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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第1章 始まりの森

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 村長に勧められ、近くにあった別のベンチに腰掛ける。

 村の人々はみな一様にこちらを見ている。

 だが、村長と話している姿を見たからか、先ほどより敵対心が薄まっているように感じた。


「で、あなたのお名前は?」


 村長に聞かれ、自分の名前を教えてなかったことを思い出し、「佐藤です」と答えた。


「サトーか、ふむ…………聞いたことない名前じゃな…………」


 そりゃどう考えてもこの世界と合っている名前ではないのだから、聞き覚えがないのは当然だ。

 なにより、佐藤で心当たりがあるほうが正直困る。


「して、シェルア様は息災かな?」

「あ、はい。お元気かと思われます」


 いきなりシェルアの名前が出てきて、ついそう答えてしまう。

 村長はどこか悲しげにため息をつくと、遠くを見ながらこう言った。


「あの御方も、こんな辺鄙な場所に閉じ込められて可哀そうに…………いくら政治のためとはいえ、あまりに可哀そうじゃな…………」

「えっと、その、どういうことですか?」


 この質問がよほどおかしかったのか、村長は大層驚いた様子でこちらを見る。


「そなた、まさかシェルア様のことを何も知らんのか!?あのお屋敷で使用人として働いていると聞いておったが…………」

「あ、いや、その、実は記憶喪失でして…………殆ど何も覚えていないんです…………」


 そういって苦笑いを浮かべると、村長は納得したのか大きく息を吐いた。


「シェルア様のことを知らないとは、とんでもない無礼者か、世間知らずの阿呆かと思ったわ」

「ははは…………それで、どういうことなんですか?」

「どういうことも何も、酷い話なんだよ!」


 背後から急に声がしたと思ったら、膨らんだ布の袋を手に持った若い男性が立っていた。

 先ほどメモを受け取った人物らしく、話を続けた。


「シェルア様は()()()()()()()なのに、末女だから役職も貰えなくてさ!しかも邪魔されないようにこんな森の中に隔離してんだぜ!信じられないだろ?」


「お、おおおおおおおおおおおお、お姫サマ!?」


 思わずそう叫び、その拍子でベンチから転げ落ちた。

 立っていた男性が荷物を降ろし、倒れこんだ自分を起こし上げてくれた。

 頭を強く打ったが、幸いにもけがはなかった。


「え、待って、王女サマなの?シェルア様って?」

 

そう尋ねられた男性は不思議そうな表情を浮かべながらも、こう答える。


「そうだよ。なんだ知らないの?有名な話だよ、この国の六姉妹お姫様って」

「そうよ、一人一人がすっごく優秀で、それぞれで役職を分担してるとか…………」

「遠い国の王子様が毎日求婚しにくるとか」

「そうそう!なんでもファンクラブまであるらしいわよ」


 気が付けば周囲に人だかりができていた。

 どうやら転げ落ちたのを見て駆けつけてくれたらしい。


 村長が名前と、記憶の件を伝えると、周囲の人間はすんなりと納得がいった。

 そんな簡単に信じていいのだろうかと不安になる。


「シェルア様はとても優しい御人だから、きっとあなたみたいな人も見捨てなかったのだろうな」

「だからこそ、城から追放されたって。政ってこう、血も涙もない冷酷な人がやるイメージじゃん?それで合わないだろうからってここに」


 子供に頭をワシワシされながら、周囲の人の話を聞く。

 どうやら、自分は思ってたよりずっと、非常にマズい地点に落ちたらしい。

 誰だか知らんが絶対に許さない絶対にだ。


「で、その話ってここだと割と有名なんですか?」


 気が付けば話がかなり盛り上がっており、遮るようにそう尋ねた。

 周囲の人たちは皆お互いの顔を見合わせると、肯定の意志を示した。


「ここら辺の人なら誰でも知ってる話さ。それに、シェルア様は非常に心優しいってこともね」

「そうそう!一度だけ、お屋敷からこちらにいらしたことがあって、その際お召し物を汚してしまってね?普通は弁償か処罰が下されるんだけど、あの御方は笑顔で『お怪我はありませんでしたか?』って言われたのよ」

「それ俺も見てたよ!ホント他の貴族とかと違って寛容で素敵な人だよな」


 聞こえてきた話はどれも肯定的に、少なくとも自分が接してきたシェルアと大差がないように思えた。

 それなのに、なんとも言えない違和感があるような気がしてならなかった。


 表情に出ていたのか、村長が口を開いた。


「あなたがどういう縁であそこにいるかは知らないが、どうか彼女の味方でいてあげてください。それができるのはあなただけですから」


 村長は自分に近づくと、そっと手を添え目を合わせた。

 少なくとも冷やかしや、嘘をついているように思えず、それでいて勝手に秘密を知ってしまった罪悪感が、ほんのりと心の中に残っているのを感じたのだった。

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