11.突然の魔法使い様の恋人
「「………」」
数秒、もしくは数分お互いに無言になったしまったのは魔法使い様の先ほどの「まずは俺と恋人になりましょう!」発言から。
答えは決まっている「無理です!」そもそも何故に勇者様を見返すために魔法使い様の恋人になるのか?理由がさっぱりわからない。
僕のそんな疑問は顔に出ていたのだろう。魔法使い様はどこか哀しそうな笑みを浮かべ再び僕の右手を両手で握る。
「恋は人を幸せにするものです。しかし君は恋そのものをすることを拒否し嫌悪感さえおもいはじめている。俺も君と同じです。だからそんな二人だからこそ恋人…そう、恋人の疑似体験的なことをして恋とは素晴らしいものだと認識を改める機会になれば良いかと」
「なるほど、それでは魔法使い様とは恋人のフリをするということで、本物の恋人という意味ではないということか…」
なんだかホッとしてそう言ってしまったのは失敗した。魔法使い様が本格的にウルウルしはじめて。
「そんなに俺と恋人になるのは嫌ですか…」
「いえいえ!!全く、全然嫌ではありません!むしろそんな身分も顔面偏差値も違う僕が魔法使い様の恋人なんておこがましくて、申しわけなくて!」
「それでは今から俺が君は恋人となっても良いということですね」
「もちろんです!」
「それでは、仮の恋人というわけではなく本物の恋人ということで」
「もちろんです!…あれ?」
何か違うような?首を傾げどうしてこのような話になったのか?考えていると、魔法使い様はとびっきりの笑顔を見せて、僕の頬にチュ……何やら柔らかい感触が…。
ピキっと氷漬けのように固まった僕、さらに追い打ちをかける魔法使い様。
「明日君は山への薬草摘みでしたよね。俺も一緒に行きますから手をつないでいきましょう。ご両親や村の人たちにもたった今君と『恋人になりました』と魔法の手紙を出しておきましたから、明日から俺たちは村公認の『恋人』です」
「ソーデスネ」
「…これからは一緒に寝ましょうか?」
「ソーデスネ」
「…やはり段階を進んでからで―――」
何やら魔法使い様はおっしゃっていたらしいが、僕は覚えていない。
気づいたら朝で、自室のベッドで目覚めた。
あれは夢だったのか?の疑問の3秒後に、笑顔全快の魔法使い様が僕の部屋に突進してきた。
「おはよう。いい天気ですよ。早く起きて一緒に薬草摘みに行きましょう」
そして僕の頬にチュの効果音。僕はまた強制的(現実逃避の気絶)に眠りにつきました。
現実逃避したいけど、夢の中でまであっはは、うっふふっと手を取り合ってお花畑で手をつないでいる僕と魔法使い様の姿を見た。
僕はよくわからないうちに魔法使い様の恋人になりました。