10.突然の恋人?
近所のおばちゃまたちに恋バナを振られ、般若顔になったのは記憶に新しい。こんな僕を不憫におもってくれる魔法使い様は神様だ。もし魔法使い様が新たに宗教をはじめたら位の一番で信者になるのに…と本気で考える。
「つらい気持ちはよくわかります。だからこそ第一歩に新たに恋に進むのもアリだとおもうのです」
「それでは魔法使い様に伺います。例えば生まれてからずっと一緒にいた人と恋に落ち、めでたくあと数週間後にはゴールインというときに、3年間離れることになりました。恋人を一途に3年間待ち続けたら…なんと恋人は別の人と結婚してマスタ…とさ。これで次の恋にいけますか?」
「それ君のことですよね」
「生まれたてこの方勇者様一筋。今更ほかの人と恋なんて…。恋のはじめ方は呪いの言葉以外おもいつきません。僕はこのままモグラのように穴を掘りながら生きていけばいいんです」
はっきり言ってやさぐれています。つい最近の村はラブラブカップが村を徘徊(イチャイチャお散歩)しているので…お前ら滅びろ!!という絶叫を心の中で連発する回数が増えているからだろう。
ふっふふふ、おもわず黒い笑みが溢れます。そんな僕の右手を両手に包む魔法使い様は何やら深刻な顔をしていています。
「では勇者以外の人とこうして手を握られるのはどうですか?不快に感じますか?」
「意味はよくわかりませんが、魔法使い様の手は綺麗ですねー。僕特製の手荒れのクリームは両親のものより効果があって良かったです。この頃寒くなってきましたし、あまり水で皿洗いをしないで下さいね」
「…そういうことが聞きたかったわけでは。それではこれはどうですか?」
そんな言葉とともに僕の顔面には魔法使い様のドアップ。び、美青年の顔は毛穴一つ見えない完璧な美肌。これ人間ですか?神様ですよね?
「ドキドキとか、キスされそうとか、あまり聞きたくありませんが不快…なんてことあります」
「美女は3日で飽きるといいますが、さすが魔法使い様、顔面アップにも耐えられるし、毎日見ているけど僕は飽きることありません!毎日見れて眼福です!!」
どうしたんだろう?魔法使い様が突然テーブルに顔を伏せた。あれ?何か声か聞こえる。
「……勇者シネ。勇者シネ。勇者シネ…」
あ、ここに同士がいた。そもそも僕のやさぐれる原因は勇者様のせいだ。
呪詛まがいのことを呟く魔法使い様の髪がサラサラ揺れ、おもわず頭をナデナデしてみる。
時折魔法使い様も僕の頭を撫でるからお返ししてもいいよね?あ、枝毛発見。公爵家にいたらこんなことなかったはずなのに、田舎にきたからお手入れ不足なのかな?髪にはどんな薬草がいいのだろう?髪といったらやはり母親あたりに聞けばわかるだろうか?父親はもっぱら毛生え薬作り専門になりつつあるようだし。
魔法使い様の頭をナデナデしつつ明日の薬草摘みリストを頭の中に描いていると、魔法使い様が突然顔を上げて僕にこんな提案。
「君はこんなことで不幸せになってはいけないんです!!幸せになってになって勇者を見返してやりましょう!」
「ど、どのように?」
「まずは俺と恋人になりましょう!」
魔法使い様の熱弁に一理あるとおもったからの僕の質問に、こう答えた魔法使い様……ソレ無理ですわ。