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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?  作者: イサキ
第4章 エルフの里

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14

 どれくらい経っただろうか。

 それほど時間が経ってないかもしれないし、もしかしたら結構の間過ごしていたのかもしれない。


 ただ、どちらにしても濃厚な時間を過ごしたのは間違いなかった。


「…………あざっ、した…………」


 肩で大きく息をしながら、ヴァンはどうにかお礼の言葉を告げた。


「いやいや、こちらこそありがとねぇ。楽しかったよ」


 一方のシャグラは息一つ乱れることなく、ここを訪れた時と同じ様子でそこに立っていた。


 惨敗。

 その言葉がぴったりだった。


 ヴァンはできる技も権能も、使える物は何でも使った。

 なのにシャグラに傷一つ負わせることもできず、吹き飛ばされ、転がされたため、あちこちが泥だらけの傷だらけになっていた。


「…………つえェ」


 それでも、不思議と倒れた地面が心地よかった。

 見上げる木々やそこから漏れる光ですら綺麗に思えるほどの爽快感と充実感が全身に満ちていた。


 負けたはずなのに、完膚なきまで叩きのめされたのに。

 それでもまだ、戦いたいと思えていた。


「さて、と。君に話をしたくてねぇ。ちょっとだけいいかな?」


 近くにあった切り株に腰かけたシャグラは、地面に剣を置くとそう切り出した。

 それを聞いたヴァンは体を起こし、すぐ近くまで移動して地面に胡坐をかいた。


「君を仲間に入れてあげてほしいって頼まれたんだけど、冒険者に興味はない?」


 概ねのことを理解したヴァンは、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。

 シャグラは苦笑いを浮かべながら、こう続けた。


「君と会った彼、サトーって言うんだけど、彼が話に来ると思う。そしたら正直に君の意見を言ってほしい」

「アンタは、どうなんすか?」

「なにが?」

「仲間にしたいって、それ里の連中の提案っすよね。ぶっちゃけ聞く必要あるんすか?」


 聡明だと、シャグラは思った。

 明らかに思い付きで話していない。

 多分、いやきっと幼い頃から感じ理解してきたのだろう。


 そのうえで、自分の意志よりも先にこちらの顔色を窺っているのだ。

 それができるほど、彼はまだ大人と呼べる歳ではないのに。


「彼らは真面目でねぇ。こんなおじさんのために色々してくれたんだよ」


 そしてそれは、彼ら三人にも当てはまる。


「おじさん、つい最近まで腐っててねぇ。この世の終わりみたいに悲観して、ただお酒に浸ってんだわ。まぁお金はあったから、働かなくても生活はできたんだけど」

「ほんとっすか…………?」


 信じられない、と言わんばかりにヴァンが目を見開いた。

 先ほどの動きは、どう考えたって鍛錬を怠った人のそれではなかった。


「そんなおじさんを彼らは仲間になれって言ってきた。最初はまぁ色々あったから、全然その気じゃなかったんだけど、それがまぁすっごく気を使ってくれて。でも、全然諦めなくてねぇ」


 村に張り込んで様子を伺って、かと思えば直接話しかけてきて。

 なのに一度も仲間になれとは言わなくて。聞いてほしくないことをちゃんと避けながら会話をしてくれて。


 それでも、仲間になることを一切諦めなかった。


「だから、できるだけ彼らの迷惑になることはしたくないんだよねぇ。依頼を断って、彼らの評判が下がるのも嫌だし、でも嫌な奴が仲間になるのも嫌だ。だからこうして直接会いに来たのさ」


 シャグラにできることなんて、実際はそんなにない。

 彼らは彼らで冒険者としてやっていけるだろう。

 その場に自分は、もしかしたら適切ではないかもしれない。


 だけど、思ってしまったのだ。

 一緒にいたいと。

 できることがあるなら、してあげたいと。


 結果それが、ほんの少しだけ空回りしていたけど。

 それでもやはり、彼らの隣にいることを、諦めることはできなかった。


「…………興味がない、といえば嘘っす」


 ヴァンはぽつりと、そう呟いた。


「でも、オレは嫌われ者だし、なにより外での生活ができる自信はないです。あの人らと仲良くできる自信もないし、もめ事を起こさない自信もあまり」


 爺さんの顔が浮かんだ。

 里の連中と喧嘩すると、必ず怒って、一緒に謝ってくれた。


 次の日には、何事もなかったかのように振舞ってくれて。

 相手が悪い時の夕食には自分の好きな物が出てきた。


 それが嬉しくて、ちょっとだけ恥ずかしくて。

 そんな日常の記憶を、ふと思いだしていた。


「ま、そこは彼と話すといいよ」


 そんな回想なんてどうでも言わんばかりに、シャグラはさっくりとそう言った。


「…………今、そういう流れじゃないんすか?」

「それを決めるのはおじさんじゃなくて、彼だからねぇ。少なくとも、君に危険な要素はないし、素直になれば案外可愛いとこもあるってのが分かっただけ収穫はあったかな」

「なッ!」


 顔を赤くするヴァンを尻目に、シャグラがその場を後にしてしまう。


 残されたヴァンは一人、ぶつけようもない羞恥心を、砕いていない薪にぶつけるしかなかった。

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