第1-33話 最強の実力
フレイと女王は街の外に広がる砂漠に移動していた。
街の入り口には洞窟で携えていた剣が刺してあった。
フレイは砂に刺してある自分の剣を見つめるが手に取ろうとはしない。
剣をスルーしてそのまま女王に向いて歩き出す。
今の女王に話が通じるかは分からないが話しかける。
「もし…勘違いをさせてしまっているなら申し訳ない」
フレイの言葉を無視するように女王は突っ込む。
「――格闘は得意じゃないが、さっきのは全力でもないんだ」
相手の攻撃に、カウンターを合わせるようにして体を捻り打撃を繰り出す。
威力で女王の、顔の形が変形し首がへしゃげて、二㌔m程、吹っ飛びながら砂漠を突っ切っていく。
しばらく吹っ飛ぶと、砂との摩擦により体が止まる。
直ぐに体を再生した女王は大きな声で叫ぶ。
――kyakyakyakyakyakya kyakyakyakyakyaky kyakyakyakyakyakya a!!!!!1
女王の声に呼応するように、辺り一面地面が動く。
まるでこの大陸自体が動いているようだ。
砂が舞い上がり、数十匹の巨大な大ムカデたちが姿を現す。
女王や大ムカデたちが高らかに不協和音を奏でる。
KOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKI
「kyakyakyakyakyakya kyakyakyakyakyaky kyakyakyakyakyakya a」
KOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKI KOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKI
KOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKOKIKIKOKI OKIKOKIKOKIKOKIKOKI
並みの人間ならこの地獄絵図に絶望するはずだ。
だがフレイは
「――追い込めば集めてくれると思いましたが、上手いこといくものですね」
BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!
大ムカデ達の触手が一斉にフレイに向け音速で駆け抜けるように伸びていく。
フレイは前へ手をかざす。
するとかざした手の前に青色の魔法陣が展開され、何百メートルも横へ広がる。
フレイの場合、魔法を詠唱する、と言っても長々呪文を読むのではなく名前を発するだけである。
『FROZEN WAVE』
まるで津波が固まったような氷が形成される。
それに触手が飲み込まれ粉々に砕け散る。
だがそれぐらいで止まる彼女たちではない。
全精力を注いでフレイへ突っ込む。
『Prominence』
フレイが詠唱すると空に巨大な太陽が出現する。
女王は視線を変えずフレイ一点に集中し、狂気を纏いながら物凄いスピードで前進する。
その太陽が解けて落ち、それは凄い衝撃波とともに文字通り、辺り一面火の海に変貌する。
灼熱の大地になり女王は再生能力が追い付かないまま、細胞レベルで燃やし尽くされる。
その炎は女王や巨大ムカデに留まらず炎や衝撃波は街へも伸びていく。
だが炎と衝撃波は入り口付近に刺してあるフレイの剣の手前で不自然に止まり街への被害はなかった。
目の前の砂漠から女王勢力が燃え尽きると、炎は収まり何事もなかったかのように元の砂漠に戻る。
今回の騒動を、街の入口付近に集まった野次馬達の群衆に紛れて、フレイを見るネットリとした視線にフレイは気づく。
振り返るが気配はすぐに消えた。
「…」
疑問を抱きながらもフレイはまた街へ歩き出す。