表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VIXI---蒼炎のカルナ  作者: ネコるんるん
一章 【日常との決別】編
6/163

第1-5話 現状

教室の外は悲惨な光景だ。

誰の腕や足か分からない肉塊が落ち、散々な景色だ。


(悲惨だな… こうへいや他のみんなは無事なのか⁉)


後ろからへっぴり腰のアローが


「レン… 俺こんな中歩けへん…」


そんなアローの背中を優しくポンと押し、優しくも喝を入れる。

「大丈夫だよ。こんな局面、何度も映画で体験してるだろ?」

(―――実は俺もこの状況はかなりまいっているけどね)


その言葉を聞いたアローは

「ちゃう! 映画と一緒にしたらあかん!」


日常会話でアローの気持ちが少しでも楽になればと、レンの配慮である。


今二人がいる校舎は、中心の棟より少し離れた場所に位置する。


こうへいが連れて行かれたのは警備室だ。

そこへ向かうには、奴らとは極力出会わないように最短ルートでいけるよう校内のマップを見直す。


(よし。ルートが決まった。)


警備室への最短ルートは、あまり校内の中を通らずに屋根やパイプを利用して駆け抜けるのが近道かつ出くわさないルートだ。


実際に、これが出来るのはレンの運動神経の良さや、密かで姑息にパルクールをしていた経験を持つドラゴン・アローだからできる警備室の行き方なのではあるが。


二人は早速、目的地へと向かう。


「やばい光景だな。この世の終わりがあったらこんなんだろうな」


アローに言われて、レンは周りのおびただしい死体が転がる光景を眺める。


(俺がしっかりしないとアローやこうへい… みんなが死ぬ。―――絶対に助ける)

レンは改めて覚悟を決める。

「そうだな…アロー急ぐぞ。」


警備室へ向かっている途中、学生達や教師たちが何十人も追われては殺されていく姿を見た。

だが止まることは許されない。

なぜなら阿呆のこうへいを救うため、彼らは動いている。


――――「‼」

「レン⁉」


だがレンは止まってしまった。


なぜならレンは目撃してしまったからである。


先ほど助けた女の子が、今にも無残に殺されそうになっているところを。


レンの体が自然と、その方向へ動き走り出す。


「おい!レン‼ ―――ゆいちゃんは見捨てろ! もう無理だ‼」

「アロー‼ 先へ行っててくれ‼ すぐ追いつく‼」



ゆいがこんな状況に陥ったのは、屋上から、ゆいを飛ぶ寸前まで追い詰めた三人の女子グループが原因なのだ。

この校内がトラブルになり逃げ惑う中、不運なことに原因の女子達と出くわしてしまい、囮要因としてゆいは強制的に共に行動させられていた。


―――遡ること三十分前―――


グループの一人がゆいに

「あんたのせいで将来を棒にふるところだったじゃないの」

「…ゴメンなさい…」

「誤ってすむんなら… ――あ! あんた私達が危なくなったら緊急用の身代りってことでいいよね? だって死ぬつもりだったんだしさキャハハハ」

「そんな… ――――私も生きたい、お願い… こんなことはやめて…?」

「だ―――メ‼ きゃはハハハ―――」

女子たちは腹を抱えて笑う。

「あんたが生きるとかそんなの絶対ムリ! ―――わっかた⁉ 返事は?」



それから化け物に追われ逃げ惑う中、奴らが迫って来た時に、ゆい一人を残して非常階段の分厚い扉を閉めて彼女達は逃げ切った。


そんな状況下、ゆいはなんとか別の場所から逃げたが、化け物に追い回され現状に至る。


――――略―――――


化け物はゆいにゆっくりと近づく。


「いや、…来ないで… なんで、私ばっかり…」


「――SYUUUUUUUUUU――」


「…私が何したのよ……」


「GULLLLLLLLLLLLL―――‼‼‼」

化け物が腕を振り上げた


「―――誰か助けてぇぇぇぇぇぇえええ」


ゆいの叫びと同時に、何かが飛んできた。


化け物には無数の目で見えており、何か、を腕で叩き壊した。

ブシュウ‼ と煙が中から出てきた。

消火器が破裂したのだ。


レンがゆいを助けるため近くにあった物を投げたのだ。


化け物に無数の目があることは、ここへ来るまでに確認済みである。

消火器が煙幕の代わりをしたおかげで、隙をついて、ゆいを拾い抱えて走り去ることができた。


(危なかった…ギリギリだ…)


ゆいは抱えられながら走るレンに

「――レン君に二度も助けられたね…」


「だね。でも何度でも助けるよ。友達…だろ」



だが、そんないい雰囲気も束の間、化け物がレンの背中に迫る。


(っち。どうする。――――いや。考える暇はない…これしかない)


レンは考えを決める。

「ゆいちゃん… ―――ごめん‼」


「―――え⁉―――」

化け物に追いつかれそうにり、レンはゆいを横に放り投げた。

瞬間、レンは身を屈めて相手の足を自身の体で、バランスを崩すために身を張って、ひっかけた。


レンの体に衝撃が走る。

「――ぐっッッ‼」


化け物は転げそうになるが踏みとどまる。


踏み留まった先には壊れたフェンスがあり、そこから落とそうというレンの一瞬の閃き作戦だったのだが失敗した。


「ッうッ…」

(ぶつかった衝撃でうまく体が動かない)


化け物が態勢を立て直し、ゆいへと向かう。


「レン君‼ レン君‼」

泣き叫ぶゆいの声を聞くが、レンはまだ動けない。


(俺は…誰も…助けられないのか…っッ)

動こうと必死なレンに声がかかる。


「―――考えている暇があるならタックルの一つでもかませ!」


ドン‼ と自ら見本となるようにドラゴン・アローのドラゴンタックルがさく裂した。

化け物はアローと共に落下する。


「―――アロォォォオォ‼――」

レンの体が動く。

今は歩くのも精一杯な体で力を振り絞り、走り出して壊れたフェンスへと向かった。


急いで下をみるとそこにはアローの姿があった


壊れて垂れ下がったフェンスにぶら下がり生きていたのだ。


「――よぉ、心配したか?」

「当たり前だ」

「心中なんてそんなこと… 俺には出来ひん」

「そうだよな!」

「とりあえず、はやく引き上げてくれよ」


笑いながらアローを引き上げレンはアローと拳を合わせる。

「アロー。…ありがとう」

「気にすんな! …いややっぱりお前は気にしろ」


その光景を見ていたゆいがアローに

「ドラゴン君、ありがとう。――二人はホントに命の恩人です」

「ゆいちゃん、……アローでいいで」

「いいあだ名だね…」

「はっ――まさか今、俺のあだ名馬鹿にしただろ?」


和やかな笑いが起きる。

こんな状況下でも、こんな状況だからこそ笑いが必要なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ