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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第5章 白日の虎

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 外から聞こえてくる話し声が、どこか遠い場所のように感じる。


 リーゼの過去。

 その正体。

 そして、いなくなった理由。


 それら全てを、一度に聞かされたのだ。

 ため息すら憚る沈黙を最初に破ったのは、サトーだった。


「…………ま、話は分かったよ。とりあえずはそれでいいや」


 そう言うと、サトーは立ち上がって近くに立てかけてあった盾を背負う。


「どこに行くの?」

「トイレ。少し長くなるから気にしないで」


 シェルアの問いにサトーはヒラヒラと手を振ってその場を後にした。

 扉が閉まり、その姿が見えなくなったころに、ヴァンが大きく背伸びをした。


「んじゃ、オレも出かけてくるわ。他に話はねェだろ?」

「え、探しに行かないの?」

「師匠いないのに行くわけねェだろ。今日は休暇、好きに過ごそうぜ」


 んじゃ、とだけ言って、ヴァンは窓から飛び降りた。

 空いた窓から吹き込む風が、小さくカーテンを揺らす。


 残された三人のうち、同じタイミングでシェルアとシャグラが立ち上がった。


「それなら私も。行ってみたいところがあるの」

「オジサンは買い物かなぁ。欲しいものがあるんだよねぇ」

「ちょ、ちょっと!?」


 そうしてあっという間にエティ一人になってしまった。

 エティは自身のベットに移動すると、音を立てて寝ころび天井を見つめた。


「…………どういうことなのかしら」


 確かに今は親睦を深めている場合じゃないだろう。

 リーゼがどんな位置にいる人なのかは知らないけど、間違いなく彼らにとって大切な仲間なのは間違いないはずだ。


 なのに、話は思ってたよりもずっと淡白に終わってしまった。

 もっとこう、助けに行こう!とか、なんでそんなことをしたんだ!みたいはことを言うのだと思った。


 もしかしたら、彼らは私が思ってたよりもずっと淡白なのかもしれない。

 それなら、私が失敗したことを追求してこないのも納得がいく。

 最初から全く期待されていなかったのなら、文句なんて言うだけ無駄でしかない。


「…………………………………………あれ?」


 もやもやする気持ちを抱えたまま、エティはぼんやりと天井を見上げ、そこであることに気付く。


「トイレって、確か部屋に備え付けじゃなかったっけ?」


 今使っている宿は部屋に浴室とトイレが備え付けられている。

 用があるときはすぐに使えるため便利である反面、定期的に掃除をするみたいなサービスがないので、自分たちで手入れをする必要があるのだ。


 これを面倒と捉えるかプライバシーが守られていると捉えるかは人によるだろう。

 エティは後者寄りであった。


「流石に、昨日一度も使わなかったってことはないわよね…………?」


 サトーとシャグラ、ヴァンの三人が同室だった。

 サトーが使ってなくても、どっちかは使っているだろう。

 知らないかもと思えば、自室に戻るよう促すはず。

 それを敢えてしなかったのは、自室に戻るものだと確信しているからだろうか。


「……………ううん。違う気がする」


 よく思い出せ。

 彼らはなんて言った。

 なんて言って、部屋を後にした。


「────まさか」


『今日は休日。好きに過ごそうぜ』

『行ってみたいところがあるの』

『欲しいものがあるんだよねぇ』


 そう言った。

 聞き間違いはない。

 間違いなく、彼らはそう言った。


 買い物、欲しいもの、好きに過ごす。


 その言葉の真意を、彼女はようやく理解してしまった。

 だがそれは、ほんのわずかに遅かった。


「────いやいやいや、流石にそれはないでしょ!」


 エティは急いで服を着替え、杖を手に取って宿を取り出す。

 全力で街を走る。

 長い間過ごしたことで覚えた裏道を抜け、出来る限りの力で走った。


 向かっている先は第一区画。

 ギルドの本部を中央に据えた時、北西に位置する区画だ。


 ガダル王国に最も近く、それでいて最も治安の悪い場所。

 ここに暮らす人なら誰一人として近づくことがなく、初めて来た冒険者ですら、街の人から忠告される場所。この街の闇の最奥。


 名を奴隷管理センター。


 この国最大の奴隷売買施設にして、堅牢な警備と無数の護衛が駐在している難攻不落の城塞。

 その守りの様は王宮の警備にも劣らないとされている。


 どうしてこんなものがあるのかは単純明快。

 ギルドによる独占と奴隷の管理のためだ。

 一か所で売買が行われれば、必然的に秘匿性が高くなるのは道理である。


「ありえないっ!ホントにありえないっ!」


 どうか勘違いであってくれと思いながら、エティは走る。

 途中、唾の広い三角帽子が落ち、ネコのような耳が露わになっても、彼女は気にすることなく走った。

 だが、


「────なに!?」


 地面が揺れる。


 何かが爆発する音と共に、エティが走る先から黒煙が上がった。

 街の人々は不思議そうにその煙を見つめ、何かあったのかとぽつぽつと不安を口にする。


 ただ一人、エティは顔を大きく歪ませた。


「あぁホント。最悪なんだけど…………」


 その襲撃を、予知できていた者はきっといない。


 浸透していた決まり。

 絶対のルール。

 長い間、そこにあった常識。


 打ち壊したのは四人の冒険者だった。

 駆け出しの、ろくに実績を重ねていない一団。

 それでも、のちにこう言われることになる。


 その結末は、極めて妥当であったと。

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