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VIXI---蒼炎のカルナ  作者: ネコるんるん
一章 【日常との決別】編
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第1-7話 協力者


扉を目指し、途中何度か化け物と遭遇するが、屋根や教室、机や椅子、消火器、使える物は何でも利用し突破する。


だが三体の化け物に追い詰められた。


追い詰められた先には工事中の教室がある。

三人はその中に入り戸を固く閉ざす。


その教室では、誰かがバリケードを作ろうとした痕跡があり、少し手を加えれば即興のバリケードが完成した。


「くそっ…もう少しなのに、こんなんじゃ一分ももたねぇ」


(やばいな…何か考えないと…)


アローは時間がない中、すぐに何かを決心した。

「おい。お前ら。…先に窓から飛んで降りろ」


震えながらゆいが答える。

「私飛ぶなんて、無理だよ…」

「何言うてんねん! ――屋上からダイブできたんだから大丈夫や‼」


逃げるのに必死な三人だったが、追い詰められたことにより、ゆいの精神的限界が近づいていた。


それを励ますかのように後押しするアロー。


レンはそんなアローを見て不安げに聞く。

「アローはどうする?」

「俺はあいつらの足止めをするわ」

「無茶だ、死ぬだけだ‼」

「――大丈夫や。何回も言うが心中するつもりはねぇし。それにこの高さを無事に降りて尚且つゆいちゃんを受け止められるのはお前だけだ。俺だと下敷きになってそのまま即死だ。」

「アロー…」


レンは他に何が策がないか考えるが、すぐそこまで化け物が迫っている。


「――いけ‼ 時間がねぇ‼―――」


レンは窓から飛び降りる。

着地と同時に、前へ前転し衝撃を体の外に逃がす。

「ゆいちゃん‼」

レンはすぐにゆいに合図を送る。


「――つっっっ」

飛んだゆいをレンは包み込むように受け止める。


レンが上を見上げて合図を送ろうとした次の瞬間


DONNN‼ と教室が爆発した。


「――――え…… なんで」

(どうして…なんでお前が…死ぬ気はないって言ってただろ…)


「アロー君‼」

レンやゆいの叫びは爆風と燃え滾る炎の音で届かない。


その教室は学校を増設するにあたり、新たに改築されている部分で、配管等がむき出しで合った。

考えたアローはバイトで培った知識で、ガス供給管の近くに置かれていた工具用のバーナーであぶり、破裂させて爆発させた。


(アロー… ――――…くっ…)

「この爆発音で化け物が集まってくるかもしれない。ゆいちゃん先を急ごう」


「レン君待って。アロー君が…」

ゆいは震えるレンの手に気が付いた。

本来なら一番に飛び出して助けたいはずだと。


立ち止まってゆいを危険に晒すわけにはいかないとそう思ったレンは、ゆいの手をひっぱり出口まで急ぐ。


アローの死を、勇気を無駄にしないためレンは振り返らない。

「行くよ」


赤く、薄暗く、深くうっすらと光る壱の出口。

だがその近くには化け物が一体佇んでいた。

足元には何十人ものおびただしい死体が転がっている。


その中にこうへいの姿があった。

まだ息がある。

だが動こうとはしない。

こうへいは考えてチャンスを伺って死んだふりをしていたのだ。

「この状況。――俺どうしたらいいんだ~?」

だが転がっていた死体の髪がなびいて、鼻に入る。


「はッはッはーーぁあ―――…はっくっ旬‼」

こうへいの変なくしゃみで化け物は気づく。

「GULLLLLLLLLLLLL―――――‼‼‼」

化け物がこうへい目掛けて走る。


「やばいやばい俺ついにやばい。終わる。いやだやだやだまだ女とそんな遊んでないし百三人しか付き合ったことがないのにまだ八人の彼女とも親密さを深めてな――etc――」


後悔が言葉に表れる。

化け物は、その後悔ごと潰すかのように手をこうへい目がけて振り下ろす。


「――それは遊びすぎだ!」

ドン! とその振り落ろされる腕を蹴って軌道を反らした。

振り落とされた腕はこうへいに落ちる事無く、周りにある死体に当たって粉々になった。


レンがここぞというタイミングでこうへいの前に立つ。

「危なかったね! こうへい」


助けたはいいものの、レンには化け物の攻撃は見えてはいない。


腕の振り下ろす位置を予測して、全体重を乗せて放った蹴りがたまたま軌道を反らしたに過ぎない。

二回目をやれと言われて出来るものではない。

(次に同じことをするのは無理だな…)


「こうへい… 今すぐ扉まで走ってくれ」


だがこうへいは動かない。

「――こうへい?」

「無理だ… なぜなら今ので腰が抜けてうごけねぇ… プラス少し漏れた。」


レンはゆいに

「ゆいちゃん‼ こうへいを頼む!」


化け物が動いた。

体を左右に動かしながら迫る。

気持悪い動きだが速い。

レン目がけて横なぎに腕を振るう。

バックステップでかわそうとするが、よけ切れないと分かり、ワザとバランスを崩す。

地面に尻が付く。

化け物の追撃の腕が上から降ってくる。

すぐ横へ回避すると同時に蹴りを放ち、相手の水月(人間でいうみぞおち)を狙う。


(硬い…)


関心している間もなく、化け物の腕が横から降ってくる。

それもなんとか態勢を低くして回避する。


見ている方も心臓や息が止まりそうなギリギリの攻防が行われる。


だが一撃食らえば即死というのは、どれくらの精神が擦り減らされるのだろうか。

レンの息も荒くなり精神、体力とも限界に近い。

次第に動きが鈍くなり、脳に酸素がまわらなくなる。

するとレンの動きが止まる。


(…あぁ、二人は出口へ着いたかな…)

化け物は無慈悲な一撃を振り下ろす。


すると

―――、BOOOOOOWWWW‼


化け物の体が燃え出した。

なぜ燃え出したのか。

レンによるものでもなければ超能力のような類でもない。

――化学薬品による引火だ。

化学薬品なんてものが置いてあるのは、理科室のような化学室か医療器具や薬品を扱う保健くらいのものだろう。

そう保健室。

昼間にレンが公然の面前で打ち倒した、叶によるものだったのだ。


「はぁ――、出口までやっとの思いで来てみれば、頭お花畑のナイトとクソ虫じゃねぇか」


叶は続けて嫌味たらしく化け物に向けて。


「――害虫駆除だ」


「GULLLLAAAAAAAAA」

化け物は火に悶えながら暴れまわる。


叶は化け物目がけて走る。

片手には、ほうきを折って先を尖らせたような即興の武器を持っている。


「――おぉい クソナイト‼」

叶はレンに言う。

「合わせろ‼」


レンも即座に化け物目がけて走り出す。


化け物の横なぎの一閃が飛んでくる。

それをサッカー選手が相手フォワードにスライディングするかのように滑り込み、腕の下をかいくぐり、顔に目がけて武器を放つ! ―――が化け物に交される。


叶はそれを見越したかのように、武器の先を反対に向けて投げていたのだ。


そう… 化け物のすぐ真上に迫るレンに渡すために。


レンは武器を受け取り、空中から全体重をかけた武器が突き刺さる。


少し刺さっただけで、化け物が固すぎるため傷は浅い。

レンは化け物の体が当たり、真横に吹き飛ばされる。


渾身の一撃が失敗した。

だがよく見ると、化け物の足に駐輪所にあった鎖が巻き付けられていた。


あんなものでは数秒程しか足止めできない。

叶は再度タマオに

「タマオ‼ 火を…」

火を投げるように言おうとした時、タマオは叶とレンを残して、我さきへと扉目指して逃げて行ったのだ。


タマオは走りながら

(誰があんな糞なやつを助けるかよ。――俺はな、昔からあいつのことが死ぬほど嫌いで今でも自分が一番大事なんだよ) 


実はタマオは叶と行動している時も自分だけ上手く逃げる隙を伺って待っていた。


そうともしらず叶はタマオを当てにしてしまっていた。


「ちッ…くそッが ―――おいクソナイト。お前出口まで走る――ッ⁉」



叶は後ろを振り返ると一人の青年が立っていた。


その青年は化け物に殺されることなく、まるでその化け物をペットのように頭を撫でる。


遠目からでも分かった。

笑顔で不気味に微笑むその男が、この危機的状況に関わっていることに。

男の声は聞こえないが言っていることが分かった。


―――誰が生き残るのか、楽しみだ―――


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