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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第4章 エルフの里

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20

 地面を転がったヴァンは、口の中に感じる血の味を確かめつつ距離を取った。


「…………ってェな、クソが」


 それは相手に対してのものであれ、自分に対してのものでもあった。


 戦況は劣勢だった。


 ヴァンは最初から全力で仕掛けていた。

 シャグラとの一戦で、自分の実力はそれほどではないと自覚していたからだ。

 それ故に、どんな相手であれ全力で行くべきだと考えたのだ。


 だが。


「おやおやおやおや、威勢しか勢いがありませんが」

「黙ってろクソ野郎が」


 ヴァンの全身には焦げた跡があちこちに残り、対する二人組は一歩たりとも動いていなかった。


(小さい方は何もしてねェ。問題はあのデカいほうだ)


 ヴァンは再度飛び掛かると、その背後を取り右足での回し蹴りを放つ。

 だがそれは。


「ッ!?」


 バツン!という音と共に弾き返されてしまう。

 突き抜けるような痛みを無視して、ヴァンは続けさまに左足の後ろ蹴り、更に右足での胴蹴りを放った。


「ッァ!?」


 しかしそれも、バツン!という音と共に弾かれ、態勢を大きく崩す。


(まずッ!?)


 直後に迫るそれを防ぐために、ヴァンは両腕を十字に組んで防御の体勢を取る。

 結果は、すぐに来た。


「──────ッッ!?!?」


 四度。

 バツン!という音と共に、ヴァンの体が遥か後方へと吹き飛ばされる。

 地面を転がりながらも、ヴァンは歯噛みしながらそれを睨みつけた。


(あの槌、魔器じゃなくて遺物の類だろうなァ…………死角からの攻撃すら防ぎやがるとか、マジで当たる気がしねェ)


 二人組の周囲に、紫色の稲妻が漂っていた。


 それは帯電する雷雲のように二人の周りを漂い、時折バツン!と音を立てる。

 焦げた箇所から出ていた黒い煙を風で消し、再度それを確認する。


(自動防御付きの、中近距離武器ってトコだろうなァ…………風でガードしても、当たり前のように貫通してきやがる。そりゃ、落雷も空気を通って地面に落ちんだから、ある意味じゃ当然だがなァ)


 突破口が見当たらない。

 今の段階では、あの遺物を突破する手段が思いつかない。


 それ以上に問題なのは、あの大柄の男は今のところ何もしてないところだ。

 時折槌を手放した、かと思えば眼前にそれが迫っており、吹き飛ばされると槌は大柄の男の手の中にある。


 風で動きは察知できても、速度と膂力のせいで対応が間に合わないのだ。


「……さーてと。どうすっかなァ」


 シャグラにはあしらわれ、コイツには攻撃すらできていない。

 力量差は明確だが、それにムキになって特攻するほど馬鹿ではなくなっていた。


 少なくとも、以前の自分なら迷わず突貫し続けていただろう。


「そんなとこで眺めてても、こいつの防御は突破できないんじゃない?」


 やたらと小柄の方が煽ってくるが、正直どうでもよかった。

 むしろ下手に反応して加勢に加わられるほうが遥かにマズい。

 煽るだけで済むなら、今は言わせておけばいい。


(問題なのは、風が効果的じゃねェってトコだ。動きの先読みだけはできてっから、辛うじて致命傷は避けられてるが、それも時間の問題だろうなァ)


 風を使った攻撃も、それを纏った物理的な攻撃も、全てあの雷の防御に阻まれてる。

 自動だからか不意を衝くことも難しいだろう。


 いっそのこと竜巻を起こして閉じ込めても、その後の有効的な攻撃がないのであれば無駄でしかない。


「ほらほらほらほら、何かしないと負けちゃうよ?いいのかな?」


 うるさいが、それでいい。

 言っていることは間違っていないのだから、放置しろ。


 今はただ、あの防御をどうにかすることだけを考えろ。

 そう意識を集中させようとした、次の瞬間だった。


「な、なんだァ?」


 背後。

 敵と向き合っているのに、思わず振り返ってしまうほどの衝撃と土煙が見えた。


 かなり遠く、ここからでは見えないくらい離れているのに、頬を叩いた衝撃はひしひしと伝えてくる。

 小柄の方は器用にステッキを回すと、つまらなそうにそれを睨んでいた。


「あーあ。こりゃダメかな」


 そう言うと、右手に展開していた魔術陣を消し、くるりと踵を返した。


「オイ!どこ行く気だテメェ?」


 ヴァンがそう尋ねても、マジシャン姿のそいつはこちらを振り向くことなく。


「あとは任せるよ、『トール』」


 肩をポンと叩くと、一瞬のうちにその場から消えていた。


 感覚で捉えられないということは、転移魔術の類だろう。

 あらかじめ用意していたか、魔獣を送り込むための魔術陣を自身で使ったか。


 どちらにせよ、既にヴァンの感覚下からはいなくなっていた。


「…………オイオイオイ」


 爆発音が連続して、絶え間なく起こる。


 何かが猛烈な勢いで暴れている。

 だけど、それが何で、どうしたらあんなことになるのかはまるで分からなかった。


(って、マジか。よりにもよってそういうことかよ。道理でオレの風を突き破れるわけだ)


 感覚を尖らせると、片方の人物は特定できた。

 今まさに相手している人物と同じ、圧倒的に強い人物。


 以前戦った時は、恐らく実力の殆どを出していなかったのだろう。

 明らかに纏っている空気が違った。

 もし仮に最初からあぁだったら、間違いなく喧嘩なんて売っていない。


「…………」


 大柄の男は隙だらけのヴァンの背中を見ても、何故か何もしようとしなかった。。

 どうしてか分からないが、常に閉じられている瞳は、ただ真っすぐにこちらを見ているように見えるのだった。

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