第1-23話 英雄エイタ
――場面は戻り――
屋根の上からエイタを見ていた夏鈴たちは、エイタの一方的な戦いになると思っていた。
だが仲間の八人は、ここまで死闘になるとは予想していなかった。
剣を抜いたエイタとシスターが同時に動き出した。
エイタの初動の斬撃を受けたシスターは吹き飛ぶ。
だが傷一つ付いていない。
「――おかしいな、手ごたえありなんだが――」
シスターの笑い声が空間を徐々に不気味へと変える。
二人の距離の間を、シスターが一気に詰めた。
まるで脱兎の如くエイタに向けて、脅威が襲い掛かる。
息が詰まるような手足による打撃を、シスターはを繰り出す。
――それをエイタは剣で捌きながら受け止めるが
(――っち重い、なんて力してやがんだ。このアホンダラぁ‼)
エイタが二本目の剣を使用する。
剣という形を変え、盾のような防御形状へと変化し、シスターの攻撃を軽減させる。
これが二本目の剣の性質だ。
「中々頑張るじゃないか! お前やるな!」
笑顔のエイタだが
(――ぁこいつ…どんどん攻撃が重くなっていきやがるッ)
徐々にスピードとパワーを増すシスターと、劣勢で攻撃を凌ぐエイタを見ていた仲間たちが、焦りの表情を浮かべる。
「――ちょ! エイタやばくない?」
「さすがにてこずってるね、――援護しよ‼」
「大丈夫? 後で怒られない⁉」
「んー大丈夫じゃない?! 元々あいつは私達の獲物だったし」
焦った仲間たちが、風の魔法や火の魔法を使用するのに、詠唱をして援護する準備をを行う。
「よーーーし準備できた! いつでもいけるよ!」
「おーけぃ皆しっかり狙って‼」
「―――波っ‼」
―――BOOOOWWWW――BOOOOWWWW!!!
気づいたシスターは、飛んでくる魔法を、バックステップを織り交ぜて左右へ避ける。
小賢しい魔法で、屋根の上から援護するエイタの仲間たちにシスターは目を向ける。
標的がエイタから仲間へ移る。
それをエイタが抑止するように叫ぶ。
「お前ら‼ 手を出すな‼ こいつは俺が 」
シスターの太ももが、浮き輪のように膨らみ着いていた地面が爆発した。
だが地面が爆発したように見えたのはシスターが地面を蹴って移動した衝撃によるものだった。
シスターが地面を蹴り上げ、標的に向かって真っすぐに突っ込む。
「来た‼ このくらいなら私でもッーーッッ‼‼」
スピードが急速に増し屋根の上にいるエイタの仲間の一人、夏鈴の首を、木の実をむしり取るようにもぎ取った。
首から血が、まるで炭酸が噴き出たかのように立ち上る。
「――え…」
横にいた仲間たちも、シスターのスピードには目が追い付かなかった。
唖然とするエイタ
「―――――かり…、」
だが、すぐに我に返り、怒りがこみ上げる。
「てめぇえええええええ!!!!!」