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よろしくお願いします(*^^*)
「ようこそ魔国グレイスへ。私が魔王のカインだ」
一週間後
元人間の佐々木優改めて魔王カインは、魔国が建国されてから初めて王の間に歓迎して人族を迎えていた。
「わ、私がアスタリア王国レイモンド公爵家の長女レーナ・レイモンドにございます。この度は私の希望を叶えて下さり、大変感謝を申し上げます」
「顔を上げてくれ。こちらこそこのような機会を申し出てくれたこと、感謝している」
深く頭を下げたレーナにカインがすかさずそう述べた。
「感謝…ですか?」
「ああ。私もどうにか、争いではなく直接対話する場を設けたいと考えていたのだ」
「え…!それは本当でしょうか!でしたら今回だけでなく、今度はアスタリア王家の方も一緒に、話す場を…」
「お嬢様」
興奮した様子のレーナを後ろに控えていた護衛の一人が窘める。
「…失礼いたしました。ですが、国に帰った際には是非カイン様のお考えを王家の方々にもお伝えしたいのですがよろしいでしょうか?」
「もちろんだ。私もそうしてくれると助かる。こうやって血を流さずに和解に到れれば、それに超したことはない」
「…ふふっ」
「何かおかしなことを言ったか?」
レーナが小さく笑ったことをカインは不思議に思い、そう尋ねる。
「いえ。ただ、王国の方は皆さん魔王は残虐で非道な方だと仰っていたので。やっぱり噂は当てにならないものです」
レーナの言葉にレーナの護衛達は冷や汗が止まらない。
レーナは普段から自我が強く、どれだけ人に言われようと自分が納得しなければ何事も信じない性格だった。
それでも公爵令嬢としての立場は理解し、公爵令嬢としての振る舞いは完璧にこなしていた。だからこそ、レーナの両親やその周りも公爵令嬢としてのレーナを心配したことはなかった。
だが今はどうだろうか。いつもなら失言など絶対にしないお方が今は失言だらけだ。
王家の方々の確認を取っていない予定を勝手に決めようとしたり、残虐非道と言われる魔王の前で嘲笑と誤解されるかもしれない笑み、しまいには魔王本人に王国で囁かれている悪口をそのまま伝える。
これでは王国は魔王を完全に敵と見なしていると思われても仕方ない。
「レーナ嬢は私が怖くないのか?」
そんな護衛達の心配を他所にカインとレーナの会話は続く。
「それは…確かにお会いする前もお会いしてから先程までも恐怖はありました。ですがお話して今はほとんど恐怖はありません」
「なぜだ?」
「そう、ですね。それは多分カイン様が私と同じ、人、であると理解出来たからでしょうか」
公爵令嬢なんて花よ花よと育てられてるのかと思ってたがそうでもないのか?話せるからってだけで魔王を怖がらないなんてすごいな。前世の俺だったら絶対ガクブルだぞ。
「素晴らしいですね。魔王様の妻になって頂きたいくらいです」
「おいルーク、何を言ってる。初対面でそんなこと、失礼だろうが」
「あれ、初対面じゃなければいいんですか?あれもしかして魔王様レーナ様に惚れました?」
レーナの言葉に驚いて言葉を失っていた俺に変わり、ルークがそんなことを口走った。
「ルーク、いい加減にしろ。言葉を慎め」
「はいはい、わかりましたよ。誠に申し訳ありませんでした。
…あ、ですがレーナ嬢、貴方様を魔王様の婚約者にしたいというのは本当ですよ。無理やりする気はありませんが、というかすれば魔王様に殺されてしまいますので。ですがレーナ嬢にその気が少しでも芽生えれば、是非私にお伝えください。その際は私が速攻で手筈を整えます」
では少し準備がありますので一度失礼致します。といい、ルークは王の間を出ていった。
「申し訳ない。あいつの言葉は気にしないでくれていい。さて、そろそろ今日泊まる部屋を案内しよう。私についてきてくれ」
ルークのせいで静まり返ってしまった王の間でカインは平然とした様子でそう言った。