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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第4章 エルフの里

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21

 例えるならそれは、()()だった。


「ホント、勘弁してほしいねぇ」


 そこはエルフの森の外、開けた丘の中腹だった。

 シャグラは転がりながら勢いを殺すと、上空から迫りくるそれを見て慌てて後ろに飛ぶ。


「──────っ!」


 それは真っすぐに、右手の拳を振り下ろした。

 直後、地面が陥没し、遅れて衝撃波がシャグラを襲った。


 リーゼ。

 そう呼ぶにはあまりにかけ離れた容姿の彼女は、うなり声を上げながら、フラフラとシャグラの方を向いた。

 その眼光は獣よりも鋭く、まるで何かにとり憑かれるているようだった。


(どうやって倒したのか、彼女に聞いておくべきだったかもねぇ…………)


 頬に流れる汗を袖で拭いながら、シャグラは彼女を注視していた。

 念のために身に着けておいた鎧も、使い慣れた剣も、今の彼女を相手にしているとあまりにも頼りなかった。


 背中が痛む。

 森を出たのは彼女に腕を掴まれ、そのまま投げ飛ばされたからだ。


 数メートルを軽く超える距離を吹き飛ばされるも、どうにか擦り傷と軽度の打撲で済んでいるのは正直運がいいとしか言えない。

 訛り切った体では、致命傷を避けるので精いっぱいだった。


「ふっ!」


 ()()()()()()、シャグラが仕掛ける。

 肩に剣を背負ったような構えから、その左足を狙った攻撃だった。

 殆ど予備動作のない一撃は、確実に彼女の不意をついていた。


 だが。


「いッ!?」


 鈍い衝撃。

 せいぜい動きを鈍らせる程度だろうと高をくくって放った一撃は、それ以上の結果をシャグラに示していた。


 剣先は間違いなく彼女の足首を直撃し、刃先が皮膚で止まっていたのだ。

 その硬さは岩に剣をぶつけたかのような衝撃。

 思わず、シャグラの顔が強張る。


「っば!?」


 それどころか、彼女はほぼ同時に右の拳を放っていた。

 狙いは甘く、あまりに直線的な一撃であるそれは、普通なら難なく躱すことができるもの。


 だが。


 メキメキメキメキッッ!!


 安直な攻撃は、様々な要素を持って絶対の一撃と化し。

 拳は空を切り裂くように進み、その小指の端がシャグラの鎧を掠める。


「ぐぅっ!?」


 上半身を折って回避しようとしたシャグラは、背骨が抉り取られるような激痛に襲われた。


 掠る。

 ただそれだけでシャグラの体は吹き飛ばされ、地面を何度もバウンドする。

 両足では止まれず、剣を地面に突き刺すことでどうにか止めることに成功する。


「いやぁ、勘弁してほしいなぁ…………」


 だらりと力を無くした左腕を見て、シャグラは呆れた様子で笑った。


 今の一撃で左肩が外れたのだ。

 掠るだけでこれなら、直撃すれば結果は見えている。


「…………ッッ!!」


 苦悶の表情を浮かべながらも、強引に肩を押し込んではめ直す。

 力んだ体から空気を抜くと、改めて彼女と向き合った。


 無規則の暴力。

 理不尽なまでのそれは、まるで行き場のない子供の駄々だった。


(里の外に出たのは不幸中の幸いかなぁ…………平地じゃなかったら受け身もとれないし、被害が大きくなりすぎるからねぇ…………)


 こんなものを里の中で振るわれたら元も子もない。

 それこそ依頼どころの話ではなくなる。

 

「──────、──────!!」


 彼女のはずのソレは、苛立つように唸り声を上げた。

 低く、震えるような声に、シャグラの足が僅かに震える。


(いやいや、勘弁してほしいなぁ…………)


 いくつもの戦場で死線をかいくぐったシャグラの体が、ソレに怯えていた。

 それは生まれて初めて経験する、逃走本能だった。


「さて、と。そろそろ本気出さないとやばいんだけど…………」


 強がり。

 誰も聞いていなくても、そう呟いてしまうのはせめてものことだろう。

 そうしなければ、このまま押し切られてしまうと理解できていた。


(お互いに、時間はなさそうだねぇ)


 彼女はどこか苦しそうだった。

 肩で息をしているのに、整う気配がまるでしない。

 まるで溺れているかのように顔色が悪く、青い痣はその色をより濃くさせている。


「仕方ない。できれば、もう少し穏便に済ませたかったけど」


 時間がない。

 そう考え覚悟を決めた。

 

 息を吐き、剣を構える。

 ヴァンと向き合った時とは異なる構えだった。


 それだけで、圧が数段増した。

 人ではない、城壁のような厚みと重み。


「──────、!」


 野生の本能か、はたまた奥底にある記憶か。

 彼女は獣のように姿勢を低く構える。

 掴んだ地面がボコリと抉れた。


「覚悟してね。リーゼちゃん」


 その言葉を皮切りに彼女が一気に距離を詰めた。

 迫りくるソレを、シャグラは静かに見据えるのだった。

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