第2-34話 リターン
まるで竜巻のように人が次から次へとタカに殴られ、蹴られて吹き飛んでいく。
カルナはその光景を只々見ているだけだった
(なんだ。あいつ…… 暴君すぎだろ)
「ベル! 俺はあいつを追う ここは任せた」
ノクスはバッチとカルナ、タケミの保護をドローン遠隔操作しているベルという少女に頼んだ。
ノクスは退却していった黒幕を追った。
走っていくノクスの後ろ姿を見ながら立ち尽くすカルナにエルンが
《何しとんじゃ がきんちょも追わんかい! ここまできて、いい所取られるで!》
(いいや 任せとけよ)
《それは無責任やで? やるならとことんやりぃや‼ バカチン それにあいつがやられたらどうするねん》
(… そうなってたら無理だろ?)
《アホ‼ バカ‼ そうならないよう援護して仲良くなって、取り入れってことや! こっちの暴君は一人でも大丈夫そうやし》
(なるほどな)
《童はお前のおかんか! はよいけ! しかも追わんかったら童がおもんない!》
エルンに尻を叩かれながらノクスの後を追う。
――――――
すぐそこは都市だというのに、生い茂る樹海をノクスは駆ける。
(魔術師の癖に意外とすばっしこいな)
なんだかんだ言いながらもノクスは男に追いつき、走りながら平行して距離を取る。
ノクスは銃を構えた。
黒フードを被った男は手を右左と振り氷柱を出現させ、ノクスの方に向け発射する。
「バカが… 何度も同じことが通用するかよ‼」
ノクスは避けきれない分だけ、最短で魔術を撃ち落として身を捻り、相手目掛けカルナと似た圧縮した風の弾丸を放つ。
放たれた弾丸は加速に加速を重ねレーザーのように真っすぐ男の体を貫き胴体を二つに分ける。
ノクスの背筋が凍る。
相手を殺したからではない。
凄い殺気に充てられたからだ。
「――やはり君は当たりだ♪――」
気配を消し、いつの間にか背後にはオルカがナイフを振り被ろうとしていた。
「あはっ! さっきの続きだ♪」
(――、っちやばいッ)
喉元までナイフが迫る。