デートってこういうもんでしたっけ? 4
包みもなく、リボンも駆けず、そっけなく渡されたそれを、俺はリリーナに差し出す。
「つけてあげるよ、後ろを向いて」
-リリーナはゆるりと頷いて頭をさげてくれた。
俺はふと、チヒロ直伝のイケメンゼリフを思い出した。
それは恋愛ものでよく使われるセリフなのだとチヒロは言っていた。
リリーナの髪に安っぽい髪飾りを挿しながら、俺はささやく。
「大人になったら、ちゃんとしたものを贈ってあげるよ」
チヒロがさも残念なものを見るような目線を俺に向ける。
「それ、理想は指輪買った時に言ってほしいから」
「え、だめ?」
ちょっとしょんぼりしてしまった俺に向かって、リリーナは身振り手振りも交えて熱弁をふるう。
「ダメじゃありませんことよ、私、とっても嬉しいですし、それに、指輪じゃなくってこれが欲しかったんですもの!」
さらに「ふん」と鼻を鳴らして、悪役令嬢っぽく俺に命令する。
「さあ、次はどこに連れて行ってくださいますの? 私を楽しませないと、許しませんことよ!」
どれだけ悪ぶってみせても所詮はワンコ。
ついとすました顔もまた可愛い。
チヒロが、俺にそっと耳打ちした。
「あんた、わかってんの?」
「なにが」
「リリーナたんがあれを欲しがったわけ、あれ、あんたの瞳の色じゃん」
「偶然だろ」
「偶然? ふ~ん、へ~、ほ~」
「なんだよ」
「いや、この作戦、当たりだったなあと」
「作戦……?」
「あんたねえ、忘れたの? これ、リリーナたんを救済エンドへ導く作戦でしょ」
正直、何を食べさせてもニコニコご機嫌で可愛らしいリリーナに気を取られてすっかり忘れていた。
そんな俺の鼻先に、チヒロがビシッと人差し指を突きつける。
「いい? 私はねえ、今日のデートでリリーナたんに自信を取り戻して欲しいの! だってこのままだとあの子、ボンクラ皇子に断罪とかされても素直に受け入れちゃいそうじゃん!」
「つ、つまり、ボンクラ皇子に反論できる程度に自信を持って欲しいと」
「そう!」
「いや、それって難しくないか? ずっと暴力を振るわれて、束縛までされてたんだろ」
「んー、でも、私、あんたならできるような気がするのよね」
「買い被りすぎだって」
「そ? ま、いいから、行こう、デートはまだ終わりじゃないでしょぉ?」
チヒロはパッと走り出して、リリーナに飛びついた。
飛びつかれた方のリリーナは、驚いて「何をなさるんですの!」と吠える。
別に怒ったわけじゃなくて、子犬みたいにチヒロに絡みついて、二人でキャッキャウフフと笑いあう。
実に心温まる光景だ。
「なにやってんよのー、ダレスー」
「早く次に行きますわよー」
2人が俺を呼んでいる。
全く平和な光景だ。
しかし好事魔多し--次の店に向かう途中で、俺たちは、一番会いたくないあのボンクラと出会ってしまったのである。




