第11話
次の日の夜も酒場が見える路地裏に身を潜めていた。今日の目的はレベッカが居なくなった日に現れたという6人組だ。奴らは間違いなく事情を知っている。
6人組は店が閉まる頃に最後の客として出てきた。その後をつけて行く、男たちは王都の外縁の近くにある貧民街の方に向かっている。
貧民街の長屋の1室に入ったのを確認して、窓に近づき中を確認する。覗いた窓からは5人確認できた。リーダーと思わしき痩せ型の男だけがいない、よく見ると隣の部屋に繋がるドアがあるようだ、これは都合が良い。
地面に落ちていた、壁から剥がれ落ちたレンガを拾って室内で唯一の灯りだったランプ目掛けて思いっきり投げ入れた。
ガッシャーン
「あ、灯りが消えた。誰だ何が起こった」
室内にいた5人の中で1番ガタイの良いスキンヘッドの男が統率を取ろうとしているが、真っ暗ではそれも上手くいかない。男たちが右往左往している所にドアから静かに入ると、スキンヘッドの男以外の4人を倒した。
「お前らどうした!何があった」
腰に下げた剣を抜いたものの、未だに俺を捉えることの出来ていないスキンヘッドの男の腹部を蹴り、隣の部屋へと続くドアに叩きつけた。
「ぐはっ」
痛みで蹲る男に質問を始めた。
「お前らのバックには誰が居るんだ?」
「何を言ってやがる。こんなことしてただで済むと思うなよ」
「そうゆうのはいいんだよ、なんの確証もなくこんなことすると思うか?」
「……俺らはリーダーに言われたことをしただけだ。依頼主が誰かは知らねー」
「嘘つくんじゃねー、お前がリーダーだろ。依頼主を知らないなんて信じると思うなよ」
「嘘じゃねー、ホントなんだ。勘弁してくれ」
どうやら、この男は俺に勝てるとは思っていないものの、隣の部屋に居るリーダーを売る気も無いようだ。
「じゃあ、酒場のウエイトレスはどうしたんだ」
「あいつは仕事帰りに歩いている所を拐った。その後はリーダーが連れていってどうなったかはわからねー」
「目的も分からずに人を拐うのか、このクズが!」
「がはっ」
聞きたいことを聞くと、わざと怒鳴り上げスキンヘッドの男を殴り気絶させた。床に落ちていた剣と手に取ると、隣の部屋に居るリーダーに聞こえるように声を出す。
「くそ、こいつらは下っ端か。リーダーって奴を探さなきゃならないのか」
苛立ちながら長屋を出る振りをすると、バンパイアの身体能力を活かして屋根に飛び上がり、身を潜めた。
5分ほど静かにしていると、下から物音が微かに聞こえた。すぐに周りの様子を伺いながら痩せ型のリーダーが出てきた。他の仲間が出てくる様子はない。
「1人で逃げようなんて卑怯な奴だな。依頼主までの道案内くらいはしっかりしてくれよ」
闇に身を潜めながら、リーダーの後をつけていくのだった。




