第2-40話 呪術移植の力
アナーキーという男が呪術を使用する。
呪術とは負の力で自分の限界を突破させる術であり、デメリットの危険性が高いため、ロクサスでも使用する人間は数少ない。
アナーキーの傷が、小さな無数の腕により強制的に塞いでいく。
変異した腕が全身に広がり顔以外、変異の塊と化した。
意識も次第に力に飲み込まれていく。
腕が生き物のように蠢き、人を殺すためだけに特化した怪物。
しかも呪いという能力付きだ。
当然使用した本人は無事ではすまない。
力を出し切った後、死ぬ。
自滅。
決死の覚悟だ。
「なるほどな。根性座ってんじゃねぇか」
ノクスはアナーキーに銃を向ける。
「変革とかそんなこと考えて、動くやる気あるならうちに欲しかったもんだな」
タケミは再度、構える。
(これを……どうしたら、倒せるんだ? ……こんなの、生き物じゃない)
「おい! チビ。離れとけ、手ぇ出すな!」
ノクスがアナーキーへ突っ走る。
先ほどとは比べ物にならない何十、何百という無数の手がノクスを襲う。
空、地中から、まさにアナーキーの手が届く空間範囲内を埋め尽くした腕が、ノクスのいる場所を押しつぶした。
あまりの一瞬の出来事でタケミも声が出なかった。
(あんなの… 避けきれない。 数が違いすぎる)
ノクスはエリア切れだったが、今回のアナーキーの攻撃に関しては、エリアが切れていなくてもあまり意味をなさなかっただろう。
それほど攻撃に特化されたものだった。
元アナーキーという人間だった呪術者は、ノクスを殺しても止まらない。
自身の力が尽きるまで。