1.突然の勇者様
1.突然の勇者様
ガランッガランッ!!
「お、おめでとうございます!きょ、今日からあなたは勇者様です!さぁ、さっそく勇者様になるための訓練を――――うんたらかんたら――――」
あれは忘れもしないとある某日、幸せ絶頂を満喫していた僕に不幸せな鐘の音が響いた。
僕の婚約者はいきなり『勇者様』になりマスタ。
『勇者様』は僕の婚約者で…あった。もう遠い昔のようだが3年前のことだ。
勇者様とは幼馴染、同じ年で生まれ家も近所だったからいつも一緒。思春期にもなれば恋のアレコレも語り合い、語り合いから男同士で僕たちが恋人になったのは、肉食女子の凄まじい戦いを目の当たりにしたからだろう。
幼馴染の勇者様は僕たちの住む田舎では珍しい金髪碧眼…若干金髪はくすんでいるが、顔良し性格良し女子のあこがれの的の王子様。まぁ、田舎の王子様だが…。
そこに女子たちが群がるのもわかるが、頂点(勇者様の恋人)を目指し弱肉強食の戦いを目のあたりにして僕と勇者様はマジで怯えた。
「女ってコワイ…(ガクガクブルブル)」
女子たちは僕たちが幼馴染だからと僕のことをノーガードにしていたのは、僕がチンチクリン(低身長、小動物的外見)だったからだろう。
その頃には僕と勇者様は女よりも男のほうに恋愛感情が大きく傾いていたし、身近で自分のことをわかってくれる幼馴染同士で恋愛感情が向くのは自然の摂理だ。
僕と勇者様の家の境遇は似ていた。両親はラブラブ…その結果子沢山。僕は6人兄弟の3番目。勇者様は8人兄弟の5番目。家業は僕の家は薬屋。勇者様の家は木こり。
僕の家は薬屋だけどちゃんと山の中で薬草を採取し薬を作る全工程を行う薬屋。
勇者様の家は木こりなので木を伐採中、よく我が家の薬草積み中に鉢合わせて一家仲良く一緒に昼食を取ったりして、かなり家族同士仲良しだ。
だから両家に「僕たち結婚します!」と宣言しても、兄弟が多いので一組くらい男同士の結婚だからと反対されることなく「ああ、そうか!めでたい!めでたい!」と両家から祝福の嵐。
まぁ、家族が反対しないのは予想していたが、あとの女子たちの反応が怖かったというか。女子たちが化粧を涙で崩した顔で僕たちに恨み節かましに来たときは、少なからず、いやいまだに悪夢を見るほどのトラウマだ。
そんな彼女たちも数日後にはケロリとして次のターゲット(男子)に行く様は…。
「女って本当にコワイ…(ガクガクブルブル)」
と、勇者様と再度女子の認識(弱肉強食っぷり)を深めたものだ。