第2-33話 墜落
ノクスがカルナにタケミを固定して自分も列車の何かに捕まるよう声をかけた。
――――省略―――――
「――――――よし。準備はいいな?! しっかり捕まっとけよ!!」
ドン!と列車が何かにぶつかったかのような衝撃を受ける。
(――なんだ⁉ 今のはーーッ)
列車の速度がどんどん減少していったかと思いきや上から重力がかかる。
まるでジェットコースターの上りのようなイメージがカルナには見えた。
ノクスが全員に合図を出す。
「飛ぶぞ!! 全員しっかり掴まれ‼」
――――列車が飛んだ。
カルナは浮遊感により酔いながらもしっかりと掴まる。
しばらく浮遊した列車は重力に引っ張られ落ちていく。
列車が飛んで落ちていく先には湖があり、そこに列車が落ちる。
落ちる瞬間、列車内部に備えられていた緊急バルーンが膨らみ衝撃を和らげた。
ノクスはタケミを固定していたロープを外し、水が入ってくる列車から泳いで出る。
「ふぅ。――――良かったな全員無事だな」
「ゲホッ――おぇ」
「大丈夫かよボウズ」
むせるカルナにノクスが声をかけるが、今回の件で電話をかけようと少し離れた。
岸に上がりノクスが電話で連絡を取っていると周りの森から人の足音が聞こえた。
かなりの人数だ。
「あぁ。―――いやだ嫌だ。俺たちは特に怪しいものじゃないですよ?」
あっという間に囲まれ銃口を向けられる。
(数は二十~三十ってとこか)
ノクスが辺りを見ているとフードを被った如何にも黒幕ですと強調せんばかりの怪しげな男が現れる。
見た目でひらめいた。
「――お前が、列車にややこしいプロテクトをかけたのか?」
その黒フードの男を見てバッチが近寄る。
「すまなかった。今回は失敗したが次こそは―――」
水を固めた氷柱の弾丸がバッチの太股に突き刺さる。
「――ッぐぅっ」
「お前はもう用済みだ。次はもっと生きのいいやつを探すさ」
そう言うと男は手を横に振り、無数の氷柱が浮かび上がらせる。
バッチだけならまだしも、カルナや意識を無くしてぐったりしているタケミもその魔法の範囲に入っていた。
カルナも男に向け銃を構える。
(この状態でやんのか…)
《がきんちょ。運もこれまでか。達者でな!)
(今日はやけに諭すじゃねぇか。このネガティブ野郎が)
《ちゃう! 童ははよ再契約しろと遠回しに言っておるのじゃ暇だし》
(絶対やだ。誰がお前みたいなアホの力なんか借りるかよ)
黒フードの男が手を前にした瞬間、氷の矢が一斉に放たれた。
だが上空から何か落ちてきた。
ドン!!! と音が鳴り響き砂埃が巻き上げられ、目の前が真っ暗になった。
カルナ自身が死んだからではない。
砂が舞って見えなくなったのだ。
まるで隕石が降って来たのかのように粉塵が舞い上がる。
ノクスが降って来たそいつに声をかけた。
「―――遅かったな タカ」
――っちっとタカと呼ばれる男が舌打ちをしながら
「爆弾外し終えたと思ったら、急にドア移動させられて、線路を持ち上げさせられ… そりゃ遅くなるだろうが」
怒りにふつふつと燃えるタカが相手達を睨みつけた。
「あいつらか? あんなチマチマ女みたいな小細工した、玉のちいせぇ奴らは…」
爆発的な脚力で瞬時に囲んでいる一人を殴り飛ばした。
タカは全員に向けて宣言する。
「ボケが…全員ぶっ殺す」