第2-14話 タケミの過去〔後編〕
村の人々も悲鳴があがる。
すると刀を持った何者か達の襲撃により村の人たちも次々に殺されていく。
当然村の大人たちも反撃するが武器がない。
タケミが立ち尽くしていると襲撃してきた者達の一人がタケミに向けて刀を振り下ろす。
「―――タケミ‼‼」
母がタケミをかばい切られた。
「―――か、母さん…」
「…タケミ…」
母の手をタケミは取る。
(母さんは気づいていた。俺がノオと入れ替わっていたことに)
「タケミ…あんただけでも…に、げ、…」
続いて刀が振り下ろされる。
「――――ぅぅぅああああああああああああああ―――――」
タケミは無我夢中にその男の刀を奪い、男を刺し殺した。
その時に初めて人を殺めた。
霧の中から二人の男が出てきた。
一人はタケミの父、ナギだ。
「――ッ父さん‼ ッ――母さんが‼ 母さんが‼ ―――⁉」
タケミがナギに近寄ろとしたが、父は刀による傷で胸から血を流し、右腕が切り落とされていた。
そしてもう一方の父の左手には天神の刃が握られていた。
ナギに向かい立つ人物はタケミも知る人物だった。
それは叔父にあたる父、ナギの弟であるミナであった。
ミナはナギに
「一線から退いたのによくやるねぇ ――ッ油断してたわ。足の健やられちまった」
「お前の目的は天神の刃か…」
「ご名答…この機会を何年待ったか…」
「ミナ…」
「な…なんでッなんで―――」
ナギは後ろで叫ぶタケミに持っていた刀を放り投げて渡した。
「タケミ‼ この刀を持って逃げろ」
「いやだ、父さん‼ 俺も戦う!」
タケミは父を見て
「しかも父さん 武器がないじゃないか‼ 怪我もしてるし」
泣き喚くタケミにナギは
「いいか タケミ。真に強い男に、武器は必要ないんだ」
続けてナギは
「お前は生きてくれ。…これからのお前の境遇を考えて、俺は先に、―――お前にこの言葉を言っておく。『俺はお前を一人前の男』と認める」
「―――ッ父さん」
「走れ‼」
ミナが周りにいる兵達に
「ガキを逃がすな! ―――殺せ!!」
兵達がタケミを追う。
タケミは意識朦朧とする中、ノオと鬼ごっこに使っていた秘密のルートを通って全力で雪山を下る。
タケミは転がりながら父や母、弟や村の皆との思い出がよみがえる。
(―――ぅぅううううううう)
悔しさと非力な自分への後悔が募る。
タケミは誓う。
自分から大切なものを奪ったやつらを必ず見つけ出すこと。
そして父から言われたように大切な人を助けると。