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ドタバタ⭐︎部活選び! 4

 顔はかなりのイケメンだ。

 キラキラと輝く青い髪を短く刈りあげた、ガテン系のイケメン、それが顔だけ見たときの印象だ。


 しかし顔から下に目を落とすと、顔幅の三倍はあろうかという異常に広い肩幅が最初に目についた。

 しかもこの男、なぜか上半身裸である。

 さらには肩幅に見合うだけの立派な筋肉――とてつもないマッチョだ。

 上半身裸なくせに、三年生であることを示す赤いタイだけをきっちりと締めているものだから、まず変態感が半端ない。


(ははあ、これはイロモノキャラってやつだな)


 俺はそう考えた。

 乙女ゲームに限らず、ゲームや物語にはかなりクセの強いキャラが置かれることがしばしばある。

 これがイロモノキャラである。


 どうやらミララキの制作陣はギャグ担当としてこのキャラを生み出したのだろう。

 それもガチ恋愛ゲームの中に明らかに異質な筋肉キャラがいるチグハグ感が面白いとか、そんなことを考えて。

 まさにイロモノ中のイロモノ、それがこのマッチョでマッスルな男であろう。


 しかし、しかしである!

 イロモノキャラ自体に文句はない。

 それがみるからに筋肉にこだわるネタキャラなのも……ネタとして成功しているかどうかは置いといて、まあ、許容である。

 が、それが実在の人間として目の前に現れるという衝撃はこれ、はっきり言って反応に困る。


 しかも、リリーナが衝撃的なことを口走った。


「おにいさま……」


「あっ、兄ィ?!」


 リリーナは確かにこの男を兄と呼んだ。

 しかし、リリーナは中身は駄犬だが見た目はよく手入れされたアフガンハウンドのような見目の麗しい美女だ。

 対するにこの男は、犬でいうなら土佐犬とか、ブルドックとか、ボクサーみたいな筋肉質の……ともかく、まるきり犬種からして違うような気がするのだが……


 戸惑う俺の前に、ずざざざーっとチヒロが駆け込んできた。

 何故か片手にテニスラケットを握っているのが気になるが。


「もしかして、解説、欲しい?」


「ああ、頼む」


「彼は一周目をクリアしないと出てこない隠れキャラ、グラウス=シュタインベルクよ! お察しの通り、筋肉にこだわり筋肉を信じる脳筋マッスルキャラ! ちなみに攻略可能、決め台詞は『君は俺の上腕二頭筋よりも美しい』だよっ!」


「あの、リリーナのお兄さんだというのは……」


「ああ、義理よ義理。リリーナたんがお嫁に行っちゃったらシュタインベルク家を継ぐ人がいなくなっちゃうでしょ。だから遠縁から養子を迎えたって設定なのよ」


「なるほど、解説ありがとう。ところで、そのラケットは?」


「あ、これ? ラインザッハ様を探しにテニス部に行ったら、体験入部だけでも是非って、泣きつかれてさあ」


「お、おう、そうか」


「っと、いけない、私、ラインザッハさまを探しに行くから、ここは任せたわよ!」


 チヒロは再び、どこへともなく走り去る。

 彼女の神出鬼没っぷりにはもう慣れた。

 いまさら驚きはしない。


 それに、この筋肉男が『攻略可』ならば、試してみたいことがある。

 俺のスキルである『運命鎖の大切断ディスティニーディスコネクト』の発動条件を探ってみたいのだ。


 リリーナとバカ皇子をゲームの強制力から解き放ったこの能力、実は俺もいまだに発動条件が良く分かっていない。

 何しろあの時は必死だったし、こんな能力が俺にあると自覚していなかったのだから、まったくの無意識のうちにスキルを発動してしまったようなのだ。


 スキルと聞くと、いつでもどこでも全自動で使える便利な能力だと思われがちだが、実は『発動条件』という縛りがある。

 つまりスキルを安定して使うには発動条件を把握しておく必要があるわけだ。


 俺はリリーナを後ろにかばいこんだ。

 筋肉マッチョの体にタイをしっかりと締めた変態は、見上げれば俺よりも頭二つぐらいでかい。


 だが俺は臆することなく、片手を彼の見事な胸筋に差し向ける。

 そして大きな声で、カッコよく叫ぶ。


運命鎖の大切断ディスティニーディスコネクト!」


 俺の声はむなしく虚空に響いた。

 もちろん、ゲームの強制力が断ち切られるブツンという音も聞こえない。

 ただ、グラウスが憐れむような目を俺に向けただけだ。


「おい、アタマ、大丈夫か?」


 アタマの中まで筋肉が詰まっていそうな脳筋に頭の心配をされてしまうとは!

 俺は地味にダメージを受けた。


「くっ、なんの、これしきのダメージ!」


 今度は試しに指陣を組んでみる。

 指陣というのは魔法陣を描く代わりに指を組み合わせて陣を組むやり方で、俺たちの感覚でいうと忍者がばばばっと指を組み替えて印を結ぶあれだ。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


 しゅばばばば!っと指を組み、声高らかに唱える俺。

 その後に訪れたのは静まり返った空気と、さらなる憐れみの目……


「アタマ、本当に大丈夫か?」


 俺はカァアッと赤面して黙り込んだ。

 思えば……前回のスキル発動では技名を叫んだりはしなかったし、もちろん九字とかもきってないんだから、これが発動条件なわけがないって、少し考えればわかることなのに……


 じゃあ、何が発動条件だったんだ?

 俺は先のダメ皇子イベントを思い出す。


 あの時は確か……アインバッハ皇子に虐げられるリリーナを庇おうとして……

 もしかしたら、『攻略対象からリリーナを守る』というのが発動条件になっているんじゃないだろうか。


 その条件を試そうというのなら、俺はここでグラウスを挑発し、怒った彼からリリーナたんを守らなくてはなのでは?

 俺はグラウスを見上げた。


 もういちど言っておこう、グラウスは俺よりも頭二つはでかい。

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