第13話
騎士たちの後をつけるのは諦めた。警戒心がリーダーの比ではなかったのだ。主犯格が殿下だとわかっただけでも上出来だろう、欲張らない方が良い。
俺も倉庫を離れて、裏ギルドの酒場に向かうことにした。
「ただいま」
酒場に入ると、ジュリ婆がカウンターに座っていた。
「……クエストは終わったかい」
「まだ半分って所かな、ノーヒントの割には頑張ってませんか」
「坊やならやれると思ったから頼んでるんだよ」
「そうゆう事なら、そろそろ知ってることを話してくれないかな。レベッカのお婆さん」
レベッカの家にあった写真にはレベッカとジュリ婆が写っていた。そして今のところ俺はレベッカが死んでいるという確信を得ることが出来ていない。レベッカが死んだと言っているのはジュリ婆だけなのだ。
「レベッカは私の孫さ。」
「ご両親は?」
「レベッカの母親が私の娘なんだけどね、こんな仕事だろ、私が夫と別れて子供の時から会うことも無くなってね。裏ギルドの力を使って様子は時々確認してたんだけど、流行り病で両親が死んでしまった所を引き取って育てていたんだよ」
「レベッカは裏ギルドのことは?」
「知らないよ、レベッカを育てる頃には私もある程度の地位にいたから、上手く立ち回ることが出来る様になってたんだけどね」
「ジュリ婆はレベッカが死んだのは自分に原因があると考えているの?」
「ほとんど間違いないだろうね、2ヶ月前わざわざレベッカの亡き骸をここの通りに置いていったんだよ。ホントの標的は私だったんだろう」
「殿下が犯人だってわかってたの?」
「裏ギルドに敵対している組織なら直接私を狙うだろうね。裏ギルドと繋がりがあって、ここの場所を知っているのはこの国では王族だけさ」
「どんな理由があって私に喧嘩を売っているのかまでは分からなかったから、すぐに報復はしなかったが坊やの報告を聞く限り間違えなさそうだね」
「王族に喧嘩を売るってこと?」
「先に仕掛けたのは向こうの方さ、私だけでやるから全面戦争とはならないけど、タダじゃ済まさないよ」
「それもうちょっと待ってくれない?」
「何か待つ理由でもあるかい?」
「この事件少し変じゃないか?ジュリ婆がすぐに犯人を絞ることが出来るくらい雑な仕事なのに、街の住民にはかなり慎重に隠している」
「それで?」
「むこうはジュリ婆への直接的な攻撃には出ていない、これじゃ怒らせているだけだ。まるでジュリ婆の方から攻撃してくるのを待っているみたいだ」
「……確かに一理あるね」
「もう少し調べさせてくれない?真相が分かった上でジュリ婆が報復するって言うなら俺もお供するからさ」
「わかったよ、このクエストは坊やに任せたんだ、報告を待っているよ」
「ありがとう、きっと期待に応えてみせるよ」




