もしもアデリーたちが猫になったら
朝、アデリーが目を覚ますと、身体に違和感を覚えた。
寝てるあいだにペンギンに戻ったのかと思ったが、どうもそうではないらしい。
電気を点けて鏡を見たアデリーは、驚いて大声を上げた。
ア「アビシニアンににゃってる!」
猫耳とか、猫型獣人とか、猫型ロボットではない。
頭から尻尾まで、どこからどう見ても、正真正銘のアビシニアンだった。
パニックになったアデリーは、お隣のブルーナの家に駆けこんだ。
ア「ヒマラヤンににゃってる!」
ブ「はい。そういうアデリーさんは、アビシニアンですね?」
ア「ひょっとして、キャンドル夫人も?」
ブ「えぇ、ヒマラヤンです。呼んできましょうか?」
ア「いや、ブルーニャくんだけでいいわ。一緒に来て!」
アデリーとブルーナは、さらにお隣のオーシャンブルーの家に駆けこんだ。
ア「マンチカンににゃってる!」
ブ「可愛いですね、ユキちゃん」
ユ「ありがとう、ブルーニャさん。アデリーさんたちも、ニャンコちゃんににゃったんですね」
ア「ということは、プロセスくんや、シェファさんも?」
ブ「あっ! 奥にマンチカンがにゃん匹か居ますね」
ユ「私ひとりだけじゃにゃかったから、安心したわ」
ア「ホッとするんじゃにゃーい! ユキちゃんも一緒に来て!」
アデリーとブルーナとユキは、さらにお隣のオーシャンズの家に駆けこんだ。
ア「サイベリアンににゃってる!」
ブ「ちょっと、アデリーさん。大声出しちゃ駄目ですよ」
ユ「イソットさん、怖がっちゃうじゃにゃい」
イ「いえいえ、お気ににゃさらずに。みにゃさんお揃いで、にゃんの騒ぎですか?」
ア「猫ににゃってることに、危機感を持ちにゃさい! ほら、イソットさんも一緒に来て!」
このあと、アデリーたちは隣近所を虱潰しに突撃訪問したが、写真集でお馴染みの面々は、ことごとく猫に変身していた。
途中でメインクーンに変わっていたギンガムも加わり、アデリーたち五者、いや五匹は、土管が三角に積まれている空き地に集合した。
アデリーは、あとの四匹に前足を繋いで円陣を組むように指示し、最後に自分も加わった。
ブ「これから、にゃにをするんですかねぇ?」
ユ「さぁ~。イソットさんは、わかりますか?」
イ「僕にも、サッパリです。ギンガムさんは?」
ギ「私も、皆目見当がつかにゃいわ」
ア「これだけパワーが集まれば、にゃんとかにゃるわ。いくわよ? イリュージョン!」
アデリーが叫ぶと、円陣の中心から光の柱が天に昇り、そして世界が真っ白になった。
*
アデリーが再び目を覚ますと、そこは自分の家だった。
急いで鏡の前に立つと、いつも見慣れた十六歳の青髪少女の姿が映った。
半身を捻ったり、その場で足踏みしたりすると、ガラスの向こうの少女も、左右反転した同じ動きを映し出す。
ア「良かった。元に戻ってる!」
ジ「おーい、嬢ちゃん! いつまで寝てるんだ。朝飯の時間だぞ」
ア「あっ、はーい。今、降りるね」
下から聞こえてきたジンベーの声にホッとしながら、アデリーはパタパタと階段を下りて行った。