第2-10話 ドールドッグ
カルナと雫も列に並んでいると、何時間か前に絨毯レースを繰り広げた三人がやってきた。
「おや 野人達じゃないか。生きていたのか? 心配したぞ?」
「コルト。一人は犬の餌になったというではないか。そんな野人以下の餌と戯れるのはやめておけ。もっと我々のメリットになることをしなければな」
テキスとコルトが嫌味を言ってくるのは分かってはいたが、雫は反論せずダンマリを決める。
フウカに
「トラブルは起こさないように! 」
と念を押されていて、また
「構わないように」
とも言われている。
カルナはその言葉に対し疑問に思っている。
カルナがいた元の世界もそうだが、言われる側にはそう念を押し、言ってくる側には対処や勧告はなく何もお咎めなし。
大人の事情もあるのだろうが、上から言われれば従うしかない。
従わなければ社会に切り捨てれる。
それが世の常であった。
そんな理不尽にはカルナは我慢できないたちである。
カルナはテキスとコルトのモノマネ口調で
「おや?、きゃんきゃん可愛く吠えて構って。と言ってくる目うるうるの子犬ちゃん達が二匹。俺の前におるではないか」
バカにされたコルトが怒りだす。
「なんだと… 貴様、余程今死にたいらしいな」
かっこつけた悪役じみた聞きなれたセリフを吐くコルトにカルナは
「つうか喋り方がキモいんだよ。どこの殿様王様だぁ? そんなに遊びたきゃ妄想野郎同士二人で戯れてろワンちゃん」
「―――なるほど、余程 遊びたいようだな餌‼」
コルトは手を前にかざし召喚する。
『いでよ‼ ドールドッグ‼』
叫びと共に全長2メートル程のドーベルマンのような使い魔が現れる。
「先程、私達は召喚契約を結んだばかりなんだ。…ドールよ、不味いかもしれないが契約祝いの餌だ いけ‼」
カルナから周りの研修生が一斉に離れていく。
ドールドッグはカルナにゆっくりと迫りながら距離を図っていく。
徐々に品定めをするように距離詰め、間合いに入った瞬間飛び込んだ。
カルナの手元の銃から機械音が流れる。
―――『圧縮出力』
バシュッ‼ とまるで何かに食いちぎられた形でドーベルドッグの足だけが残る。
カルナはここに来るまでの間、自分の握る握力で銃の出力調整のモード変更ができることを知った。
ただ試してはいなかったため、ぶっつけ本番で試した形になった。
足だけになったドールドッグを見たコルトは叫ぶ。
「あああああぁあああワタシの使い魔がぁあああ」
コルトが急いで駆け寄る。
フウカは三人の無事の連絡を済ませ、29番に向かっていると何やら研修生が騒いでいた。
遅れてきたフウカも急いで駆けつけカルナに問い質す。
『ちょっとあんた何やってんの⁉‼』
「あぁ! なんかコイツの使い魔かだか犬っころが、走って転んだみたいなんだけど」
カルナの無理な言い訳にフウカは死体を指した。
「転んでこんなことになるわけないでしょ‼ あんた、とりあえず来な、」
カルナの手を引こうとするフウカをテキスが呼び止める。
「少しお待ちください」