第2-30話 ノクス
迫りくる恐怖にカルナは固まって動けなくなっていた。
《がきんちょ 何しておるのじゃ‼ ホンマ首ちょんぱなる!》
焦るエルンが騒ぎ立てている。
だがカルナは考えすぎて動かない。
いや、動けばすぐ殺されるから動けないのだ。
なにせタケミが子供をあしらうようにやられてしまったからだ。
動きたくても動けない矛盾が頭の中をめぐっていた。
「さぁ。君は僕に何を見せてくれるのかな?♪」
オルカがカルナとの距離が数歩のところで、天井が壊れた。
ドン! と天井が落ちてくる。
オルカは天井が壊れる寸前、危機を察知し後ろへ飛んだ。
カルナは咄嗟に顔を腕で覆う。
腕をどかし前を見ると、第三者、誰かが立っていた。
その誰かが電車の天井を壊し中へ入ってきたのだ。
「おう。見たことある顔だと思ったら風呂の時のボウズか」
「…… あんたは… あん時の」
「名前がまだだったな! ノクスだ。宜しくな」
それで――――っとノクスはオルカに視線を向ける。
「お前 名前は?」
「僕かぃ? ――僕はオルカ。誰か似てる人でも知ってるのかぃ?♪」
「いいや 人違いだった。じゃ気を取り直し――ッ」
ノクスが話している途中にオルカがナイフを投げつけた。
至近距離で投げられたにも関わらず首を横に倒しギリギリで交す。
「ッあぶねぇな… いかれてんのか? ―――ったく手癖の悪りぃ野郎だな」