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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第5章 白日の虎

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20

「元からザハ様はいなくなると分かっていたのでは?考えが甘いですね、あなたは」


 そうそう。こんな感じの突っ込みがきそうなのだ。

 なんでかは知らないけど、最後に一言付け加えるのだ。

 それも絶対にいらないであろうタイミングで、だ。


「…………って、ちょっと待って」

「え、リーゼ…………!?」


 いる。


 なんでかは知らないが、そこにリーゼがいた。

 てか当たり前のようにいすぎてあまりに自然に納得していたが、目の前にいるのは正真正銘、本物のリーゼだった。


 なにより服装もいつの間にか例のメイド服に戻っている。

 きっとメイド服を見てほっとする機会は二度と来ないだろう。


「リーゼッ!」

「お嬢様…………!?」


 我慢の限界だったのか、シェルアがリーゼに抱きつく。


 リーゼは驚きのあまり動きが固まるものの、ピクリとも身動きをすることなくそれを受け止めた。

 思わず自分もいきそうになったが、流石に理性が勝ってくれた。


「もう心配かけさせないで…………」

「…………すいませんでした」


 シェルアの声は僅かにかすれており、時折鼻をすする音が聞こえた。

 やはりというか、かなり頑張っていたようだ。

 らしいといえばそうかもしれないが、その健気さはいつ見ても綺麗だなと感じた。


「手続き終わったッス…………ってなんだよリーゼいるじゃねェか」

「いたら何か問題でも?」

「あァ?ねェよんなモン。心配してソンしたぜ」


 ヴァンはぶっきらぼうにそう言うが、それでも本当はかなり心配していたのだろう。

 先ほどから彼の周りに小さなつむじ風ができていた。


(……………………ん?)


 ふと、リーゼの右手の手首、手袋の隙間からキラリと光るものが見えた。


 ブレスレットだ。

 銀色の、素材は金属だろうか。


 多分そこらへんで簡単に買うことができそうなほどに安価な造りにしか見えないので、彼女が持っていたとしても何も不思議ではない。

 ただ、些かそれはリーゼに合ってないように見えたが。


(いや、でも、なぁ…………)


 反芻し躊躇うも、最終的には好奇心が勝ってしまった。

 少しだけ躊躇いながらも、サトーはブレスレットを指さしながら尋ねる。


「てか、さ。リーゼってブレスレットなんてつけてたっけ?俺が気づかなかっただけ?」


 嫌な沈黙だった。

 リーゼはほんの僅かに眉を動かすと、ブレスレットに触れながらこう説明した。


「実は、ここでこれを見つけて買ったのですが、その際に皆さんとはぐれてしまいまして」


 抱き着いたままの状態でリーゼは軽く頭を下げた。

 気色悪いほど素直な姿に、ヴァンがギョッと目を見開き驚く。


「行く宛もないので、ひとまずここに待機していたのです。ご心配おかけして申し訳ありませんでした」

「や、ま、いいんだけど、さ」

「何やってんだァ」


 辛うじて返事だけすることができたが。

 丁寧で分かりやすい説明だけに、何か引っかかるものを感じつつ話を切ってしまう。

 

 なにより、あのリーゼが自分の非を認めて、丁寧に頭を下げる。

 確かにリーゼらしい丁寧さではあるが、それをサトーらに向けてするのは初めてのことだった。


 サトーは思わず何事かと聞こうとするが、それ以上に言わないことを思い出した。


「…………シャグラはもっと発言しような。驚くなり喜ぶなりしてくれないとびっくりするし、見つけたのならちゃんと報告しよう。サプライズにする必要もないでしょ」

「いやぁ。これでもしているつもりなんだけどなぁ」

「してない。全然してない。なんなら常に淡白で正直何考えているのかまるで分からない」

「こればかりは完全に同意見ッすねェ」


 サトーとヴァンに睨まれても、シャグラはニコニコと笑みを崩さないままだった。

 その余裕は助けになる場面もあるが、基本的には面倒以外の感想はないのでやめてほしい。


「へー、アナタがリーゼね。アタシはエティ、よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。エティ様」


 差し出された手を、リーゼは深々としたお辞儀で返した。

 エティはもにょもにょと掴まれなかった手を動かすと、腰に両手を当てるとこう告げた。


「まーいいわ!それじゃ行くわよ!」

「テメェが仕切んなテメェが!」


 先頭を歩くエティにヴァンが悪態をつきながら張り合うように続く。

 その後にサトーが続き、シェルアは立ち止まったままのリーゼの方を向いた。


「?どうかしたの?」

「いえ。どうぞ気にせず先に行ってください」

「う、うん。分かった」


 トコトコとサトーに追いつくシェルアを見ながら、リーゼは小さく嘆息した。


「…………いいんだね、本当に?」

「…………はい。シャグラ様にはご迷惑をおかけしますが」

「いいよ。そういうのは、オジサンの役目だからねぇ」


 シャグラとリーゼは短く言葉を交わすと、やがてその後を追った。

 その後ろ姿はどこか寂しげで、消えそうなほどに小さく見えるのだった。

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