第8話
「クエスト?裏ギルド入会のための試験の続きってことでいいのかな」
「そう取ってもらって構わないよ」
『クエスト2 ジュリ婆の依頼を解決せよ』
「じゃあ、話を聞かせてもらおうかな」
「まぁ掛けな」
ジュリ婆が真剣な表情で言うので、カウンターに座った。
「2ヶ月前、大通りに面している酒場でウエイトレスをしていた娘が殺された。未だに犯人は捕まっていない、公明正大で名高い王都の警吏や騎士団がこの件については一切動かない。その真相を探って欲しい」
「真相を探る、犯人を捕まえるんじゃなくて?」
「……真相が分かるなら、犯人を捕まえるのも手かもしれないね」
おいおいUCの運営チームの皆さん、いやこの世界を創ったAIさんか?いきなり話題が重すぎないか、さっきまで狼と戦ってた初心者にやらせるクエストじゃないだろ。
「ジュリ婆とその娘の関係は?」
「……」
「ヒントはなしですか」
「まぁ、そこまで期待はしてないよ。駄目で元々このクエストを受けてくれさえすれば裏ギルドへの入会を許可するよ」
「成否は問わないと、クエストにする意味あるのかこれ?」
ジュリ婆が静かに俺を見つめている。
「いやいや、受けるからには真剣に取り組ませて頂きますよ」
「期待してるよ」
「じゃあ、その大通りの酒場にさっそく行ってみますかね」
扉に向かって歩き出した俺に、ジュリ婆が声をかけた。
「ちょっと待ちな、あんた昼間は行動できないんじゃなかったのかい」
「……そーでした。ここでゆっくりさせてもらって良い?」
「好きにしな、どうせ誰も来やしないからね」
肩をすくめると、ジュリ婆は苦笑した。
「では、お言葉に甘えて」
酒場の椅子を並べて簡易のベッドを作ると横になり、ステータス画面を開いてログアウトをするのだった。