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VIXI---蒼炎のカルナ  作者: ネコるんるん
一章 【日常との決別】編
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第1-8話 死と別れと

青年は化け物を連れて、煙が消えるようにして姿が見えなくなった。


その頃、タマオは先に進んでいたこうへいとゆいを追い抜かし、一人で扉を開けて中を進んでいった。


後ろにいる叶とレンは、すぐに化け物がいる場を退き、皆の後を追う。


「―――君、助けてくれてありがとう」

レンが叶に礼を言う。

その返答に叶が

「――扉に行くついでだ。助けた義理なんてねぇよ」


2人が必死に走っていると、横からレンが見たことがあり、懐かしくも感じる男が現れた。


「ふ――危機一髪だったで」

その声はもう聞けないと思っていた。


だが彼は戻ってきた。


「よう! レン」

嬉しくて涙目になる。

「アロー…」


「何~死人見たみたいな顔してんねんレン! 出口まで突っ走るで‼」


三人は出口へ急ぐ。

扉の前では、こうへいとゆいが待っていた。

「あれはアローにレン! 後誰だ~?」

「アロー君⁉ 生きて…」

ゆいは涙を流す。


事情をアローは説明する。

爆発させる寸前、アローを誰かが部屋から突き飛ばして、代わりに爆発させたことを。

「結局、あれ誰やったんやろ。命の恩人やでホンマ」


扉を見ながらアローとこうへいが、ぼそっと呟く。

「――さて、なんとか来たけど、これが出口…なんか⁉」

「入口のような気もするな~」


ゆいが不安そうに皆に聞く。

「ねぇ、、誰から入るの?」


沈黙した後アローが

「こういうのは異世界へ通じる扉ってのが、お約束なんやけどな」

と大好きなアニメの設定を口走る。


だが、ここから出られない者が出てくる。


上を見ると

「え? 上の数字が…」


『Ⅲ=0』

『2=壱壱』

『壱=四』


空に表示されている数字を皆が見た。


この出口を通らなければ、この地獄に取り残される。

誰がこの地獄に残りたい者がいるのだろうか? 

残って2を目指すという選択肢もあるが、それは自殺行為と同じだ。


だがレンは言う。

「アロー…こうへい…ゆいちゃん、そして君も先へ行ってくれ」


驚いたゆいやアローが

「え…そんなのムリ! レン君がいたからここまで来れて…レン君がいなかったら…私…」

「レン…そんなの納得いかねぇよ」


「いいんだ…俺は大丈夫だから」


「レン! それなら俺が残るわ!」

レンの言葉を否定する二人だが、こうへいだけは先に了承して直ぐに中へ入っていった。


時間が迫る。


時期にさっきの化け物達が集まってくるからだ。

そんなあーだこうだしている状況を見ていた叶は言う。

「ーーーーお前らキモすぎだろ」

叶はレンに

「くそナイト… 俺ともう一度勝負しろ。そんで負けた方がここに残る。ーーそれでどうだ⁉」 


公然でレンにのされたことを引きづっていたのだろう。


「お前こんな時に何言ってんねん!時と場合を考えろよ」


だが叶はアローを無視して、続けてレンを挑発する。

「お前には最後に忘れられない思い出と一緒に残ってもらうからよぉ。ーーさっさとお前ら邪魔だからいけや」


叶のしつこい言葉を聞きレンも二人に

「決着を付けなければ、彼は納得いかないようだ。頼む」


それでも首を横に振るゆいに、レンは笑顔で語りかける。

「みんな、、後で追いつくよ。しかも一回勝ってるし…大丈夫さ」


ゆいは涙ぐみながら

「……分かった。…レン君‼ 絶対追いついてよね」


レンはゆいに笑顔で返すと次はアローに

「ゆいちゃんを安全なところまで頼むよ」


アローは躊躇ったが了承する。

「…あぁ…絶対来いよ…レン」


レンの笑顔やこれまでの力を信じ二人はこの場を後にする。



『Ⅲ=0』

『2=壱壱』

『壱=一』


レンは2人が通ったのを確認して

「キミには下手な芝居を打ってもらって申し訳ない」


「…は。何のことだ?」

「こうでもしないとあの二人は行かなかっただろうからね」


「どうでもいいんだよそんことは…さて、始めようか」

「ーー折角のお誘いだけど、断らせてもらうよ」


「あぁ?」

「君は自分が勝てないと分かっていて、自分がまけて皆を行かせるために敢えて俺に挑戦を申し込んだ…下手な芝居だ」

くすっと笑いながら言うレンの適格な言葉に詰まる。


「何…勘違いしてやがる…」

叶は自分を犠牲にしようとしたことをレンは見抜いていた。


だからレンは、彼のこの状況下でのワザとらしい挑発やこの状況下での無理やりの決闘にのったのだ。


そんな叶にレンは

「時間がない。…頼みがある」

「あ? ……」

「俺の代わりに…みんなを任せてもいいかい?」


叶の何かが、プツンと切れたた音がした。

「ーーてめぇ、ふざけぇんなよ」

叶はレンに掴みかかり

「そんなに助けたきゃ自分で助けろ 責任を押し付けるな‼ 完全に頭お花畑か⁉」

「…それは…出来ない。それが出来るのは多分、…君だ」

視線が近距離でぶつかり叶はレンに問う。


「お前より弱い俺が、あいつらを助けれると本気で思うのか⁉」

「……」

無音の返答に、叶はレンに拳を振り上げるがレンは抵抗する気がない。

それが叶は余計に腹が立つ。


「そんなに死にたきゃ、さっさと死ね。この臆病もんが」

レンはその拳を避けない。

「―――ッツ……」はず、だったが叶を投げ飛ばし扉の中に入れる。


―――任せたよ――――


叶は、刹那にレンの言葉を聞いた。


投げられた勢いで叶は扉の先の階段を転がり落ちた。

「――――がッ、、てめぇ」


レンに投げ飛ばされたことに苛立ちながらレンのいる扉の方へ眼を向けると、レンの胸が化け物の腕で貫かれていた。


―――ぐッ――――ッッ


大量の血が溢れて胸から流れ落ちる。


―――――…ッ……れ、れんくん…


後ろではアローとゆい、こうへいもその光景を見て言葉を失っていた。


我に返ったゆいが悲鳴にも似た声で叫ぶ。


アローは階段を駆け上がり、レンのもとへ行こうとするが、扉に触れることが出来ない。


「―――クソッ‼クソ‼ なんで向こうに行かれへんねん‼ レン‼ 待ってろ‼ 絶対助けたる‼ ぜったい―――」

すると扉が消え始める。


「―――アロー、…今まで楽しかった。…ありがと…」

ゆっくりと消えゆく扉を眺めるレンの後ろには化け物が何体も迫っていた。


「そんなこと言うなよ‼ レン‼ お前にはまだ―――」アローの言葉の途中で壱の扉が消える。


レンは空を眺めて消えた扉の前に立ち尽くしていると、化け物を従えていた青年が現れる。


「―――君とは一度話をしてみたかったな―――」


レンの意識は遠のく


「―――一度は世界を救った君とね―――今の君には、何を言っても無駄だろうけどね―――」


空を眺めるレンは独り言のように

「…今回も約束守れそうにないや…」


鮮血の血しぶきが宙を漂う。





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