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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第6章 回廊

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1

 そこは全てが廻る場所。


 花も。

 海も。

 鳥も。

 雲も。


 命あるものが生まれ、命なきものが死へと辿る。

 あらゆるものが辿り着き、あらゆるものがそこから旅立つ。


 ゆえに、万物の源はみな等しく。

 万物の行く末もまた、みな等しい。


 星は巡る。

 あらゆる縛りから解き放たれ。

 あらゆる理をないものとして。


 天を貫き地を抉りながら。

 愚者のごとく、ただ進むだろう。

 

 善きものと悪しきもの。

 それすらここでは価値を失い。

 ただ等しく、平等のみを与える。


 始まりの終わり。

 終わりの始まり。

 あらゆる事柄は、同じくここを巡るのだ。


 故に人は、こう呼んだ。


 始まりの森。

 『回廊(かいろう)』と。


─────────────────────────────────────


 サトーら一行は、西に位置するガダル王国に足を踏み入れた。

 目的地は『白日の虎』の本部。

 そこが管理するダンジョン『螺旋楽園』に挑むためであった。


 一行はそこで、小さな少女であるエティと出会い、リーゼの過去を知ることになった。

 そうして、色々とあった結果、


「メェ~~~~~~~~~~~~~」

「シェルア!そっちに一頭行ったぞ!」

「わ、え!?」


 羊の群れと格闘していた。


 事の発端は数日前、丁度『白日の虎』の本部を出た次の日の事。


「お金がないだァ!?」


 逆立つような髪型の少年ヴァンは、驚いた様子でそう叫んだ。


「はい。現在の我々はほぼ一文無しの状態です。蓄えておいた分は既に底をついており、このままだと食料すら買えない状況です」


 ニュースの原稿を読むかのように淡々と言葉を並べるのは、メイド服を身にまとったリーゼと呼ばれる人物だった。

 つい昨日まで、彼女を中心とした騒動を終えたばかりだというのに、彼女の態度は以前と何も変わっていなかった。


「まぁ、ここまでほとんど仕事してないからねぇ」


 のんびりとした口調で同意したのはシャグラだった。

 茶色の髪を綺麗に伸ばした彼は、実年齢よりもずっと若く見えた。

 だが、その貫禄と実力は既に常人の領域を軽く超えており、積み重ねた経験がそれを強固なものにしている。


「ど、どうしよう…………アタシがダンジョンで失敗したから…………?」


 一人ワナワナとしている少女こそエティ本人であった。


 猫の耳と尻尾のある少女は、つい最近まで冒険者の間で『疫病神』と嫌われていた過去があった。

 彼女自身も大きなトラウマになっているのか、そのことに触れると性格が変わったかのように落ち込んでしまう。


「そんなことないよ。元々はリーゼがちゃんと相談しなかったのが原因だし」


 エティのことを励ましつつ、さらりとリーゼに向けて毒を吐いているのがシェルア。

 黒の真っすぐな髪と、青色を基調とした服装は、いつ見ても非常に可愛いものであった。


「シェルア、随分と逞しくなったなぁ…………」 

「師匠、感動するとトコじゃねェと思うんすけど」

「まぁ、はっきりと物事を言えるようになったのはいいことだよねぇ」


 ややズレた感想を抱いているのが、サトーと呼ばれるやや特殊な生い立ちの青年だった。

 彼は記憶を失っており、自分の年齢すら忘れていた。

 そのため、本名すら分かっておらず、サトーという適当に名付けた名前を使っている。


「んで、実際どれくらい残ってるわけ?まさか本当に一文無しってことはないでしょ?」


 サトーが明るく努めたまま、リーゼにそう尋ねる。

 だが、リーゼのからの反応はなく、嫌な沈黙だけが周囲に残った。


「……………………」

「マジでないやつ?え、ホントに?嘘とかじゃなくて?」

「師匠…………」


 隣にいるヴァンがポン、と肩を叩いた。

 どうやらリーゼは本当に嘘をついていないらしい。


 徐々に、置かれている状況を正しく認識し始めたサトーは、恐る恐るシャグラにこう尋ねた。


「エルフィン王国の王都までって、あとどれくらいかかる?」

「うーん、そうだなぁ。関所を超えないといけないから、早くても二週間くらいかなぁ」

「因みに、食料って何日分?」

「ざっと三日」

「ダメじゃん」


 ここにきて唐突に冒険の旅の終わりを知らされたサトーは、静かに天を見上げた。

 ありがとうお母さん。

 顔も名前も知らないけど、俺はここまでだよ。


「……………………あの、さ。一つ提案があるんだけど」


 おずおずと手を挙げたのはエティだった。耳をぺたんと伏せたまま、エティはこう言う。


「アタシ、これでも結構長い間冒険者やってるんだけど、まぁ知っての通りで全然ダメでさ。その時に、お金を稼ぐためによく行ってた場所があるんだよね」

「一応お尋ねしますが、ギルドを介しての依頼は不可能ですよ?」


 リーゼにそう尋ねられ、エティはビクン、としっぽを伸ばした。


「だ、大丈夫だと思う。アタシなんかにもよくしてくれてたし、依頼も別に出すほどじゃないって言ってたし」

「んで、その依頼ってのはなんだよ?」


 ヴァンがそう尋ねると、エティは小さな声でこう呟いた。


「……………………羊の毛刈り」

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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~
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