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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第5章 白日の虎

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35

 回想の旅は終わり。


 リーゼは一人、冷たい感覚によって意識が覚醒する。


「…………」


 体を動かそうとして、両手が鎖に繋がれ、上に持ち上げられていることに気が付く。

 緩やかに嘆息し、全身の力を抜いた。


 驚くほどに力が入らない。

 散々力が入りすぎることに苦悩していたのが馬鹿らしくなる状態に、我ながら笑みを浮かべるしかなかった。


「よう。目が覚めたみたいだな」


 どすの効いた声。

 それだけの言葉で性格の悪さが理解できるような、陰湿な声だった。


 飛び出そうな目玉に、コケ落ちた頬と真っ黒な隈。

 手足に肉は殆どなく、もはや病人かと疑いたくなるような体型。

 身に着けているエプロンがあまりに似合っていなかった。


「どうだ?せっかくだから、昔の部屋を用意したんだが」

「…………快適ですよ。あなたがいなければ特に」

「…………そうか。それはよかったな」


 ポツリと呟いた後、彼は手に持っていた筒についていたボタンを押す。


「────────ッ!!」


 直後、全身が跳ねるほどの衝撃が貫いた。

 不自然に体が動き、歯を食いしばらないと意識が飛ばされてしまいそうになる。


 数十秒経って、ようやくそれは止まった。

 男はにっこりと不気味な笑みを浮かべる。


「効くだろ?その手錠のおかげさ。権能や魔術の類を封じ込める魔器だそうだ。どうだ?気持ちよかったか」

「……………………」

「そうかそうか。それならもっとくれてやるよ!」 


 男は狂喜乱舞しながら、ボタンを押し続ける。

 リーゼは必死に体に力を込め、もだえないようにこらえていた。


「この業界で、アンタの話は知らないやつはいないさ。巨人族と人のハーフで、当時の奴隷商人を皆殺しにした極悪人の『羅刹』だ。そりゃもう、昔のオレは震えに震えたさ。いつの日か、こうやって好きなようにできるかもしれないってなぁ!」


 男は笑う。

 零れ落ちそうなほどに瞳を見開いて。


「アンタが自分から捕まりに来た時は、そりゃたまげたさ!まさか、こんなにも簡単に夢が叶うなんてなぁ!思わず達するところだったんだぜ!勘弁してくれよなぁ」


 エプロンの下の方に不自然な突起があるまま、男はクネクネと体を揺らした。


「だからまぁ、安心しろよ。簡単には殺さない。嬲って嬲って嬲って、その後でじっくりと痛めつけてから高値で売ってやる。丈夫な体で生まれたことに感謝しながら、その日を待つといいさ」


 男は満足したのか、ボタンから手を離し、壁にある突起に引っかけた。


 あまりに無造作な管理に、リーゼは嘆息と共に察する。

 おおよそ、他の人の憂さ晴らしに使わせるのだろう、と。


 床は濡れており、異様な匂いが充満している。

 なるほど、高火力の電撃を流すのには適している空間だった。

 服が濡れるのは仕方ないと思っていたが、これなら湿ったままにはならないだろう。


 リーゼは天井を見上げ、息を吐いた。


(私は、自分の意志でここに来た)


 ここで私が捕まれば、二人が捕まらない確率はぐっと上がる。

 あの手配書で唯一似ているのは自分だけだ。

 その自分がいない状態で、彼らの正体を当てられる人はいないだろう。


 なにより、日に日に力の加減ができなくなっていた。

 ほんの少し力を込めただけで鉄製の鍋が湾曲してしまうほどに、力が余っていた。

 その事実を悟った瞬間、私は彼らとは一緒にいられないと納得できてしまった。


「…………どうして、なんですかね」


 別れには慣れている。

 もとより一人きりだったのだから、ただ昔に戻っただけだ。


 悲しむ必要も、憂う必要もない。

 それが当たり前だった日々に戻っただけ。


 なにより、自分がしたことは許されることではない。

 大勢の命を奪ったのに、その罪の意識なんてどこにもない。

 そんな私が、あの中に存在していいわけがないのだ。


「…………まぁ、時間はいくらでもあります」


 そう。幸いなことにも時間はいくらでもあった。

 ほんの僅かにしんどいことがあるだけで、他は大したことない。

 ただ耐えて耐えて、耐え抜けば終わる話だ。


 それだけ。

 それだけで済む。

 そのはず、なのに。


「どうして、なんですかね…………」


 気づけば、リーゼの頬に涙が零れていた。

 拭うこともできないまま、静かに頬を撫で、床に落ちていく。


「……………………け、て」


 気がついてしまったら、もう止まらなかった。

 想いが、溢れる。


「…………………………………………誰か、助けて」


 既に手遅れだと知りながら、それでも彼女は思い浮かべてしまった。

 だから。


「─────見つけた!」


 声がした。


 目の前、檻の先。

 巨大な盾を背負った、独特な髪型の青年が息を切らして立っていた。


 いるはずがない。

 だって、私は自分の意志でここに来たのだから。

 彼が私のためなんかに、ここに来るわけがないのだから。


「ちょっと待ってろ」


 それでも、青年は言う。

 この場において、最も大切な言葉を。


「すぐに助ける」


 ヒーローはどこにもいない。

 おとぎ話か、もしくは幼少期の願望か。

 都合よく誰かが颯爽と助けてくるほど、この世界は優しくない。


「……………………サトー。なぜ、貴方が?」


 だがそれは。

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