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騎士団長と嫁【連載版】  作者: 砂臥 環
騎士団長ヴィンスと嫁シルヴィア

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15/41

狙われたシルヴィア

「お待たせしました」


 シルヴィアはシーツをしまい終えた後、バーバラにこれからアイザックの案内をすると報告をして、彼のいる休憩室へ来た。


「いや、全然」


 アイザックは柔らかな笑顔でそう答える。実際のところ、さして時間は経っていない。


「どちらに行かれるご予定でした?一応騎士舎内の見取図もお持ち致しました。どうぞ」


 アイザックは礼を言って受け取るが、もう彼の今日の仕事は特にはない。目的はシルヴィアを口説き、親密になることにあるのだ。

 見取図を軽く見ながら、アイザックは少し考えた。


(ゆっくりと案内をしてもらって口説くつもりだったが、この女はなかなか堅いらしいしな……)


 シルヴィアを待っている間、愛想のいい彼は休憩中の団員にそれとなく探りを入れていた。


「実はもう仕事があるわけではないんだ。ソルドラでの駐留は初めてなので色々知っておきたい。過去の報告を見たいから書類保管室に連れていってくれないかな?」


 書類保管室なら人はあまり来ないし薄暗い。ムードを上げて口説くにも、強引に迫るにもいい場所だ。


 なし崩し的に合意を得て手を付けてしまう、というと乱暴なようだが、初心(ウブ)でお堅い女を落とすのにはてっとり早い方法だ。すぐに夢中になる。


 真面目なところを利用して手伝わせ、頃合いを見て接触の機会をはかるつもりだ。



 この計画だけだと完全にセクハラな訳だが、彼はイケメンなので大概許されてきた。

 相手に拒絶された場合もないことはなかったが、そんなときはがっつかず「すまない……君があまりに可愛すぎて……」等とぬかしつつ、相手の反応に応じて、「ちょっとだけ……」とおねだりとささやかな接触を繰り返すと相手も段々流されてその気になってくる。


 とんだエロ帝王のようだが、これは相手に決定的な不快感さえ与えなければフツメンでも……というか、異性として受け付けられなくないレベルの、相手方の個人的な好みの範疇であれば充分通用する。(※訴えられるリスクも充分ありますので推奨はしません)



「書類保管室なら丁度清掃と整理を少ししようと思ってたところなんです」


 微細ながらお手伝いしますね、とシルヴィアは微笑んだ。


(……なかなか可愛い表情もするじゃないか)


 これから起こす破廉恥な事でシルヴィアの白い肌が桃色に染まり、快楽にその顔を歪めるところを想像したアイザックは小さく嚥下した。

 


 そのころヴィンスは第九騎士団副団長と手合わせをしていた。



 副団長であるメイベルは小柄だが俊敏で、双剣の使い手だ。

 その小柄さを生かした低姿勢からの攻撃に定評があり、接近戦を得意としている。

 また、グレイブと呼ばれる薙刀や弓矢も器用に使いこなし、馬上や後衛での攻撃もなかなかのものだ。まだ30だが副団長を勤めるばかりでなく、第九騎士団の武の要である。


 俊敏なメイベルの双剣から放たれる、目まぐるしい攻撃にヴィンスは苦戦を強いられていた。

 ヴィンスの装備はやはり体躯を生かした大剣だが、メイベルの双剣とは相性がすこぶる悪い。

 下手に手を出したら終わりだ。

 メイベルの攻撃をいなしながら攻撃の機会を窺う。


 チャンスは一撃。失敗すれば即座にメイベルの双剣の餌食だ。



 やがて勝敗は決し、ふたりは互いを称えあった。今回のところはヴィンスが勝利したが実力は拮抗している。


「流石噂に違わぬ剛剣だ。それに隙がない。なかなか懐に飛び込めなかったよ。身長差や武器的には俺の方が有利だったのに……悔しいなぁ」


「いえ、とんでもない……あのまま続いてたら集中力を欠き、自滅は必至。運が良かっただけですよ。正直後ろをとられた時には鳥肌が立ちました。これから駐留の間、色々御教授下さい」


 ヴィンスはメイベルとの手合わせが楽しく、珍しく饒舌になった。

 彼が苦手とする後衛の話やメイベルの実戦経験等を話しつつ、休憩室に向かう。

 その途中で、アイザックの話になった。


「彼とは仲が良くないのか?あいつはああ見えて結構努力家だし、腕もなかなか立つ」


「……彼は昔から器用でしたね。努力家だとは初めて聞きましたが……」


「ああ、本人も『いい加減だった』と言っていたからな。だが団に入ってからの彼は自らそう言って教えを乞うほどストイックだ。一度手合わせしてみろ、印象も変わるぞ」


 自分の知らない間に彼も成長を遂げていたのか、昔のイメージで接したのは悪かったかもしれない……


 そう反省し、ヴィンスは「そうですね、是非」と答える。

 しかし休憩室に入ると彼のよくない話が耳に入ってきた。


「新しい団員の男さっそく女の子にちょっかいかけてたみたいだぜ~」


「えっ?誰よ?ナルガ?エミィ?まさかシルヴィ……」


「しっ!」


 第九騎士団副団長に気付いた一人が話を遮るも後の祭りだった。

 メイベルは額に拳をトントンと付けて苦虫を噛み潰した様な顔をし、溜め息をついた。


「あいつは悪いやつじゃないんだが……女癖だけがな…………おい、君ら。ヤツは何処に「…………シルヴィアに手を出したのか?」」


 あんなにも自分に敬意を忘れなかったヴィンスが、酷くその声色を落とし言葉を遮ったことに驚いてメイベルは彼の方を見た。


 肌が粟立つ程の怒りに満ち溢れた空気。


 メイベルだけでなく、休憩室に居た者全てが凍りついた。



 誰からも返事が無いのでヴィンスはチッと舌打ちをして走り出した。

 それを見て我に返ったメイベルが声を上げる。


「全員!その男を捜しだせ!!」


 咄嗟の上官命令だ。


「うぉぉぉ~!!」


 皆雄叫びを上げて騎士舎内の方々に散る。




「…………なんの騒ぎよ?」


 丁度休憩をとろうとヴィンスと入れ違いに休憩室にやってきたフレッドは、先ずヴィンスが鬼の様な形相で飛び出てきた事に驚き、その後この様を見て驚いて呟いた。


 …………元はと言えば、彼のせいであることをフレッドは知るよしもない。

明けましておめでとうございます(遅)


ゆっくり少しづつの更新になりますが、今年も宜しくお願いします。♪ヽ(´▽`)/

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