第1-14話 砂漠の旅 ④
どのくらいテントで寝てしまったのだろう。
そう思いながら、ゆいが目を覚ます。
――Dododododododdo‼‼
急に外の音が騒がしくなった。
「――何、もう、うるさい――」
ゆいは目が覚めると、皆がいなくなっていた。
外の様子を見にテントの外へ出る。
すると昔、恐竜の映画で見たラプトルという小型恐竜っぽい生き物に跨る男たちがいた。
映画で見るような肉食ではなく草食で大人しい生き物のようだ。
その上に跨るのはターバンを被ったアラビア風、服装の肉食系男たちに囲まれていた。
腰には短剣が携えられていて盗賊感が滲み出ている。
だが奇妙だ。
取り押さえるなら囲むにしても、こんなに距離を取る必要はないはずだ。
そう思ったアローは
「あの~俺たちに何か御用ですか~?」
対話が出来ると思い、謙虚に下手に出すぎて、こうへーみたいな喋り方になる。
すると十数人いるうちの一人の男の手の平が燃え出した。
「へ?」
アローは直感した。
映画の見過ぎで次がどうされるかが分かった。すぐに声を荒げ皆に知らせる。
「―――ッッ逃げろおお‼」
囲んでいる男たちの掌が一斉に燃え出しその火をピッチャーのように目掛けて投げつけてくる。
――BOWWWWW‼――
火が辺りを飛び交う。
「きゃぁあああ!」
「ゆいちゃんこっちだ!」
アローがゆいを引っ張り火の玉から逃げる。
「…なんや 手から火が出やがった」
なんとか持っている、こん棒で飛んでくる火の玉を叩き落そうとする。
すると前からガタイのいい男が右手に剣を持ちアローに突っ込んで来る。
「ゆいちゃん 離れて!」
勢いよく突っ込んでくるガタイの良い男はアロー目がけて剣を振り下ろす。
「おっわっっっ、学校の時程じゃないが…あかん」
握りしめていた、こん棒で剣を受け止めるが、いつまでも男の攻撃を受け止めきれるようなものではない。
なんせ戦いは素人だからだ。
反対側ではカルナが応戦している。
BAANNNG‼ と銃声が何発も鳴り響くが当たらない。
カルナも喧嘩はしたことはあるにしろ、命を懸けた実践なんてものは初めてだ。
銃も初めて撃つ。
牽制すらならず、火の玉がカルナを襲う。
この状況で足場が悪いにも関わらず、なんとかギリギリ交わしている。
(ふざけんなよ 次から次へとーーッッ‼)
急に、砂に足を取られた。
「あぁ?」
(なんだ?)
カルナがつまずいたように倒れる。
(――ちッーー)
倒れたところへ火の玉が降ってくるのを、すぐさま横に転がるようにして回避する。
だがすれすれすぎて足に軽いやけどを負った。
立ち上がろうとすると
「カルナ‼ 上や‼」
アローの叫びで盗賊の剣を横にまた転がり回避する。
――BAANNNG‼
(やばいな、銃が当たらねぇ)
盗賊の男が迫る。
するとカルナの銃が『拡散出力』と機械音声が流れだした。
「なんだ?」
訳が分からないまま、なりふり構わず相手に向け引き金を引く。
DONNN‼ ――とすさまじい風圧と一緒に相手の体が吹き飛ぶ。
だが相手だけではなくカルナ自身もその反動で後ろへ吹っ飛び何度も転がる。
これが砂ではなくコンクリートなら大怪我をするところだ。
だが相手はまだまだいる。
カルナも吹っ飛んだ際に、全身を強打し動きにキレがなくなってきた。
休憩する間も与えずに火の玉がカルナ達に降ってくる。
――するとカルナが、何故か、いつも交わすタイミングよりはやく、その場を離れた。
移動前に居た場所の砂が、一瞬、上へめくれ上がる。
まるでカルナの他に誰かがそこにいるかのように。
カルナは辺りを見渡した。
すると決してカルナから視線を反らないものと目が合った。
「やっぱりお前か…」
カルナは柱を渡る時から感じていた違和感があった。
アローの後に続いて渡っているのになぜ自分だけ踏み外し落ちそうになるのか?
異世界だから常識じゃ考えられないことが起こる。
もしくは単純に疲れていただけなのか?
納得がいかなかったが答えはスッキリとした。
そして余計にストレスが溜まる。
「ッ――お前のせいでストレスが五億突破だ!! かまってちゃんがぁぁああ‼」
カルナはゆいに向けて吠える。