第14話
アルべトレッサ王国の王都は上から見ると、正方形の形をしていて城壁に囲まれている。その中心は始まりの噴水がある広場でそこから東西南北に大通りが走っていて、4つの小さな正方形の区画に分けられている。
裏ギルドがあるのは北西の区画、冒険者ギルドは南西の区画。レベッカを襲った奴らのアジトは南東区画にあった。北東の区画は王城と貴族街があり、そこだけさらに城壁に囲まれていて普通に立ち入ることは出来ない。
もちろん俺の用があるのは北東区画にある王城だ。貴族街に入るには大通りに面している門が2ヶ所あるだけだ。
大通りから貴族街の城壁を見上げていた。時間は深夜、大通りと言えど周りに人影はない。助走をつけて思い切りジャンプした、バンパイアの身体能力で城壁の兵士が見回る通路に着地した。見回りの兵が来る前に貴族街の建物の屋根に飛び移った、ここから王城までは屋根伝いで行けそうだ。
王城に無事辿り着いたものの、俺の会いたい人物がどこに居るのかまではわからない。ここからは地道に探していくしかない。
「黒爪」
手を強化して石の壁をクライミングしていく、暗視のスキルがあれば窓から目的の人物を探すことも可能だ。覗き見をしているようで関係のない人たちには申し訳ない。
「ここにいたか」
目的の人物を見つけると窓から静かに侵入した。
ベッドで横になっている人物の肩を叩いて起きてもらうことにした。
「こんばんは」
「……私がアネスト・アルべトレッサとわかってやっているのかね」
「ご無礼はお詫びするしかございません。少々お時間をいただけないでしょうか、国王陛下」
俺の考えは作戦と呼べるものではないが、2人いる殿下のどちらが主犯なのかわからないのなら、父親にどちらが怪しいか聞いてみようという事だ。
ジュリ婆からも現国王がこの事件に関与しているとは思えないとアドバイスをもらっている。俺は国王にレベッカの事件の概要と俺が調査したことを説明した。
「では私の子供が国民を拐い、あまつさえ殺害したと申すのか」
「私が調べた限りでは」
「間違い、もしくは王族を犯人にするのも罠ということはないのだな」
「そこまでするメリットがありませんので間違いはないと存じます。残念ながら、こちらも明確な証拠があるという訳ではありませんが」
国王は厳しい表情で俺を見つめて続きを促した。
「ですので、直接問い詰めさせていただきたいのです。国王陛下から見て怪しいと感じる殿下の方を」
「自分の子らを天秤に掛けろと言うのか」
「酷なことを言っているのは重々承知しております。しかしこれは王国と裏ギルドの間に軋轢を生むための陰謀です、王国への反逆ではありませんか?」
厳しい表情だった国王が、苦しそうな顔に変わり、黙り込み顔を伏せた。
5分ほどすると、国王は大きく息を吹き出して顔を上げると、厳しい表情に戻っていた。
「王子のジョナサンであろうな、考えられるのは」
「そうですか、ではジョナサン王子に真相を聞くとしましょう」
「策があるのだな」
俺は国王に頷いてみせた。




