第2-19話 エルン
「は?」
カルナには少女の言葉の意味が分からなかった。
「どういうことだ?」
《童を召喚した時、一旦契約を交わしただろ?》
「――何の話だ?」
《あれ? …》
―――――――――――――
少女が説明するに、少女が力を行使するその大きさによって、代償として何かを失う。
そういう契約になっているようだ。
今回は初回サービス+一方的な契約のリスクという代償で成立した。
「ふざけるな こんな押し付けヤクザのようなことしやがって」
《そう言うな がきんちょ それを言い出したらふらっと入った居酒屋でお通しが当たり前のように出てきて当たり前にお金を取られてる方に文句を言えバカチン》
(なんなんだコイツ)
《コイツではない 童のことは【エルン】と呼べ いや、様も付けろ、がきんちょ》
「俺の考えが読めるのか? キモすぎだろ」
《契約を交わしたらそうなるん‼ このバカチン! というか死にかけておいて助かっただけでも感謝して、跪い這いつくばり土を嘗め回すぐらいの―――etc》
――――省略――――
(――あぁ話なげぇ)
《ちゃんと聞け‼ 大事な事なので話を戻すが 前回の契約者はバカチンな願いをしたせいで二回目で、体ごと消滅してしまったから 永く生きたいならしっかり考えて童にお願いすることじゃ ところでさっきの話etc…》
――――省略――――
エルンと名乗る少女の長々した話がやっと収束し落ち着いたのでカルナが
「――とりあえず俺は戻るわ」
《おぉそうか 童はこのチープな世界を散歩でもしてから戻るとする》
体に疲れがたまりながら、小屋へたどり着く。
まだ眠っている雫を担ぐ元気がないカルナは小屋の前で休憩をしているとタケミと合流した。
「カルナ…」
カルナの名前を呼ぶタケミの心境や今から話す、はなしの内容が声色で分かった。
近寄って来たタケミがカルナの胸倉を掴み叫ぶ。
「なんで助けなかった‼」
「…」
タケミはカルナがテキスを見放した場面に丁度出くわしたのだ。
「確かに彼らは良い人間じゃないかもしれない。――ッけど‼ 生きていることがあれば構成する機会や自分自身を変えてくれる出会いに巡り合ったかもしれない。もし君が助けようとしても彼らは助からなかったかもしれない。君が恐怖し逃げだしていたならそれは仕方ないことかもしれない。ただ…君は彼等を見捨てて殺す方向を選んだ」
「――ッうぜぇな そんな頭お花畑なクソガキにもわかるように教えておいてやる『人はそう簡単に変わらねぇ』」
「その考えややり方は間違っている『人は変われる』そしてもし転機が訪れたら、今の君の考えは方は君自身のためにならない‼」
「はぁ――じゃお前はいつ変わるか分からないそいつらを後押しするということは、今そいつらに苦しめられている奴らに『今は我慢して! 何年か何十年か後にはきっと変わるから』って言えるのか?」
「そんなことは言ってない‼」
「お前みたいな偽善者と話しても俺はなにも変わらねぇ」
「カルナ‼」
目が覚めた雫は外から二人の声が聞こえたので、びっくりした様子で外に出てきた。
「タケミっち カルナっち何してるの⁉ ――ここどこ?」
タケミは目を潤ませながら雫の手を笑顔で握る。
「――雫‼ 良かった無事で!!」