第10話
深夜1時、再びウエイトレスの居なくなった酒場に戻ってきた。路地裏に身を潜めて店を見張って30分くらいでマスターが店仕舞いを始めるのがわかった。酒場には冒険者が来ることが多いようで、依頼をこなすため朝の早い冒険者はそこまで深酒をすることはないのだろう。
酒場の中にはマスターが1人しかいない、話を聞きに行くとしよう。
「こんばんは」
「もう店仕舞いだ……あんたは」
「ちょっとお話良いですか?」
「何にも話すことなんてない、帰ってくれ」
「こっちも依頼なんで、簡単には引き下がれないんですよ」
「依頼?誰がそんなこと。まさか闇ギルドか、あんた」
どうやらUCの住人にとっても裏ギルドよりも闇ギルドが有名なようだ。
マスターが勝手に勘違いしてくれているようなので、利用させてもらおう。
「まぁ、はっきりとは言えませんがそんな所です。あまり手荒なことはしたくありません、話していただけませんか?」
「か、勘弁してくれ。俺にもよくわからんのだ」
「あそこに座っていた連中が関係しているんですね」
先程来た時に気になる連中がいた店の奥に目線をやると、マスターは頷いた。
「そうだ、レベッカが仕事に来なかった日に奴らが現れた」
「それでお婆ちゃんの世話のために田舎に帰ったことにしたと」
「連中がそう言ってきた。俺もそれが本当だとは信じちゃいないが、ずっと居座られちゃ何も言えやしない」
「じゃあ彼女、いやレベッカさんが実際どうなったかは知らないと」
「知らない、知らないがあんな連中に目をつけられたんじゃ無事で済むとは思えん」
「連中が最後に出て行ったようですが、いつもそうなんですか?」
「そうだ、俺が余計なことを言わないように見張っているんだろう。おかげで常連の客たちはほとんど離れて行っちまったよ」
確かに重い雰囲気を出されてしまえば、何も知らない客も居づらくなり離れていってしまうだろう。
「では最後の質問を、レベッカさんが住んでいる所は知っていますか?」
「あぁ、前に聞いたのを覚えているよ」
「確認に行ってはいないのですね、連中には言いましたか?」
「誰にも言ってない、たまたま聞いただけだからな。怖くて見にも行けやしない」
「それはしょうがないでしょうね、解決できるように尽力します」
「そうして貰えると、助かる。俺が言えた義理じゃないがレベッカのためにもな」
「そうですね」
マスターに聞いた住所にやって来ると長屋があり、その1室がレベッカの家だった。中に入ると裕福な暮らしとは言えないが整頓された綺麗な部屋だった。
荒らされた様子はない、少なくともここで襲われたわけではないようだ。
ベッドの横の小さな机には日記と思われるノートが数冊とお婆ちゃんと写っている写真の入った写真立てを見つけた。
写真立てを手に取って、写真をよく見てみる。
「え、これって」




