第2-7話 狩場
三人は絨毯に乗り先ほどフウカからみんなに配られた説明書を元にタケミが呪文を唱えると浮き出した。
「わぁ凄い‼ 俺の世界にはこんな風呂敷はなかったよ!」
(風呂敷っていつの時代だ?)
フウカと副担当が乗った絨毯が目的地まで先導する。
前の絨毯に続きながら各研修生達も続く。
カルナの乗った絨毯は一番後ろで、観光気分で景色や珍しい生き物、果実や花を見ながら進む。
「カルナ、雫! あれを見てくれよ! あんな大きな生き物見たことないよ」
カバのような太いからだでワニのような長い口に足が鳥のようにスマートな生き物やうっすら白く光るタンポポのような花。
湖ではネッシーのような恐竜系動物がシャボン玉にのって浮いている。
果実では人の体臭によって様々な味や匂いに変化するものもあった。
雫が慣れて来たのかあだ名を付け足し呼ぶようになった。
「タケミっち こっちも凄いよ! カルナッち あれ見てよ!」
タケミと雫の二人が興奮していると前の絨毯が速度を落としてきてカルナ達の横に並んだ。
横に並んだ絨毯に乗っているのはコルトとテキスが乗る絨毯だ。
運転している一人は、びくびくしながら二人に脅されるように運転をさせられている。
コルトがタケミに
「おい、野人よ。先ほどの続きだ!」
「ぶつけろ」とコルトの一言を聞き、真横から絨毯がぶつかってくる。
絨毯には透明のコーティングのような魔法が施されておりぶつかるとコーティング同士が反発しあう。
雫とタケミが叫ぶ。
「きゃぁああああ」
「やめてくれ!」
それでもドン‼ と何度もぶつかる。怖がる二人を見てテキスやコルトが更に挑発する。
「なぜだ? さっきの威勢はどうした?」
「コルトよ さっさとこやつらを落としてしまえ」
その状況の中カルナがタケミから絨毯の指揮を奪い取る。
「タケミ! どけ! 俺がやる」
操作するカルナは反対に絨毯をぶつけに行く。
「黙って大人しく聞いてりゃぁあいい気になりやがって何様だぁ?」
ドン‼ とおもいっきりぶつかり当たる。
反動で吹っ飛ぶコルト達。
「この野人がぁ いいだろ! あがくならもっと面白いことをしてやろうではないか」
コルトとテキスは剣をどこからともなく取り出し運転手に命令し三人に襲い掛かる。
「――楽しませてくれよ 野人ども!!」
カルナはぶつかった衝撃で通るはずだった正規ルートではなく、衝撃でコースから外れたため森の中の獣道をすり抜けて行く。
「面白い‼ まさにこれは狩りだ。逃げろ逃げろ ハハハハ‼」
「しつけぇな そんなに暇なのか? いかれ野郎どもが」
カーチェイス、まさしく絨毯チェイスを森で繰り広げつつもなんとか撒くことに成功した。
ただルートから大分外れたため迷ってしまった。
迷って数時間が経った。
カルナは担当の不満を漏らす。
「なぜあの担当クソ女は探しにこねぇ」
これも研修の一環なのかと考えるカルナにタケミと雫は
「これだけ人数多いと中々手も回らないんじゃないかな?」
「タケミっちもやっぱりそう思うよね。でもあのフウカって担当者めちゃくちゃ適当そうじゃなかった? でも可愛いけど」
カルナはタケミに操縦権を戻し一息つく。
森の中を三人は進んで行くと段々と雰囲気が変わってきた。
草木が太くより高く上に伸びて太陽の光を遮り薄暗くなっていく。
「ねぇタケミっち こっちで目的地の方角間違ってないよね?」
先程いた場所よりも不気味で奇妙な生き物達が蠢き、それを見た雫が不安そうな声を出しながらタケミに聞く。
「そのはずなんだけど…カルナはどう思う?」
「説明書の矢印がそっちつうんならそうなんだろ?」
配られた説明書には矢印が記入されており、どういう仕組みかコンパスのように矢印が自動で目的地の方角に指すようになっている。
『グぐ愚愚愚ググうUUU』
「なんか変なうなり声が聞こえて気味が悪いよ~」
「大丈夫、俺とカルナがいるさ! なカルナ⁉」
「…泣き言 言ってねぇでなんとかする算段でも考えろ」
泣きそうな雫をタケミが笑顔で安心させながら更に進むと山の頂上まで出てきた。
「なんだこれは…」
木が幾段にもなって無造作に組み上げられている。まるで鳥が巣を作るように。
「何かの巣かな? それにしてはでかいな」
タケミの言葉を聞いてより不安がる雫。
「はやく通り過ぎよ~よ」
「…」
『ヴゥゥゥゥゥゥ』
「カルナっち 変な声出さないでよ!」
「…」
音はカルナでないことに気づき三人は横に視線を移す。
―――衝撃が走る。