第1-30話 強者VS強者
突然現れたフレイにマリルは困惑する。
「だれ? 君」
マリルが尋ねフレイは答える。
「――僕はフレイ リングです。あなたは見たことある顔ですね… 確か」
フレイが喋り終わる前にマリルの能力で形成された無数の剣の刃が雨のように降り注ぐ。
串刺しを阻止するべく、後ろの二人の安全も保護するように氷の壁が一瞬にして築きあげられた。
「魔法――顔に劣らず出来るんだね、イケメンは大体弱っちいんだけど」
「ありがとう… ――あなたには少しお聞きしたいことがあるのですが、ボックスの件で」
マリルはフレイの視界の先が地面になるように、能力を発動させる。
だがフレイの身に変化は起きない。
(――えっなんで? なんで変わらないの!?)
マリルは少し焦ったがすぐに切り替え返答する。
「黙秘権を行使するよ!」
(それなら別の手を使うまで!)
マリルはフレイに向け走る。
(私への攻撃は全て反転する…――魔法も例外じゃないんだよね)
フレイとの距離が残り数歩のところでマリルが更に能力を使用する。
斧を自身の手に出現させ、フレイの首目掛けて振るう。
フレイはマリルの行動に合わせて魔法を発動させる。
使用した魔法は地面に雷気を発生させ、相手を痺れさせ固定する魔法なのだが
「ざーーんねん バイバイ」
(なんの魔法か知らないけど死んじゃって)
フレイの魔法がそのまま自分に跳ね返った。
動きを封じられ、マリルの斧が首へ。
「あまり女性には暴力的なエスコートはしてほしくはないのですが…」
――フレイの首には届かない。
斧の刃を手で掴み防いでいた。
手で防いだ斧の刃を魔法で燃やし溶かす。
マリルが焦る。
(何 こいつヤバすぎる、なんで動けるのよ‼)
マリルが動揺し距離を取ろうと一歩さがった所を詰める。
フレイは体を捻り遠心力に変えて蹴りを放つ。
(大丈夫!!――ただの蹴りなら反転させて)
マリルの思惑通りにはいかなかった。
「――ッッぐぇッッえ⁉‼⁉」
(反転しない⁉‼‼)
マリルの体がくの字に曲がり横の壁を突き抜けて吹っ飛ぶ。
普通の一般人ならあんな蹴りを喰らったら内臓でも破裂して即死だ。
壁に激突した時もタダじゃすまないレベルの怪我なはずだ。
だが倒れてはいるがマリルは傷一つ負っていない。
フレイはそんなマリルに
「あなたの今の力は反転系の類ですよね。―――蹴った時に分かりました。だったら返そうとする力の上のさらに上の力で押し込めばいい」
フレイの理論にマリルは
(無茶苦茶じゃない こんなやつ初めて…なんとかして逃げないと)
マリルが逃げる算段を考えていると、奇妙な声が聞こえてきた。
他の三人も気づく。
「なに? ――――この声…」
それはカルナとゆいがこの街に着いて最初の窮地に陥った時、聞いた声だった。
「―――kyakyakyakyakyakya kyakyakyakyakyaky kyakyakyakyakyakya a」
夜に浮かぶ怪しげなシスターのシルエットはホラー映画を連想させる。