第0話 プロローグ (挿絵あり)
――――またこの夢か――――
「はぁ…はぁ ッくそ!」
住宅街の間をすり抜け走っている男がいた。その男は何かに追われていた。
「あいつは一体何なんだ―――ッぅわ」
誰かが逃げる男の前に立つ。
「逃げることはねぇだろ⁉ 今は何も悪いことはしてねぇんだからよ?」
「待ってくれ‼ 俺が何したっていうんだ⁉」
「……」
「かか、金ならある いくらでも払う‼ 大切な人もいるんだ、だから頼む 見逃してくれ」
「――お前はそう言った人間が助かったところを見たことがあるか?――」
逃げていた男の顔が引きつり、悲鳴を上げながら段々と絶命していく。
何度も何度も何度も路地裏に銃声が鳴り響く。
銃を持っていた男は言った。
「―――あと一人」
男がそう言った途端、まるで映画を早送りしたように場面が変わる。
――――場面が変わった?―――――
そこは高層ビルのような工場がひしめき合い立ち並ぶ。
この辺りでは珍しくもない工場地帯がある。
日本の基準では、曖昧だが三十一メートルを超えるビルが高層ビルとして該当してくる。
そんな高層ビルの工場が機械音とは別に、今日は異常な聞きなれない音を発した。
ビルが建て並ぶ工場地域の屋上で、BANG‼――と激しい銃声音と共に、風の弾丸が飛び交う。
それだけではなく、無数の瓦礫が宙へと浮かび上がり固定され浮遊している。
一部の瓦礫は、銃を放った男へと、トラックが人へ突っ込むように激突する。
だが瓦礫は男に当たらず、ビルに直撃してdololololonnnn!!!!―――
―――と爆音が鳴り響き、爆発と同時に工場が崩れていく。
次々に突っ込んでくる瓦礫を男は、銃の反動による風を使って移動し、上下左右、空中へと避ける。
風で、宙を自由自在に動き、空中で固定されている瓦礫やビルを足場にする。
男は、夢を見ている者の横を通り過ぎる。
その姿がはっきり見えた。
ガスマスクを着けたスーツ姿の男は、空中で方向転換して手すりに着地する。
ビルの手すりに着地した男は相対する女性と何やら話をしている。
――――なんの話だ?―――聞こえない――
夢のせいなのか、詳しい内容までは聞き取れない。
女がその男に訴える。
「――カ ナ‼ …私は… あなたを殺し は ない …お願い… ‼」
「またそんな泣き言 言うようになっ だ⁉ ..」
「――自分の道を、覚悟を決めたなら全力で殺しに来い。そうじゃないと死ぬのは―――」
――途切れ途切れでしか声が聞こえない―――、
激しい戦闘が始まり、男の仮面が吹き飛ぶ。
仮面の下には見覚えのある顔があった。
女は戦いながら再度、男の名を叫ぶ。
「――カルナ――」と.