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騎士団長と嫁【連載版】  作者: 砂臥 環
番外編:第四騎士団団長は愛妻に嫉妬されたい

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協力者は裏切り者

 

 ヴィンスとフレッドは【『アタシと仕事とどっちが大事なの?!』作戦】発動に向け、討伐派遣の依頼書類を漁った。


 しかし、こんな時に限って丁度いいモノがない。


「ヴィンス……残念だが、あの『ちっさい鬼』のせいで目ぼしい魔獣が次々駆逐されているようだ……」


『ちっさい鬼』とは齢40オーバーにして少年にしか見えないくせに、滅茶苦茶強い化物、第九騎士団団長であるメイベル・サンダース団長のふたつ名である。


『自由騎士』という謎の称号を与えられ、『もうアンタは討伐の為になら勝手に転移陣を使っていいから好きにしなはれ』と放牧されるようになってから、メイベルは張り切って僻地の魔獣討伐に赴いていた。

 そのせいで、仕事がない。


 ヴィンスは机を叩いた。


「クソッ! 余計な仕事は持ってくるくせに!」


 まさにそれ。


 だがヴィンスのその言葉に、フレッドはなにか思い付いたようだった。


「そうだ、逆を突いてみたらどうだろう? あの人ホラ、攻撃的じゃない。(※戦闘に於いて) 壊滅とかマズイというか……時間や連携が必要なタイプの討伐で手を出しあぐねてるヤツとかも、情報は保持してたりとかするんじゃね? あの人、魔導師団のハドリー団長とも繋がってるし」

「!!」


 単体では無茶苦茶な人間と言わざるを得ないメイベルだが、仕事はちゃんとするし、騎士団そのものを動かすような仕事で無茶振りを強いたりはしない。

 なので彼が『自由騎士』として動くのは、騎士団長の合間(・・)なのだ。


『渡り竜』の件の時も、メイベルは無茶苦茶な要求をしてはきたが、それは単なる彼の希望であり任意。その決定権はヴィンスに委ねており、最終的にもっと無茶苦茶な作戦になってしまったのはメイベルというより、暴走したヴィンスのせいである。


 つまり情報を取得してはいても、『やりたいけどちょっと合間にはできないな~』みたいなモノを放置している可能性はある。


「メイベル団長主導で話を進め、『ヴィンスを貸してくれ!』的な要求を正式に引き出させさえすれば、『派遣任務』として話は通るだろう。 幸い第九騎士団はあの人の(シゴキの)おかげで団員の結束力が高い上、協力的に動いてくれるに違いない」


 なにしろメイベルは、暇になり身体を持て余すとやたらと稽古をつけたがる──そんなメイベルが別任務についてくれるのを、喜ばないワケがない。

 メイベルは書類仕事もできるので、仕事を溜め込まないのがいいところ。古参の副団長ジョージもいるので、なにか起こらない限りは当面メイベルがいなくとも大方対応できるだろう。


「お誂向きに次の本部報告も近い、これはチャンスだぜヴィンス!」

「なんて素晴らしい案だ……だが、それだと第四(ココ)が」

「第四騎士団は俺とルイス副団長に任せろ! だが書類仕事は終わらせといてくれ。 俺はメイベル団長にその旨をいい感じに纏めて手紙を書いておくから……!」

「フレッド……!」


 ──なんて頼りになる男だ!


 ヴィンスは感動していた。


「よし、俺は頑張る!!」


 ヴィンスは机に向かい、張り切って仕事をしだした。机に積んである書類──それが無くなった先に見える未来を信じて!


 ちなみにフレッドは、自分に割り当てられた書類をヴィンスの机の上の束にこっそり忍ばせている。

 そして、仕事の時間を使って手紙を書くのである。





 サボリなのは言うまでもないが、ヴィンスの舵取りをするのもフレッドの仕事だと認識されているので問題はない……ということにしている彼に、罪悪感は皆無。


 そもそもフレッドは書類仕事が好きじゃないのだ。それで副団長になるのを渋ったくらい。

 特に計算しなきゃならないようなヤツは大の苦手。


 そんな計算嫌いのフレッドだが、人間関係の計算は割と上手い。少なくとも、ヴィンスよりは格段に。

 なのでヴィンスに与えた分の仕事の代わりに、彼もヴィンスの為に仕事をするつもりで、シルヴィアの元へと向かう。


 シルヴィアは洗濯物を干している最中だった。


「あら、フレッド副団長。 なにか?」

「ちょっと手伝いにね。 その代わりお時間頂戴」

「なにか急務ですか?」

「まあそんなとこ」



 ──そして、


「嫉妬してほしい……ですか」


 愛情表現過多な上、それが独特な夫の希望を知り、案の定困惑した。


「そ~なんだよ。 だからといって『誤解をされたくはない!』って言い張るから、また面倒くさ……あ、ええと。 話を戻すと」


 そして【『アタシと仕事とどっちが大事なの?!』作戦】を聞いて、普通に怒った。


「は?! それってわざわざ危険な任務に行くってことですよね?!『渡り竜討伐』で懲りてないんですか!」

「まあまあ。 多分そこまでじゃない筈だから……あるのはあの(・・)メイベル団長がまだ手をつけてないくらいのヤツだし」


 メイベルは『危険度が高い=燃える』タイプなので、もし一人で行けない案件でそういうのがあれば、おそらく向こうから『お誘い』がくる筈だ。


「う~ん……それなら、まあ」


 良くはない。

 良くはないが、ヴィンスは思い込むとまっしぐらなトンデモ夫である。(辛辣)

 被害は少ない方がいい。


「ただ、お怒りはごもっともだと思うんだよね。 だからさぁ……」


 フレッドが積極的に協力はしているのは、概ね自分の為だが、ヴィンスの愛故の暴走を防ぐ為であるのも間違いない。だって、巻き込まれるのは嫌だし。


 ただ『愛があればなんでも許される』というわけではないとはフレッドも思う。

 是正は難しいにせよ、都度お仕置きは必要だ。


 なのでフレッドは、密かにシルヴィアにある提案をした。


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[一言] メイベルキターーー!!!!(大歓喜)
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