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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第5章 白日の虎

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10

 サトーが目が覚めたころには、ツークとプレサスの姿はなかった。


 ヴァンが言うには早朝のうちに去ったらしいが、外で寝てしまっていたのにまるで気が付かなかった。

 荷物やテントがあった場所がぽかんと空いており、それがなんだか妙に寂しく見える。


「大丈夫。話したいことはちゃんと話せたから」


 シェルアはそう言うが、別れの言葉を交わしてなかったはずだ。


 自分たちの立場を考えれば、次会えるか分からないだろう。

 向こうだって立場上迂闊に会うこともできないはずだし、下手すればこれが最後になるかもしれない。


 だというのに、シェルアの様子は変わらないままだった。

 そこにはツークへの信頼が現れているようで、複雑な関係だからか妙に嬉しかった。


 一行はそこから、ひたすらに西へと向かった。


 目的地である『白日の虎』の本部はガダル王国の中心にあるらしく、更にその西にガダル王国の首都があるらしい。

 数日走らせてもまるで景色が変わらないためか、その広大さに感嘆する以外することがなかった。


「…………なんだ?」


 そうして数日が経った頃、進行方向の先に何かが見えた。


 乾いた地面とはまるで異なる、オレンジの斑点。

 それは、近づくにつれて徐々にその色を濃くしていくと。


 花の香りと共に、その輪郭を露わにした。


「おおおおおおおおおおおおおおお!」


 そこはあまりに美しい街だった。


 オレンジ色のレンガの屋根に、白の漆喰で塗られたような壁。

 建物は複雑な形状をしながらも、それでいて一定の形を創るように配置されている。


 建物の二階付近から顔を出す人が見えることから、恐らく建物そのものが通路であり住宅としての役目を果たしているのかもしれない。

 西洋の、さながら映画に出てくるような景色が広がっていた。


「やっと、着いたぁ…………」


 酷く疲弊した様子でシャグラが荷車に入ってくる。

 ここ数日、殆どシジマの操縦をし続けていたからか、腰と肩が凝っている様子だった。

 特にマッサージの類をしてあげようとは思わないものの、ねぎらいの言葉をかけるくらいはしておこう。


「凄い…………!これがギルド『白日の虎』の本部がある街…………!」

「すげェなオイ…………!一体どんだけの人がいんだァ…………!?」


 シェルアとヴァンは荷車から降り、興奮気味に周囲を眺めている。

 その後に続いてサトーも荷車から降りた。


 『明星の狼』の本部との大きな違いは周囲を囲う壁がないことだった。

 建物そのものが外壁のような役目を果たしているためか、ここからでも街の中の様子が見える。『明星の狼』では門をくぐらないと中の様子が分からなかったため、この光景は新鮮に映った。


 ふと、リーゼの姿が見えないことに気が付き、荷車に戻る。

 到着したのにも関わらず、リーゼは目を閉じたままだった。


「どうかしたか?もう着いたぞ?」

「分かっています。どうかお気になさらず」


 気にするな、と言われてもシェルアとヴァンは楽しそうに街の様子を眺めている。

 シャグラは疲れたのかヒラヒラと手を振ったが、ただ座ってただけのリーゼは疲れる要素がないはずだ。


 というか、リーゼは体を動かしたい側だろう。

 ずっと座ったままの姿勢は、ぞんざいに体を凝り固めてしまう。


 それでもリーゼはピクリとも動こうとしなかったため、仕方なしにサトーはシェルア達の方に近づいた。

 そのはしゃぎっぷりは今すぐにでも街に乗り込んでしまいそうなほどだったため、なんとか宥めつつ、一旦は荷車に戻るよう促す。


「そんで、どっから入ればいいわけ?」


 サトーがそう尋ねると、リーゼが目を閉じたままこう答えた。


「近くに荷車が通れる場所があります。まずはそこに向かいましょう」

「通れるって言っても、そこら辺から入れねェのかァ?」


 ヴァンがそう尋ねると、シャグラがのんびりとした様子で会話に加わる。


「魔術装置があるだろうから、多分通れないねぇ。きっと、決められた場所以外は見た目だけ空洞なんじゃないかな」

「マジか。そんな感じしねェっすけど」

「そりゃ、視ただけで分かるような安易な造りにはしないさ。この街の性質を考えれば、むしろ当然ともいえる仕組みだねぇ」


 どこか含みのある言い方に、シェルアとサトーは顔を見合わせた。

 リーゼは一つため息をつくと、一切の姿勢を変える事なくこう伝えた。


「覚悟だけはしておいてください。場合によっては、気分を害する可能性がありますので」


 その発言の真意が理解できず、シェルアとサトーは首を傾げた。


 その一方で、ヴァンは何か気が付いたかのように目を見開いた。

 シャグラはヴァンに対し目くばせをすると、お互い小さく頷くのだった。

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