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VIXI---蒼炎のカルナ  作者: ネコるんるん
一章 【日常との決別】編
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第1-4話 異変

 本日の天気予報は曇りなく滞る快晴で星座ランキングではさそり座が一位である。

ラッキーアイテムは7の数字。

血液占いでは、A型が一位で二位がAB型だ。


携帯アプリでは雨雲を見れる機能等もあるが、それを見ても雨雲一つ、上空にはかかっていない。


だが学校上空には真っ暗な空。

次第に他の地域の上にも、雲が集まりすぎて光も通さなくなっていった。


まだ昼の十四時だというのに夜。


暗さは人を不安にさせる。

「なんだこの天気。気味悪いな」

「雨でも降るのか?」


学生達の不安が的中したかのように、異常が大学の入り口から始まる。


ビキッと、空間が裂けて三メートル程の黒い塊が突如現れた。

その塊は卵が割れるかのように裂けて、大きな何かが出てきた。


「……なんだ?――」


覗き込んだ学生が――Gutya‼―― と、上から下に手の平で、虫を押し潰すかのように、何かが人を潰した。


「ぎゃぁぁぁぁっぁああああああああ‼‼」


見ていた学生達は悲鳴を上げる。

「おわぁぁああああああああ」

「やばいやばい‼ にげろぉ‼」


声を上げれるものはまだいい。

人は本当の恐怖を体験した時、体が固まり声に出ないものだ。

「―――あ、あ、ああ」


その異形のモノは瞬く間に、腰を抜かして逃げ遅れた人間を引きちぎり、ゴマをすり潰すようにして殺していった。


「っこの化け物ッッがぁああああああああ」


中には、引きちぎった人間の胴体から、もずくをすするように血液と腸を飲み干す。


その化け物と呼ばれた異形のモンスターは、全長は約3m程で人間を引きちぎる腕力があり、虫のような骨格をしているが、色は黒く虫にはあまり見られない人間特有のような肉質もある。

極めつけは角が二本。

角で考えてイメージするのが、ガン○ムだが、この生物はそんな綺麗でカッコいいものではない。

今にも腐り落ちそうな禍々しい角である。


ガン○ムでは、角はアンテナの代わりをしていたと聞くが、ここでは違う。

角にある、おびただしい数の無数の目ん玉が一斉に開く。

アンテナではなくこの生き物は、獲物を見る為に使う。


その化け物は人の数を確認し追っていく。

「「こっちに来たぁあああ‼ 逃げろぉぉぉおおお‼」」

「「押すなって どけぇえぇ‼」」

「「俺が先だ‼ 遅いやつは後ろへ周れ!」」


誰もが我先へと逃げ惑う中、当然校内の外へ出ようとするものもいるが、出られない。


何かの力が働いているせいか、校内の境界より先に行こうとすると体が見えない壁に阻まれる。そのため端から見ればパントマイムをしているようになってしまう。


「何してんだよ! 早くいけって!」

「――だって。体が‼」

「ふざけてる場合じゃ……にゃゃゃにんいに‼ッッ」

「どし……た…ぁあぁあぁあああああああああッ」


外に出ようと試みた学生達の体が引きちぎられる。


またもう一体、得体のしれない化け物が増えたのである。


この化け物は一定時間経過するごとに校内で増え続ける。


そんな校内の入り口周辺が大パニックになっている中、放送が入る。

『緊急警報発令‼ 緊急警報発令‼ 学生の皆様は近くの教室にてそのまま待機‼ 関係者の指示に従ってください』繰り返します…etc


警報が響き渡る中、外の状況をまだ知らないレンとアローは近くの教室で待機をしていた。

「レン緊急だってよ。今日帰り遅くなるんじゃねぇの?」

「そう………だな」


誰もいない303号室の教室で待機しているだけだが、何故か胸騒ぎがする。


何か恐怖や不安を感じる中アローが

「――こうへいは今頃何してるんかな」


「……」

(何かおかしい。外の天気からしてただ事じゃないぞ)

レンは何かただ事ではない異変を感じ取っていた。


「おいレン!」

「しッ……」


遠くからたくさんの足音と共に学生達がやってくる。

そのまま学生達は303の部屋を通り過ぎそのまま走って行く。

(何だ⁉ 何か変だ‼)


「なんだ? イベント? 鬼ごっこでもしてるんか?」


アローが扉に手を掛ける。

レンが叫ぶ


「アロー‼ 扉を開けるな‼‼」


「え⁉」

その時 教室の前をゴミ掃除するかの如く、掃除機をかけるように、走り去る学生達を引き潰していく化け物の影が映しだされる。

血はガラスや床、天井にまでまき散らされる。

学生達の悲鳴は一瞬で消えていく。


アローは絶句する。

先ほどのこうへいとのやり取りが可愛く思えるほど、今の状況に絶句した。

「―――ああ…ああ、あぁあああああああかん や、やばいやばい人生の終わりや―――――ッっううおえええ」

腰が抜けたように床に座り込みながら嘔吐するアロー。


レンは震えを必死に抑え、冷静を保とうと必死に考えた。

(どうなってる…さっきの化け物は一体…―――ッっ震えが止まらない)

「アロー… とりあえず落ち着け。俺にも何が何だか分からないけど、とにかく落ち着こう」


アローに落ち着けと言いながらもレンも自分に冷静になるように言い聞かせる。


レンは二人がパニックになれば二人とも助からないと考え、まずは自分を一旦落ち着かせる。

(俺が皆を助けないと。ふぅ…―――――落ち着け)



「れんんんんれんんれん どないしょう…俺 まだ死にたぁない」


レンは焦りすぎた関西弁全開のアローを鎮める。

「アロー… ―――ゆっくり深く息を吸って」


アローはレンに促されて深く深呼吸をする。

「ふぅ――」


「どう? 落ち着いた?」

「…あかん。まだ手が震えてる」

「俺もだよ」

「ゲームならまだしも、リアルだとこれは… 詰んだわ。……」


だんだんと顔色が悪くなり焦りの次に絶望を浮かべるアローにレンは

「アロー… 諦めムードだな…」

「だって現実的にホラーなんか起こったら無理やろ? こんなん」

「意外と弱気なんだな」


レンは少し微笑む。


アローの新たな一面を垣間見たからだ。

「そりゃぁな。あんな掃除機かけるみたいにして殺されたら、まだ豆腐の角に頭ぶつけて死ぬ方がいいわ」

「そんなこと言うなよ。ただ、こうへいが気になるな」

「いや、そりゃ気になるけど、まずこの状況だろ⁉ こうへいなんて考えられへんわ」

「でも…こうへいは抜けているところがあるから… きっと今助けを必要としてるはずだよ」

「お前、なんでそんな落ち着いて、まして人のこと考えられるねん、俺はあかん、もうすぐにでも逃げたいわ」

「俺もすぐにでも逃げだしたいよ。でも友達だろ?」

「じゃ一緒にすぐ逃げようや!」

「アロー…」


この状況下なのにレンは友達を助けようとする。


助けると譲らないレンの目をみてアローは

「あーーもう…!」


「………」

「お前も頭飛んでるわ。わかったわかった。探しにいくぞ!」


レンの押しに負けてアローも助けに行くのに、やむを得ず協力することにした。

「アロー。――――ありがとう。そうこなくっちゃ!」

二人は拳を合わせた。


レンと一緒でアローも、自分のことより、友達を助けようとすると何故か恐怖が少し和らぎ前向きな気持ちになった。


アローは少し、ヤケな感じだが不思議と、どうとなる気がした。


二人は扉を開け教室の外へ出る。


――地獄への入り口へと。


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