デートってこういうもんでしたっけ? 7
もしも悪漢どもが見つからなかったら……とも思ったが、それはなかった。
そいつらは街の入り口でわかりやすくたむろしていた。
新カノちゃんはすでにやつらに取り囲まれている。
「へへっ、おとなしくしてろよ、命まではとらねえからよ」
いかにも三下なセリフを吐きながらナイフをちらつかせる男は、俺よりも二回りほど大きなしっかりとした体形をしている。
モヒカンにかりあげた頭がいかにもごろつきって感じだ。
それが五、六人。
チヒロは余裕だ。
「このくらいなら、余裕じゃん! リリーナたん、さっそく変身を!」
リリーナは転生者じゃあいんだから、そんな急に話を振られても困るばかり。
「ええっ、変身って何ですの!」
「こういうのは雰囲気が大事だからね! 適当に変身の呪文を唱えて! たとえばそうね、『ピピルマピピ……』」
「ちょーっと待った!」
俺は慌てて割って入る。
プリリンパとかされたら一大事だ。
「できるだけ既存の魔法少女と重ならない方向で」
「え~、じゃあメイクアップしたりとかラパパったりとかも?」
「するな、マジで。あと、技名もオリジナルでお願いします」
「ちぇ~っ、某クリスタルパワーとかやってみたかったのに~」
「っていうか、何気にチョイスが八十年代なんだけど、転生前の年って……」
「おっと、年の話はやめてね~、命が惜しいなら♥」
ここに、リリーナがふいと口をはさんだ。
「あの、なんとなく理解したので、試してみてもよろしいですか?」
さすがはリリーナ、順応力が素晴らしい。
チヒロは大喜びだ。
「ためしてみてみて、大歓迎よ!」
「では、『わが身に加護を、ハートに勇気を、変身!』」
「いいじゃん、いいじゃん! それっぽい!」
チヒロが大喜びでリリーナに魔法をかける。
魔法の光は細い帯となってリリーナを包み込んだ。
光がお胸やお股などのエッチな部分を隠しつつ、その隙間から腰のくびれや太ももなどの女性らしいラインがチラ見えする80年代仕様の変身シーンだ。
やがて光が収まると、リリーナはミニ丈のドレスにレースやらリボンやらをたっぷりとあしらったコスチュームを纏った80年代風魔法少女に変身していた。
「こ……これが私?」
「ぼーっとしないで、リリ・ブラック! 行くわよ!」
「ええ、チヒ・ホワイト!」
ってか、順応はやっ!
呆れる俺をしり目に二人はやる気満々で、か弱い少女を取り囲む悪漢の真っただ中に飛び込む。
「おまちなさい! ここからは私たちが相手ですわよ!」
「乙女のピンチを可憐にレスキュー、拳は弾丸、人呼んでステゴロの悪魔、チヒ・ホワイト!」
「恋する乙女はいつもジャスティス、魔弾は流星、人呼んで歩く業火、リリ・ブラック!」
名乗りもばっちりキメて、まずはチヒロが、自分よりも大柄な悪漢の懐に飛び込んだ。
「ホワイト流星拳!」
百花繚乱千錯万綜、無数の拳が悪漢に叩き込まれる!
「ぐほっ!」
拳圧に耐えきれずに吹っ飛ばされた男は、ドウと音立てて地面に倒れた。
「ホワイトばかり見ていると、怪我しますわよ!」
リリーナが片手を高くあげる。
「闇の牙!」
闇色の風が吹いた。
その風が小さな牙となって悪漢どもに噛み付く。
「うわぁぁっ!」
大の大人たちが両手を振り回して逃げ惑う。
その隙にリリーナとチヒロは、悪漢に取り囲まれていた少女に駆け寄った。
「大丈夫、怪我はない?」
「はい、ありがとうございます……」
「いいってことですわ! 乙女の敵は人類の敵! 成敗ですわ!」
二人は少女の肩をトンと押した。
「今のうちに逃げて」
「ここは私たちにお任せですわ」
少女は一瞬、戸惑う。
「でも、あなたたちは……」
「私たちは平気!」
「むしろあなたがいると足手まといですのよ! ですから、行って!」
「は、はい!」
少女を逃がした後で二人は、地に膝ついた悪漢たちに向き直った。
「ホワイト、この方たち、どういたしますの?」
「そうね、ブラック、罪も無きか弱き乙女を怖がらせたんだから、相応の罰を受けてもらわないとね」
悪漢の一人が不敵な笑みを浮かべる。
「ふふふふふ、できるものならやってみろ」
悪漢は仲間を呼んだ!
ぴいっと甲高い指笛の音があたりに響く!
「ん~」
「呼んだか~」
建物の影から、路地の奥から、建物の中から、ぞろぞろと悪漢‘Sが現れる。
その数、およそ五十人。
ホワイトことチヒロはわずかによろめいた。
「私、モノを出す魔法と体術は得意なんだけど、こんな大人数を相手にする攻撃魔法はちょっと……」
ブラックことリリーナも及び腰だ。
「私も、護身のための魔法ですから、こんな大人数は……」
美少女戦士、ピンチ!
俺は援護のために魔法の指陣を組むが、これだって多人数の大して風の刃を浴びせることはできるが殺傷力の低さが玉に瑕という代物……足止め程度にしか役に立たないだろう。
つまり俺たちは、これだけの人数を相手にするには戦力不足ということだ。
「くそっ、万事休すか!」
俺が呻いたその瞬間、凛とした声があたりに響いた。
「お待ちになって!」
ぱららら~っと鳴り響く勇ましいラッパの音、さらに近くの建物の屋上に並び立つ三つの影。
一つはのっぽで一つは小太り、もう一つはたぶんそばかす面だろう。
「とう!」
勇ましい掛け声とともに、その三つの影が建物から飛び降りた。




