婚約破棄を言い渡しますわ! 6
side アレサ
ども、アレサっす。
皇子に婚約破棄をババーンと突きつけたリリーナたんは、さっそく翌日、国皇陛下直々の呼び出しで王宮に向かうことになったっす。
アタシとパイセンは、リリーナたんの護衛ということで同行したわけっす。
まあ、ヒロインちゃんもいるわけっすけど、このさい、パイセンがゲームの強制力に操られるかもとか言ってられないっす。
アタシには『終わり』の予感がするんす。
バッドにしろハッピーにしろエンドロールは近い……したら、これを見逃すわけにはいかないんす、だって、リリーナたんは転生前のアタシが生み出したキャラなんすから……
さすが王宮というか、謁見の間だけでも学校の体育館みたいに広くって、玉座も遠くに見える。
床には白大理石がピッシリと敷き詰めてあって、これがつなぎ目もわからないようにピカピカに磨き上げられているのがいかにも高級そう。
だけどアタシは、とあることが気になっていた。
「てか、この風景、見たことあるんすよね……」
『ミララキ』は基本的に全ての物語が学園の中で展開する。
デートで街に出たり、劇場に行ったりはするけれど、王宮に行くなんてシーンはなかったはずなのに……
「んー、どこで見たんすかねえ」
首を傾げたアタシの顔を、隣に立つパイセンがヒョイと覗き込んだ。
「どうした?」
ちなみにパイセン、本日は公式の場ということもあって筋肉増強魔法はオフモード、普通のマッチョ体型だ。
だから、ダブルの護衛服がやたらめったら似合う。
「おうふ、パイセン、あんまり顔近づけんでくださいっす。尊みで死ぬ」
「腐れたこと言ってないで、仕事に集中しろよ」
「はいっす」
って感じで、これがどこで見た風景なのかってことは、スポーンと頭から抜けていた。
思えば、アタシもヤキが回ったっつーか、ちょっと浮かれてたっつーか……エンドロールが近いって油断が多分にあったらしい。
「あっ」と気付いた時には、既に手遅れだった。
「これ、没になった『断罪シーン』じゃないっすか」
ミララキ最大の見せ場ともいえる断罪シーンだが、これ、開発段階では豪華絢爛装飾華美な、どこかの大広間が背景として用意されていた。
その背景画像と、この謁見の間の風景が、ぴったりまったく一緒なのだ。
もっともこの背景、いったい学園のどこの部屋だよってことで、実際には『学園の礼拝堂』に差し替えられたのだけれど。
いま、この謁見の間は、没になった背景と完全に一致している。
人物の配置も同じ。
国皇の座った玉座を背に、こちらを見下して立つのはアインザッハ皇子で、彼はこの期に及んでまだ胸を張っている。
玉座の足元、皇子の向かいに立つのはリリーナたん。
そこから一歩離れた後ろには、ヒロインちゃんが控えている。
それを取り巻く無数のモブ――まあ、アタシもモブ側に立っているんだけど。
「まさか……ヤバいっス」
アタシは隣を見る。
パイセンは自分の身を抱くようにして震えている。
「アレ……サ……」
「パイセン!」
「リリーナを……守ってやって……くれ……」
パイセンは崩れ落ちて床に膝をついた。
その瞬間、アタシは悟った。
いま、『断罪イベント』が始まったことを――
ダレスがいない今、この場を支配する『ゲームの強制力』を断ち切るすべはない。
周りが一瞬、ゆらりと揺れるような感覚があって、モブたちが一斉にがくりと首を垂れた。
「クソッタレっス!」
アタシはせめてリリーナたんを守る盾になろうと駆けだした。




