解き放たれ。
あらゆる理をないものとして。
天を貫き地を抉りながら。
愚者のごとく、ただ進むだろう。
善きものと悪しきもの。
それすらここでは価値を失い。
ただ等しく、平等のみを与える。
始まりの終わり。
終わりの始まり。
あらゆる事柄は、同じくここを巡るのだ。
故に人は、こう呼んだ。
始まりの森。
『回廊』と。
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サトーら一行は、西に位置するガダル王国に足を踏み入れた。
目的地は『白日の虎』の本部。
そこが管理するダンジョン『螺旋楽園』に挑むためであった。
一行はそこで、小さな少女であるエティと出会い、リーゼの過去を知ることになった。
そうして、色々とあった結果、
「メェ~~~~~~~~~~~~~」
「シェルア!そっちに一頭行ったぞ!」
「わ、え!?」
羊の群れと格闘していた。
事の発端は数日前、丁度『白日の虎』の本部を出た次の日の事。
「お金がないだァ!?」
逆立つような髪型の少年ヴァンは、驚いた様子でそう叫んだ。
「はい。現在の我々はほぼ一文無しの状態です。蓄えておいた分は既に底をついており、このままだと食料すら買えない状況です」
ニュースの原稿を読むかのように淡々と言葉を並べるのは、メイド服を身にまとったリーゼと呼ばれる人物だった。
つい昨日まで、彼女を中心とした騒動を終えたばかりだというのに、彼女の態度は以前と何も変わっていなかった。
「まぁ、ここまでほとんど仕事してないからねぇ」
のんびりとした口調で同意したのはシャグラだった。
茶色の髪を綺麗に伸ばした彼は、実年齢よりもずっと若く見えた。
だが、その貫禄と実力は既に常人の領域を軽く超えており、積み重ねた経験がそれを強固なものにしている。
「ど、どうしよう…………アタシがダンジョンで失敗したから…………?」
一人ワナワナとしている少女こそエティ本人であった。
猫の耳と尻尾のある少女は、つい最近まで冒険者の間で『疫病神』と嫌われていた過去があった。
彼女自身も大きなトラウマになっているのか、そのことに触れると性格が変わったかのように落ち込んでしまう。
「そんなことないよ。元々はリーゼがちゃんと相談しなかったのが原因だし」
エティのことを励ましつつ、さらりとリーゼに向けて毒を吐いているのがシェルア。
黒の真っすぐな髪と、青色を基調とした服装は、いつ見ても非常に可愛いものであった。
「シェルア、随分と逞しくなったなぁ…………」
「師匠、感動するとトコじゃねェと思うんすけど」
「まぁ、はっきりと物事を言えるようになったのはいいことだよねぇ」
ややズレた感想を抱いているのが、サトーと呼ばれるやや特殊な生い立ちの青年だった。
彼は記憶を失っており、自分の年齢すら忘れていた。
そのため、本名すら分かっておらず、サトーという適当に名付けた名前を使っている。
「んで、実際どれくらい残ってるわけ?まさか本当に一文無しってことはないでしょ?」
サトーが明るく努めたまま、リーゼにそう尋ねる。
だが、リーゼのからの反応はなく、嫌な沈黙だけが周囲に残った。
「……………………」
「マジでないやつ?え、ホントに?嘘とかじゃなくて?」
「師匠…………」
隣にいるヴァンがポン、と肩を叩いた。
どうやらリーゼは本当に嘘をついていないらしい。
徐々に、置かれている状況を正しく認識し始めたサトーは、恐る恐るシャグラにこう尋ねた。
「エルフィン王国の王都までって、あとどれくらいかかる?」
「うーん、そうだなぁ。関所を超えないといけないから、早くても二週間くらいかなぁ」
「因みに、食料って何日分?」
「ざっと三日」
「ダメじゃん」
ここにきて唐突に冒険の旅の終わりを知らされたサトーは、静かに天を見上げた。
ありがとうお母さん。
顔も名前も知らないけど、俺はここまでだよ。
「……………………あの、さ。一つ提案があるんだけど」
おずおずと手を挙げたのはエティだった。耳をぺたんと伏せたまま、エティはこう言う。
「アタシ、これでも結構長い間冒険者やってるんだけど、まぁ知っての通りで全然ダメでさ。その時に、お金を稼ぐためによく行ってた場所があるんだよね」
「一応お尋ねしますが、ギルドを介しての依頼は不可能ですよ?」
リーゼにそう尋ねられ、エティはビクン、としっぽを伸ばした。
「だ、大丈夫だと思う。アタシなんかにもよくしてくれてたし、依頼も別に出すほどじゃないって言ってたし」
「んで、その依頼ってのはなんだよ?」
ヴァンがそう尋ねると、エティは小さな声でこう呟いた。
「……………………羊の毛刈り」




