bodyguard
大社の奥に到達すると天から滝が流れていた。
その下では目的の壺が天から流れる水を受け止めている。
水の勢いで壺に近づくのには容易ではない。
タカが滝を眺めていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「兄貴~‼ 兄貴~!! 待ってくれよ~置いていくなんてあんまりじゃないすか、そしてなんですかそのババぁとガキは」
「お前どうやって辿り着いた?」
「あの後、目が覚めたら兄貴がいないから必死にそこら中探しまくって大変だったんですから」
「こちらの巾着人はご友人ですじゃ?」
「いや、こいつはただの巾着だ」
オカモトが合流したことによりうるさくなったのでエネが目を覚ます。
「んーーーよく寝た~あ! パパおはよう、―――って放せ放せ‼」
また肩で暴れだすエネに
「だぁれがパパだ‼ 俺はまだ二十五だ」
「兄貴、年齢は関係ないっす」
タカは耳元でうるさいエネを放すとエネは長に
「おばぁちゃん なんでここに案内したの⁉」
「エネ… おまえにも、もう分かってると思うが、このご武人は我々の知る人間じゃないよ」
不服そうな顔を浮かべながらエネはタカをにらみつける。
「兄貴、何したんすか」
「なんも」
「エネちゃーん⁉ こっちおいでーおにぃちゃんと遊ぼうかー⁉」
「うるさいハゲ‼ ハーゲ ハーーーーゲ‼」
「兄貴、このガキぶっ殺すすわ」
徴発されプルプルくねくね震えるオカモトは放っておいて、長に壺のことをタカは聞く。
「あの壺の役割は何だ? ただの飾りじゃねぇだろ?」
「…あの壺ははるか昔に山神様が作ったとされる品の一つじゃ、この品で森の維持管理を壺一つで行っておる」
「なるほどな」
「これがなければ山の加護はなくなり木や土は荒れ果てると言われておる」
長がそこまで話すと横からエネが
「お前らが壺を取りに来たってことは、そうなるってことだ‼ 分かったか? そしてハゲは海へ帰れ‼」
「なんで俺ピンポイントなんだ⁉ このがっきゃーーー‼」
オカモトとエネの追いかけっこが始まる。
「おい、オカモト、うるせぇ」
「この話を聞いた上でも、それでも持っていくと言うのであれば、せめてあの子だけでも守ってやってはくれぬか? あの子はこの山でも特別な子での、わしゃらの… 未来そのものなんじゃ」
「そこまでやる義理はねぇ。けどな、この壺はいらねぇ」
タカは長にそう答えた。
「ちなみに他の連中がこの壺を血眼になって探しているはずだ。いざというときは食い止められそうか?」
「いいや… この村には戦えるものはいない。今はなんとかエネが山神様の力を借りて、加護を受けていない木達・土の霊達と協力して追い返してくれておるくらいしか… 今は頼る手段がないのじゃ」
長は唇を噛みしめる。
「本当なら…… あの子には危険なことをさせたく無いのじゃが、わしゃらが… 情けない」
タカがその話を聞いて
「提案だが、何日かはこの村で露払いをしてやる」
「誠か…?」
今にも泣きだしそうな面の長に
「だが条件として、三食と宿の確保。―――それでどうだ?」
「ぅう、…ありがたい。ぜひそうさせてもらおうかの。どうか村を宜しくお願いしますじゃ」
それから何日か、タカは村でボディガードとして働くことになった。