第1-25話 来訪者 (挿絵あり)
喫茶店で、ゆいの話を涙ぐみながらに聞いたマリルは、
「しばらく私の家にいていいからね」
と言ってくれたので、ゆいは即決で厄介になることにした。
何よりすぐにシャワーを浴びたいからだ。
ゆいはマリルの住んでいる家へ着くなり、早速シャワーを浴びた。
「マリルちゃん本当にありがとう‼ ――すっきりした~えへへ」
「いいよ! ご飯もできてるからね」
夜食も用意してくれているマリルにゆいは感激する。
「日本にいる時よりも、ここの人達の方が優しい気がする」
そんな言葉にカルナは耳を疑った。
日本にいた時より、こっちに着た途端に何度も殺されかけているのに、ゆいの口からそんな言葉が出たからだ。
(――頭大丈夫かこいつ?)
面倒くさいのでツッコむのをやめたカルナはマリルが作ってくれたご飯に目をやる。
スプーンを手に取り暖かなスープを掬おうとした瞬間、壁がぶち破られてパンツ一丁の男が乱入する。
男は乱入と同時にマリルを抱え込む。
「え‼ なに 離して‼ ちょっと…ちょ…」
マリルは何故か意識を失いぐったりと倒れこむ。
少し変な臭いを発するだらしない体に眼鏡+ベルト付きのトランクス。
現代の裸の王様かと思うくらい男は堂々としている。
息遣いが荒いその男は、まるで姫を助けに来たかのように言う。
「ハァハァ…助けにきたよんんんハァハァ」
男はマリルを抱きかかえこの場を走り去る。
「一体何なんだ?」
カルナとゆいがやっと待ちに待った安らぎのひと時は一瞬にして崩れ去る。
「何ぼさっと座ってるのよ! マリルちゃんを助けに行くよ!」
「はぁ…」
カルナは溜息をつきながら席を立ち現代の裸の王様とマリルを追う。
意外と俊敏な変態男をカルナとゆいは見失った。
だが
「――あんな目立つ風貌してたら直ぐ分かるだろうな」
二人は待ちゆく人に男の目撃情報を聞き、それを頼りに進む。