elder
先ほどまで横でぎゃーぎゃーわめいて挙句の果てに疲れて眠った少女エネを担ぎながら険しい山道を登ると少し景色が歪んでいる箇所へ到着する。
「ここだな」
そのまま突き進むと景色がガラリと変わる。
草原が広がり透き通った川が流れ手付かずの自然の筈が、綺麗に整備されているかのように石や造形物が立ち並ぶ。
その中心にあるのが、依頼人から言われていた大社があった。
タカが歩くと村の住人達がいた。
その中には先ほどの黒タイツ集団も混ざっていた。
「……」
村の連中がタカとエネに気がつくと
「エネが人間を連れて帰ってきたぞ‼ あぁ―――終わりだ、もうわし等は助からん」
ここに住む他の者たちが慌ただしくしているとタカが
「ここで話が出来るやつはいるか? 俺はあんたらに危害は加えねぇ」
その言葉に一同が騒然となる。
すると奥からジャラジャラと装飾品をかけた年寄りのお婆が出てきた。
「ざわざわ騒がしい‼ ――――わしゃぁが話をしよう」
出てきたのはこの大社がある村の長のようだ。
「ご武人よ、わしゃらと話しをしてどうするのじゃ?」
「理由を聞いて判断する。状況から考えて、俺らがオカシイだろ?」
タカの言葉に少し長は考えたが
「…… ご武人よ、着いてきなされ」
長老にこの村の大社まで案内される。
大社へ着くとそのまま奥へ進んで行く。
とても人の手で作られたとは思えない程太い樹木の柱で組み上げられ樹木には歴史の背景が何かの言語で刻まれている。
歩きながら長老が話を始める。
「ご武人よ、わしゃらは大昔からこの土地に住まう地の霊じゃ」
「…そうか」
「―――驚きはせんのじゃな。この森では木の霊、土の霊の二種の霊が静かにここでは生活しておった。ほんの百年前まで人間とも共に共存し暮らしていた時期もあった。じゃがの、人間とも交流が薄れ、関わりがなくなり年月が流れた」
「よく聞くような話だな」
「そうかい? …だがそんなある日、人間が突然わしゃらを、山を、森を、殺しにきよった」
プルプルと長老が震え始めたが、落ち着きを取り戻し、また話し出す。
「元気に振る舞ってはおるが、ご武人の肩で寝とるそやつも人間に両親や友人を殺された一人じゃよ」
「――――そうか」
「最近まではあまりのショックで記憶を失ってな。自分のことを人間だと思い込んどったんじゃ。かわいそうな子じゃ」