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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第5章 白日の虎

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 ──────記憶が、綻ぶ。


「私は、シェルアを、お嬢様を守る。それが、私の生き方」


 リーゼの覚悟を、プレサスも察したのだろう。

 近くに置いてあった書類に署名をすると、その場でリーゼに渡した。


「なら、これは貴殿を任命する。細かな手続きは我がしておこう」

「ありがとう、プレサス」

「気にするな。本来であれば、貴殿に嫌われてもおかしくない立場故」


 スカーレットの死を回避することは難しくても、シャグラの処遇はもう少し粘ることができたはずだ。

 それをプレサスは、ただ見送ることしかできなかった。

 それは()()()()()という、古臭いしきたりが理由だった。


「ありがとね。それと、さようなら」

「…………」


 リーゼはニコリと微笑むと、静かに踵を返した。


 その時、扉が勢いよく開かれた。

 現れたのは年相応ではない白髪を生やした、二人にとっても周知の人物だった。


「オイ!シャグラが追放ってどういう…………ってリーゼちゃんか」

「センさん。こんにちは」

「あぁ、こんにちは。どうしたのこんなとこにって…………」


 センの目が勢いよく動く。

 その先には、リーゼが持っていた紙に向けられていた。


「──────おい、プレサスさんどういうことだ」

「いいの」

「よくねぇだろ!」


 センの怒号を、リーゼはどこか他人事のように聞こえた。

 本来なら、驚くか喜ぶべき場面であるはずなのに。


「それ、シェルア様の処遇の権だろ。あんたまさか、本気で彼女を森の奥に押し込むつもりか?あの子はまだ五歳なんだぞ?まだ、親から離れられないくらいの、子供じゃねぇか」

「セン」

「俺らはなんのために騎士になった?地位?名誉?違うんだよ。俺らは未来のため、子供のために戦ってるんだ。どんなに辛くてしんどくても、その先が善いものだって信じてるんだ。あんたがしていることは、それを踏みにじっているのと同義なんだぞ?」

「セン」

「甘いのは分かってる。そんなに世の中上手くいかないことも分かってる。だけどな、それでもアンタならできると俺らは信じてんだよ。それをあんた、こんなタイミングで踏みにじるとか正気か?それがあんたの本性なのか?」

「セン」


 リーゼの言葉に、センはようやく言葉を止めた。

 息を荒げたままのセンに向けて、リーゼはにこやかに笑みを向けた。


「大丈夫。私が志願したの。私が、シェルア様を守るって」

「リーゼ…………」


 その言葉に、センは何も言えなくなっていた。


 静かで、抑揚のない言葉。

 それだけで、彼女の覚悟が伝わってくるのが分かった。


 分かってしまえば、どんな言葉も邪魔にしかならない。

 分かってしまった以上、センが言えることは何もなかった。


「ありがとう」

「…………っ!?」

「私のために怒ってくれる人を、結局私は見つけられなかった」


 リーゼの境遇を本気で憂い、少しでも善い未来を作ろうとしたのは、センとプレサスを含めた四人だけだった。

 どこを見ても誰も話しても、この四人以上に凄い相手はいなかった。


 だから、センが本気で怒ってくれたことも、プレサスが本当はしたいことも、理解できるくらいにはリーゼは成長していた。

 することができた。

 

 だからこそ、彼女は深々と頭を下げた。


「さようなら。どうか、お元気で」


 プレサスは何も言わず、センは握られた拳で空を切ることしかできなかった。

 そしてリーゼは部屋を後にし、そのままとある部屋へと向かう。


 何度も歩いた道。

 友に会いに行く、最後の道。

 彼女は扉の前で深く息を吸い、そして吐いた。


「…………うん」


 そうして彼女は扉に手をかける。


 これが、リーゼが()()()()()()()()()()()()()()のこと。


 大切な何かを失って、大切な何かを守るために。

 独り戦うことを誓った、そんな誰かの物語である。

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