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騎士団長と嫁【連載版】  作者: 砂臥 環
騎士団長ヴィンスと嫁シルヴィア

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14/41

思わぬ波及

 今日は雲ひとつない快晴というやつで、空気は冷たいが日差しは強く、室内の日のあたるところにいると暖房を必要としないほどの日和だ。

 乾燥している為、洗濯物がよく乾く。

 休憩が終わるとシルヴィアは朝方干したシーツを取り込んだ。


 与えられた分の仕事は滞りなく終わったので、これをリネン室に持って行き、替えのシーツが積まれている棚の中に畳んで置けばシルヴィアの仕事は一応終了である。

 忙しそうな人を手伝ってもいいのだが、今日は気候も相まってか……なんだか皆のんびりしている。


 なのでシルヴィアは『暇なときにでも』と、かねてより頼まれていた書類保管室の清掃と整理を少し行う事にした。


(これが終わったらバーバラさんに報告をして……)


 そんなことを考えながらリネン室に向かって歩いていると、斜め後ろから声を掛けられた。



「あっ、ねぇ君、ちょっと」


 そこにいたのは見知らぬ男。

 騎士服に『9』を意味する刺繍がしてあることから、新しく駐留する第九騎士団の人間であることがわかった。


 シーツを入れた大きな篭を一旦下に置き、シルヴィアは答える。


「なにか御用でしょうか?」


「いや、ちょっと迷ってしまって。案内を頼めないかな?」


 シルヴィアは気のきく女だ。

 少し考えてからこう答えた。


「……お急ぎですか?新しく駐留される第九騎士団の方ですよね。少しお待ち頂ければ色々ご案内することも出来るのですが……」


「それは有り難いな。是非」


 金髪碧眼で整った華やかな顔立ち、長身で細身だが筋肉質……紛れもない美丈夫の男は、柔らかくそう微笑んだ。


 しかし内心では『これは好都合だ』とほくそ笑んでいる。


「俺はアイザック・マクブライト……君は?」


 そう、この男はアイザックだ。


 勿論迷ってなんかいない。

 シルヴィアがヴィンスの想い人であると知った彼は、彼女にちょっかいをかけにきたのだ。


「失礼……申し遅れました。シルヴィア・ラスです」


 そんなことなど露知らず、シルヴィアはいつも通りに親切に、いつも通りに淡々と仕事をしている。

 そう、彼女にとってはこれは仕事の一貫であり、そんなときは相手の顔色は見ても顔の造作などは気にならないのがシルヴィアだ。美丈夫だろうが不細工だろうが自分がやることに特別な違いはない。


 シルヴィアは奥の突き当たりにある食堂と、隣にある休憩室、それとホールの一部のフリースペースで休憩をとる騎士が多い旨をアイザックに説明し、会釈をするとその場を離れた。



(ふーん、地味だがなかなかいい女じゃないか)


 アイザックは女癖はわるいが、基本的にはそう悪い男ではない。

 見た目が良くモテることもあり、強引に事を運ぶことや、既婚者や、特定の相手がいる者に手を出すことも通常ならばしなかった。


 しかし、相手がヴィンスとなると話は別である。


 アイザックは特にヴィンスをずっと恨んでいたと言う訳でもなかった。

 次の駐留がソルドラと聞いた際も、なんだったら『同期だし仲よくしてやってもいい』位には思っていたのだが、実際に会ったらそれ以上に不快な気持ちが勝ってしまったのだ。


 ヴィンスもそうであったように、とどのつまり、二人は相性が悪かったのだ。


 要領よく生きてきた彼は、明確に負けた事があの一件位しか無かったので本人も気付いていないが、かなりの負けず嫌いだ。

 今回副長補佐として、先にソルドラにアイザックが来れたのは優秀だったからではあるが、その要因のひとつとして、負けた事が悔しかった彼が真面目に鍛練に取り組むようになったこともある。


(堅そうな女だが……多少強引に迫ってでも落としてやる)


 アイザックは良くも悪くも軽い男だ。

 泥どろした恋愛は好まない。

 真面目そうなシルヴィアにはちょっと手を出す程度で止め、ヴィンスに焼きもちを妬かせて溜飲が下がったら、恋のキューピッド気取りでヴィンスに押し付けてやろうと思っていた。



 しかしあまりにシルヴィアが彼に興味を抱いた素振りがないことと、彼女が『ラス』姓である事を知ったことでそれは変化を遂げた。


 あれだけ笑顔を向けたのに自分に靡いている様子がまるでないシルヴィアの態度は、負けず嫌いの彼の自尊心を大いにくすぐった。

 しかも彼女の姓は『ラス』だという。


 実はフレッドが酒場で適当な事を言ったせいで、近くで呑んでいた者がそれを拾い、いつの間にかそれがまことしやかに語られる様になっていた。

 昨夜、あのあと呑みに言ったアイザックは、たまたま盛り上がって一緒に呑んだ地元の男からその話を聞いていたのだった。



 ここにきてシルヴィアは格好の獲物となってしまっていた。



(……『ラス地区の女』か……そんなにイイなら是非とも一度お相手願いたい)


 見た目も地味だが悪くないし、飾り立てれば映えそうな女だ。

 今特に結婚する気などなかったが、自分も適齢期ではある。噂通りの女であればめとってやってもいい。


 ……そんな自分勝手な事を考えながら、アイザックは美しい顔に獣のような欲望を隠しながらシルヴィアを待った。

閲覧ありがとうございます。


なんか、まあ、気に入らないけど……あとで直します。ハイ。


話の内容はかわりません。


12/31なんとなく直しました。

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