第2-31話 奥の手
ノクスはオルカの言葉を聞いて嫌そうな顔をする
(何かまだ奥の手があるのか? ただ単にいかれてるだけなのか? こういうやつは厄介だ)
―――ジジッ―――とノクスのイヤホンに連絡が入る。
「おっ」
ノクスの視線がオルカの後ろへ行く。
その視線に思わずオルカが
「ん?」
と後ろへ振り向こうとしたが
「――あ、なるほど その手はくわないよ♪」
オルカは振り向かず、視線はノクスに向け、まだノクスとの硬直状態が続く。
「いや ホント! マジだって ほら後ろ‼」
この硬直状態の中、相手から視線を逸らせばやられるのは明白だった。
オルカとて、そのリスクは懸念している。
そんな状況下で、ピクッとノクスが少し左手を動かした。
一瞬オルカの視線がズレた時、オルカの左側頭部に衝撃が走った。
ドローンがぶつかり列車の窓を突き破って外へ投げ出されようとしていた。
そんなオルカを見てノクスは
「ごめん 横だったわ」
ドローンによる追突で吹っ飛び、頭から血を流しながらコンマ何秒の世界で、列車から落ちまいと窓を掴もうとする。
だが勢いがつきすぎて、そのまま列車の外へ投げ出されてしまう。
投げ出された先は丁度鉄橋の上を走っていた。
オルカは、嬉しそうに「ぁああああ最高じゃないか♪」
そのまま橋の下まで落ちていった。
ノクスはオルカの側頭部に突っ込んで吹き飛ばしたドローンに向けて話始める。
「ありがとな 助かった。 ――けどな、もう少しはやくしてくれると助かったんだけどな…… え… なに…… まぁそれはそうだけどな」
話ながらノクスがカルナの方に目をやる。
カルナはこの状況に飲み込まれて棒立ちになっていた。
しばらくノクスが独り言のように誰かと会話していると先両車両の壊れたドアから男が入って来た。
この盗賊団やオルカを雇い計画を立て率いた主犯バッチだ。
「お前らよくもやってくれたな」
ノクスがバッチを睨みつける。
「お前が主犯のバッチだな。お前を拘束し身柄を引き渡す」
「ったく… お前らみたいな何も知らない奴らが俺の… 俺の計画にでしゃばるんじゃねぇよ」
ノクスのイヤホンから音声が流れる。
「ノクス! 何回やってもその列車、ブレーキと速度調整が壊れて緊急システムが魔術、もしくは呪術で何重にもロックがかかっていて、うちじゃ止めれない」
その音声の主にノクスは
「だろうな」
と一言で返す。
「仲間からの知らせか? その残念そうな顔。打つ手なしか?」
「……」
バッチは打つ手がなくなったノクス達に追い打ちをかけるように言う。
「残念だったな 鉄橋を超えればもう間もなく都心に到達する! お前らも都心の連中も爆発に巻き込まれ終わりだ‼」